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序章
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結局、他愛も無い世間話をしながら祐天寺と一緒に、学園の校門まで来ることになってしまった。
本来ならば俺にとってそれは嬉しいイベントなんだが、何せ会話の中で自分のキャラ設定を大きく間違ってしまったせいで、事後処理が大変だった。
「良かった、今日は佐伯君とお話できて」
「は、はは……そう?」
「うん。だって同じこと考えてる人、中々いなかったんだもん」
ここで彼女の言う「同じこと」というのは、「朝の空気」って話のことだ。
どうもいたずらに発したその爽やかなワードが彼女の琴線に触れたらしく、俺は慣れない……というか、ほぼ初めての爽やかキャラを演じるハメになったのだ。
「明日もこの時間?」
「へ? あ、どう……かな。多分」
「私はいつもこの時間だから。ね」
「お、ぉう……」
「ね」の一文字に込められた意味が何なのかは、もう少し心の疲労が取れてから考えることにする。
とりあえずは……良かった。
彼女と言葉を交わし、彼女と並んで歩き、そして彼女の笑顔を今、独り占めに……
ゴガッ……!
「って!?」
瞬間、広がりかけていた心の中の花畑を踏み散らすような衝撃が、脳天に走る。
その不意の一撃は、例えるなら年頃の女子が自分の手首を痛めない程度に振り下ろした拳のような威力……
というか、正にその説明通りのものが頭の上に落ちてきたのだが。
「朝からこの私の前で不純異性交遊とは……
いい度胸ね、佐伯 海斗」
「う、うう……その声、そしてこの痛みは……
園田……麻純」
「意味も無くフルネームで呼ぶのはやめてくれるかしら」
その意味の無い行為をしたのはオマエが先なんだが……
「……じゃあ、麻純」
「名前を呼び捨てにしないでよ。馴れ馴れしい」
「園田……」
「様をつけなさい、様を」
「……ソノダサマ」
精一杯の抵抗で、思いっきり棒読みしてやった。
「……はぁ。どうしてこう、佐伯の切りかえしって知性を感じないのかしら」
「悪かったな」
確かに芸が無い反抗だというのは認めるが、何をどう返せば、ただの口喧嘩に知性を持たせられるというのだろうか。
ともかく、今の脳天への暴力は、俺の目の前にいるこの女。
泣く子も黙って漏らすと評判の鬼の風紀委員長、園田 麻純様、その人の仕業だったりする。
そしてこの女こそが、俺の空気キャラとしての学園生活完遂計画における最大の障害。
なにせ、どんなに目立たないようにしていても、何かと理由をつけて文句と暴力を振りまきに俺の前に現われるのだから厄介なことこの上ない。
多分、前世で俺が特に意味も無くいたずらに、面白おかしく叩き潰してしまった蚊か何かの生まれ変わりなんだろう。うるさいし。
「お前が毎回理不尽な暴力を、作りが哀れな俺の脳の上に落としてくれるせいで、知性を失っているのかもしれないぞ?」
「あなたの知性と品性の無さを私のせいにしないでくれる? あと、お前って言わないで」
どうやらハンバーガにポテトはいかがですか? 程度のノリで、知性と一緒に品性も無いことにされたらしい。
「ソレは失礼致しました。
けどなあ?
毎回適当な理由で俺を目の敵にするのは、風紀委員としての品格に欠けるんじゃないのか」
「まるで私が毎回適当な理由で、佐伯を面白おかしく罰してるみたいな言い方やめてくれる?
心外だわ」
「……少しは本音を隠す努力をすると、言葉にも一応の説得力が生まれるぞ」
「まるで私の心の中が見えてるみたいに言うのね。
思ってないわよ、特に意味も無くいたずらに面白おかしく佐伯を罰してあげようだ何て」
やはり前世のカルマというやつだろうか。
余計にドス黒い本音が噴出してきた気がするが……
「あ、あの……」
そんな俺たちの言葉の戦争の間に立たされていた祐天寺が、銃撃の止み間に発言の機会を得た。
「……何かしら。祐天寺 未来さん」
「意味も無くフルネーム」
「うるさい」
「あ、あのっ。園田さん……だよね?
風紀委員長の」
「ええ。光栄ね。学園のアイドルの祐天寺さんに名前を覚えてもらえているなんて」
「悪名という点では、園田も祐天寺に勝るとも劣らないからな」
「佐伯みたいに、下手をするとクラスの人間にすら名前を覚えられていない人間に比べたらね」
「ぐ」
何でクラスの違うお前にまで、そんなことを言われなきゃいけないんだ。
だいたい、それは俺の選んだ生き方だから別にいいんだよ。
……というか、悪名の部分は否定しなくて良いのか?
「えっと……
二人はすごく仲が良さそうに見えるんだけど
……どういう関係?」
「「はあっ!?」」
二人の素っ頓狂な声が合う。
ほんの一瞬だけ、俺は園田と意識がリンクしてしまった。
「……びっくりした。なんというか、その……
びっくりした。
祐天寺さんって面白い人なのね」
「え? そう、かな?」
「ええ。だってあなたの目を通すと、私と佐伯の仲がいい様に見えるんでしょう? きっとあなたの目に映る世界に戦争や飢餓や貧困って無いのね」
「え? え?」
(……馬鹿にされてるぞ、祐天寺)
とはいえ、確かに俺と園田の仲が良く見えるというのも、少し困った感性の持ち主ではある。
「誤解されたままだと困るからハッキリ言っておくけど。
私は佐伯と仲が良くなんか無いわ」
「ウン。むしろ悪い。最悪の相性だな」
「佐伯は口を挟まないで。別に悪くも無いわよ」
「へ?」
「そうなの……?」
「ええ。相性なんて言葉使われたら仲が普通になったり良くなったりする可能性があるみたいで気持ち悪いわ」
……そっちかよ。
「仲がどうの以前に『関係が無い』のよ。
私と佐伯は。今こうして接触してるのは、私が風紀委員のお勤めを果たしているからってだけ」
「でなきゃ、誰がこんな…………こんな……?」
「……なんだよ」
「ごめんなさい。罵倒するにも特徴が無さ過ぎてかける言葉が見つからないわ」
「知性と品性が無いんだろ、俺には」
って、俺はナニ助け舟送ってるんだ。
「ああ、そうそう、それそれ。
お勤めでなければ、誰がこんな知性と品性と知性に欠けた影の薄い男の相手なんか好き好んでしますか」
知性が無駄に下げられていることに関しては、もう突っ込む気すら起きない。
「じゃあ放っといてくれよ。
理由も無く絡むな」
「あら? 今日はちゃんと理由があるわよ。
言ったでしょ。不純異性交遊、って」
「誰と? 誰が?」
園田はアゴをしゃくって、俺と祐天寺を交互に見る。
「え、あ、え? わ、私と……」
「俺!?」
そうやって一まとめに語られるのは。例え誤解でも悪い気はしないが……
「ち、ち、違うよぉっ!? わわっ、私と佐伯君は……
べっ、別に……そういうんじゃ……」
「そ、そうだぞ!? そそ、そんなこと、あ、あああるわけ……っ」
くそ、泣きそうだ。
自分で言ってて。
「わかってるわよ、そのぐらい」
「……はひ?」
「……あ?」
「片や学園のアイドルで新体操部のホープ。
片や……なんだっけ?」
「……知性と品性と知性がない影の薄い男、だろ」
「何をそんなに卑下しているのかしら?
そんなマイナス思考だと人生面白くないでしょ?」
「お前が言ったんだ! お前が!」
「とまあ、この程度で怒鳴るようなつまらない男が異性として交友してるなんて、四日徹夜したボケボケの頭でだって思ったりはしないわ」
「だったら何で……俺に恨みでもあるのか?」
「恨みを買うほど、自分が人に何か影響を与える存在だと思える自意識があったなんて……驚きだわ」
……なんでこいつは女なんだろうな。
でなきゃ、一発殴ってるところだ。
いや。
女であれば、まあ他にギャフンと言わせる方法も無くは無いが、法に触れるしな……
「はぁ……なんかもう、いいや。
悪かった。俺如きが祐天寺と並んで歩くこと自体が罪なんだな。悪かったよ」
「あら、ちゃんとわかってるじゃない」
くそっ、満面の笑みで……
せっかくの楽しい登校だったってのに、ホント、何が楽しくて俺にこんなことするんだ、コイツは。
「私はただ、佐伯君とお話しながら来ただけなのに……」
「……そうね。祐天寺さんが好き好んで、こんなのの相手をするとも思えないし、絡まれてただけなら情状酌量の余地があるかしら」
俺にだけならまだしも、祐天寺にまでケンカ腰なのは、さすがにどうなんだ?
ここは一言言ってやるべき何じゃないか? 俺は。
「どこまでエラそうなんだお前は。
だいたい、風紀委員にそこまでの力があるってのかよ」
「無いわね」
大振りの一撃をかわすようなしたたかさで、俺の言葉を受け流す園田。
「でも、違法物の持込を取り締まる力は、ちゃんと持ってるわよ?」
「は?」
要領を得ない顔をしているだろう俺のカバンに、園田の細腕がスルスルと侵入していく。
「ちょっ、なんだよ?」
俺のすぐ胸元まで近づいてきた園田の頭からは、祐天寺とはまた違った雰囲気の、鼻腔をくすぐるシャンプーのいい匂いが……
「うん。やっぱり持ってた」
などと鼻の穴を広げている間に、俺のカバンの中から携帯の音楽プレーヤーを取り上げる園田。
「あなたがいつもコレを持ち歩いて、帰りに聴いて帰っているのは知ってるわ」
「え、あっ! てめ……っ」
なんでそんなことを知って……
怖ぇよ! 風紀委員、怖ぇ!
「いいじゃねえか、別に授業中に聴いてるわけじゃねえんだから!」
「授業中に聴くかもしれないでしょ?
それを事前に防ぐ為よ」
酷い言いがかりもあったもんだ。
包丁持ってる奴は、人を刺すかもしれないから没収ってのと変わらないぞ、それ。
「とにかく。異論反論は受け付けません。
返して欲しかったら放課後、私の所に取りに来なさい」
「学園には学業以外の物を二度と持ち込みませんって誓約書と、今回の件の反省文を書いたら返してあげるわ」
「…………」
それはつまり、一日の終わりにお前ともう一回顔を合わせて、不快な思いをしろということか。
「わかったよ……放課後な」
「待ってるからね」
かといって、ここで意地を張っても事態は好転しそうに無い。
祐天寺もいることだし。
「ごめんね、祐天寺。何か……巻き込んじゃって。
部活大丈夫?」
「うん……それは大丈夫……なんだけど」
「ん?」
そわそわした感じを少しも隠さず、というか隠すことが出来ないのか。
不安げな顔をして祐天寺が言う。
「ううん、何でも。
でも……やっぱり仲いいね。佐伯君と園田さん……」
「 そ れ は な い 」
誤解を受けたまま別れるのは嫌なので、そこだけは力いっぱい否定しておいた。
本来ならば俺にとってそれは嬉しいイベントなんだが、何せ会話の中で自分のキャラ設定を大きく間違ってしまったせいで、事後処理が大変だった。
「良かった、今日は佐伯君とお話できて」
「は、はは……そう?」
「うん。だって同じこと考えてる人、中々いなかったんだもん」
ここで彼女の言う「同じこと」というのは、「朝の空気」って話のことだ。
どうもいたずらに発したその爽やかなワードが彼女の琴線に触れたらしく、俺は慣れない……というか、ほぼ初めての爽やかキャラを演じるハメになったのだ。
「明日もこの時間?」
「へ? あ、どう……かな。多分」
「私はいつもこの時間だから。ね」
「お、ぉう……」
「ね」の一文字に込められた意味が何なのかは、もう少し心の疲労が取れてから考えることにする。
とりあえずは……良かった。
彼女と言葉を交わし、彼女と並んで歩き、そして彼女の笑顔を今、独り占めに……
ゴガッ……!
「って!?」
瞬間、広がりかけていた心の中の花畑を踏み散らすような衝撃が、脳天に走る。
その不意の一撃は、例えるなら年頃の女子が自分の手首を痛めない程度に振り下ろした拳のような威力……
というか、正にその説明通りのものが頭の上に落ちてきたのだが。
「朝からこの私の前で不純異性交遊とは……
いい度胸ね、佐伯 海斗」
「う、うう……その声、そしてこの痛みは……
園田……麻純」
「意味も無くフルネームで呼ぶのはやめてくれるかしら」
その意味の無い行為をしたのはオマエが先なんだが……
「……じゃあ、麻純」
「名前を呼び捨てにしないでよ。馴れ馴れしい」
「園田……」
「様をつけなさい、様を」
「……ソノダサマ」
精一杯の抵抗で、思いっきり棒読みしてやった。
「……はぁ。どうしてこう、佐伯の切りかえしって知性を感じないのかしら」
「悪かったな」
確かに芸が無い反抗だというのは認めるが、何をどう返せば、ただの口喧嘩に知性を持たせられるというのだろうか。
ともかく、今の脳天への暴力は、俺の目の前にいるこの女。
泣く子も黙って漏らすと評判の鬼の風紀委員長、園田 麻純様、その人の仕業だったりする。
そしてこの女こそが、俺の空気キャラとしての学園生活完遂計画における最大の障害。
なにせ、どんなに目立たないようにしていても、何かと理由をつけて文句と暴力を振りまきに俺の前に現われるのだから厄介なことこの上ない。
多分、前世で俺が特に意味も無くいたずらに、面白おかしく叩き潰してしまった蚊か何かの生まれ変わりなんだろう。うるさいし。
「お前が毎回理不尽な暴力を、作りが哀れな俺の脳の上に落としてくれるせいで、知性を失っているのかもしれないぞ?」
「あなたの知性と品性の無さを私のせいにしないでくれる? あと、お前って言わないで」
どうやらハンバーガにポテトはいかがですか? 程度のノリで、知性と一緒に品性も無いことにされたらしい。
「ソレは失礼致しました。
けどなあ?
毎回適当な理由で俺を目の敵にするのは、風紀委員としての品格に欠けるんじゃないのか」
「まるで私が毎回適当な理由で、佐伯を面白おかしく罰してるみたいな言い方やめてくれる?
心外だわ」
「……少しは本音を隠す努力をすると、言葉にも一応の説得力が生まれるぞ」
「まるで私の心の中が見えてるみたいに言うのね。
思ってないわよ、特に意味も無くいたずらに面白おかしく佐伯を罰してあげようだ何て」
やはり前世のカルマというやつだろうか。
余計にドス黒い本音が噴出してきた気がするが……
「あ、あの……」
そんな俺たちの言葉の戦争の間に立たされていた祐天寺が、銃撃の止み間に発言の機会を得た。
「……何かしら。祐天寺 未来さん」
「意味も無くフルネーム」
「うるさい」
「あ、あのっ。園田さん……だよね?
風紀委員長の」
「ええ。光栄ね。学園のアイドルの祐天寺さんに名前を覚えてもらえているなんて」
「悪名という点では、園田も祐天寺に勝るとも劣らないからな」
「佐伯みたいに、下手をするとクラスの人間にすら名前を覚えられていない人間に比べたらね」
「ぐ」
何でクラスの違うお前にまで、そんなことを言われなきゃいけないんだ。
だいたい、それは俺の選んだ生き方だから別にいいんだよ。
……というか、悪名の部分は否定しなくて良いのか?
「えっと……
二人はすごく仲が良さそうに見えるんだけど
……どういう関係?」
「「はあっ!?」」
二人の素っ頓狂な声が合う。
ほんの一瞬だけ、俺は園田と意識がリンクしてしまった。
「……びっくりした。なんというか、その……
びっくりした。
祐天寺さんって面白い人なのね」
「え? そう、かな?」
「ええ。だってあなたの目を通すと、私と佐伯の仲がいい様に見えるんでしょう? きっとあなたの目に映る世界に戦争や飢餓や貧困って無いのね」
「え? え?」
(……馬鹿にされてるぞ、祐天寺)
とはいえ、確かに俺と園田の仲が良く見えるというのも、少し困った感性の持ち主ではある。
「誤解されたままだと困るからハッキリ言っておくけど。
私は佐伯と仲が良くなんか無いわ」
「ウン。むしろ悪い。最悪の相性だな」
「佐伯は口を挟まないで。別に悪くも無いわよ」
「へ?」
「そうなの……?」
「ええ。相性なんて言葉使われたら仲が普通になったり良くなったりする可能性があるみたいで気持ち悪いわ」
……そっちかよ。
「仲がどうの以前に『関係が無い』のよ。
私と佐伯は。今こうして接触してるのは、私が風紀委員のお勤めを果たしているからってだけ」
「でなきゃ、誰がこんな…………こんな……?」
「……なんだよ」
「ごめんなさい。罵倒するにも特徴が無さ過ぎてかける言葉が見つからないわ」
「知性と品性が無いんだろ、俺には」
って、俺はナニ助け舟送ってるんだ。
「ああ、そうそう、それそれ。
お勤めでなければ、誰がこんな知性と品性と知性に欠けた影の薄い男の相手なんか好き好んでしますか」
知性が無駄に下げられていることに関しては、もう突っ込む気すら起きない。
「じゃあ放っといてくれよ。
理由も無く絡むな」
「あら? 今日はちゃんと理由があるわよ。
言ったでしょ。不純異性交遊、って」
「誰と? 誰が?」
園田はアゴをしゃくって、俺と祐天寺を交互に見る。
「え、あ、え? わ、私と……」
「俺!?」
そうやって一まとめに語られるのは。例え誤解でも悪い気はしないが……
「ち、ち、違うよぉっ!? わわっ、私と佐伯君は……
べっ、別に……そういうんじゃ……」
「そ、そうだぞ!? そそ、そんなこと、あ、あああるわけ……っ」
くそ、泣きそうだ。
自分で言ってて。
「わかってるわよ、そのぐらい」
「……はひ?」
「……あ?」
「片や学園のアイドルで新体操部のホープ。
片や……なんだっけ?」
「……知性と品性と知性がない影の薄い男、だろ」
「何をそんなに卑下しているのかしら?
そんなマイナス思考だと人生面白くないでしょ?」
「お前が言ったんだ! お前が!」
「とまあ、この程度で怒鳴るようなつまらない男が異性として交友してるなんて、四日徹夜したボケボケの頭でだって思ったりはしないわ」
「だったら何で……俺に恨みでもあるのか?」
「恨みを買うほど、自分が人に何か影響を与える存在だと思える自意識があったなんて……驚きだわ」
……なんでこいつは女なんだろうな。
でなきゃ、一発殴ってるところだ。
いや。
女であれば、まあ他にギャフンと言わせる方法も無くは無いが、法に触れるしな……
「はぁ……なんかもう、いいや。
悪かった。俺如きが祐天寺と並んで歩くこと自体が罪なんだな。悪かったよ」
「あら、ちゃんとわかってるじゃない」
くそっ、満面の笑みで……
せっかくの楽しい登校だったってのに、ホント、何が楽しくて俺にこんなことするんだ、コイツは。
「私はただ、佐伯君とお話しながら来ただけなのに……」
「……そうね。祐天寺さんが好き好んで、こんなのの相手をするとも思えないし、絡まれてただけなら情状酌量の余地があるかしら」
俺にだけならまだしも、祐天寺にまでケンカ腰なのは、さすがにどうなんだ?
ここは一言言ってやるべき何じゃないか? 俺は。
「どこまでエラそうなんだお前は。
だいたい、風紀委員にそこまでの力があるってのかよ」
「無いわね」
大振りの一撃をかわすようなしたたかさで、俺の言葉を受け流す園田。
「でも、違法物の持込を取り締まる力は、ちゃんと持ってるわよ?」
「は?」
要領を得ない顔をしているだろう俺のカバンに、園田の細腕がスルスルと侵入していく。
「ちょっ、なんだよ?」
俺のすぐ胸元まで近づいてきた園田の頭からは、祐天寺とはまた違った雰囲気の、鼻腔をくすぐるシャンプーのいい匂いが……
「うん。やっぱり持ってた」
などと鼻の穴を広げている間に、俺のカバンの中から携帯の音楽プレーヤーを取り上げる園田。
「あなたがいつもコレを持ち歩いて、帰りに聴いて帰っているのは知ってるわ」
「え、あっ! てめ……っ」
なんでそんなことを知って……
怖ぇよ! 風紀委員、怖ぇ!
「いいじゃねえか、別に授業中に聴いてるわけじゃねえんだから!」
「授業中に聴くかもしれないでしょ?
それを事前に防ぐ為よ」
酷い言いがかりもあったもんだ。
包丁持ってる奴は、人を刺すかもしれないから没収ってのと変わらないぞ、それ。
「とにかく。異論反論は受け付けません。
返して欲しかったら放課後、私の所に取りに来なさい」
「学園には学業以外の物を二度と持ち込みませんって誓約書と、今回の件の反省文を書いたら返してあげるわ」
「…………」
それはつまり、一日の終わりにお前ともう一回顔を合わせて、不快な思いをしろということか。
「わかったよ……放課後な」
「待ってるからね」
かといって、ここで意地を張っても事態は好転しそうに無い。
祐天寺もいることだし。
「ごめんね、祐天寺。何か……巻き込んじゃって。
部活大丈夫?」
「うん……それは大丈夫……なんだけど」
「ん?」
そわそわした感じを少しも隠さず、というか隠すことが出来ないのか。
不安げな顔をして祐天寺が言う。
「ううん、何でも。
でも……やっぱり仲いいね。佐伯君と園田さん……」
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誤解を受けたまま別れるのは嫌なので、そこだけは力いっぱい否定しておいた。
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