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序章
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しおりを挟む周囲の冷ややかな視線を上の空でかわしつつ、「変化のあった」スクールライフを終えて家に戻った俺は、部屋に入るなりパソコンの電源をつけた。
そして今朝方、封を解いてベッドの上に放り投げていた箱を手に取り、パソコンが立ち上がるまでの間、その隅々を調べる。
「説明書は……無いか」
朝もそれは確認した。
そして、それに類する物がなかったから、「コレはインチキだ」と確信した。
確信しながら身につけて行ったのは、一縷の希望……
ってヤツにすがったからだが。
パソコンが立ち上がると、すぐさま俺はネットに繋ぎ、履歴を漁る。
いつも巡回するところは決まっている。
「そうでないサイト」を探し出すのは簡単だった。
唯一の心配だったのは、あれが気のせいや夢であることだったが……
「やっぱり……夢じゃなかったのか」
今、ディスプレイにはおぼろげながらも記憶の中に残っている、あの時のアンケートサイトが映し出されている。
ただ、少しだけあの時と違うのは、無駄にポップなサイトデザインはそのままに、アンケートの類は一切無くなり、ある物の商品説明ページになっていることだ。
そしてその商品こそが、今俺が目に付けているカラーコンタクト……
『アナタの願望を叶える物です』という怪しいメモを添えて送られたコレは、まず間違いなくこのサイトから送られた物だろう。
一体いつ、自分が住所を特定されるような個人情報を打ち込んでしまったのかは記憶に無いが。
送り主不明、説明書ナシ、保証書ナシ、メーカー記述ナシという怪しいにも程があるこのコンタクト。
そんな物を目に入れた俺もどうかとは思うが、今日起きた出来事から鑑みるに、何らかの不思議な力を持っているのは間違い無さそうだ。
これがどう、俺の願望を叶えたというのか。
それを知るために、俺はこうしてあの時のサイトに繋いでいるわけだ。
「しかしまあ、都合のいい……」
まるで俺がこのページを見ることがわかっていたみたいに載っているコンタクトの仕様および使用説明……
要はマニュアルがあるのだけど。
薄ら寒いものを感じる気持ちも無くは無いが、今は商品への純粋な興味と関心のほうが勝っていた。
そして俺はそれから数十分の間、画面に釘付けになってコンタクトのマニュアルを読み耽った。
「……ふう」
どっと疲れが押し寄せてくる。
馬鹿だ。アホだ。
最高に頭が悪い。いや、頭がおかしい。
何度、マニュアルを読みながら呟いただろうか。
それぐらい、このコンタクトの持つ能力は荒唐無稽で、理解しがたいものだった。
……けれど。
「もし本当なら……いや。恐らく本当なのだろう」
今日の園田や住吉先生、そして祐天寺の反応を見る限り、それは間違いない。
「ふ……フフッ。最高じゃあないかァ、こいつは」
そう、卑しい笑みがこぼれてしまうほどに、このコンタクトは『完璧』だった。
まるで俺の願望が形になったかのような。
一つ、このコンタクトをつけると
『自分の存在が認識されなくなる』
一つ、このコンタクトをつけて『自分がHしたいと望む女の子に触れると、感じさせることが出来る』
一つ、このコンタクトをつけている者に、『女の子が好意を寄せていれば、その効果はどんどん拡大される』
結構な数の「使用上の注意」を読まされるハメになったが、あえて効果の方だけを拾っていくならこういうことだ。
本当にもう、何と言うか。
どう童貞をこじらせたら、こんな頭の悪い妄想を文章にできるのだろう。
と、正気を疑うような効果だ。
けれど、少なくとも最初に挙げた
『自分の存在が認識されなくなる』は本当だった。
途中で周りに認識されたのは、取り扱いの注意の中にあった『相手に接触している状態で、その者の名前を呼ぶと姿が見えてしまう』というのをやったせいだろう。
「そのことも含めて、もっと効果を検証する必要があるな……」
ここに書いてあることが全て本当なら、まさしくこれは俺の願望を叶えるための最高の道具だ。
あとは、どう活用するか。
その為に確かめないといけないことは何か。
「ふっ、はは……」
空気のような存在になりつつ、今まで出来なかった事を、
「変化を起こすこと」が出来る力。
それが誰に与えられた物かなんて、今はどうでもいい。
これはもう、俺自身の力なのだから。
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