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第三章 揺れる心
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ピッポッパッ
トゥルルルルル……トゥルルル……
いつものように電話をかける。
最初の頃は、何かとうまいこと理由を作っていたのだけれど、今となっては、そんなことは半ばどうでもよくなっていた。
「はい、片桐ですけど」
「結城ですが」
「こんばんは」
いつもの明るく、そして何となく落ち着く声が受話器の向こうから返ってくる。
なぜか彼女と話していると、子供になってしまう。
「よっ!何してた」
もちろん、最初からこんな調子で話していたわけではない。
中途半端だったけれど、出会った頃は敬語で話していた。
でも、それでは彼女が嫌だっていうので、少しずつ友達同士の会話になるようにしていったのだ。
最近になってようやくこの調子にも壁がなくなってきた。
「花に水あげてた。タカは?」
「ボーっとしてた」
「検定近いんじゃないの?」
「人のこと言えないでしょ」
「まぁね。一緒の検定受けるわけだし」
そう、実は学年が一つ違うのに今度受ける検定は同じ級なのだ。
別に彼女が出来が悪いとかいうのではない。
むしろ、学年でも上位の成績を持つ優等生なのである。
つまり、ただ俺の方が無謀だったりするわけで。
今回の検定、学年でも部活外の生徒では、俺ともう二、三人いるかどうか。
そうそう。
言い忘れてたけど。
俺って以外と成績優秀なのね。
学年でも一桁の順位を保っている。
無遅刻無欠席。
いわゆる、皆勤でもあるし。
まだ、二年だけど、ね。
一応、学校のホープでも在るらしい。
だから、こうして彼女と一緒の検定を受けることができるのだ。
凄いでしょ?
褒めて褒めて!
さて。
余談は置いといて。
「そういえば、突然だけど誕生日いつなの?」
ホント、突然だよ。
どうやったら、検定の話しから、誕生日の話しになるんだ?
「十一月九日だけど」
「ふ~ん、じゃ、さそり座だね」
「そういうこと。で、真由ちゃんは?」
彼女から聞いてきたんだものね。
これはいいチャンス!
そう思って、ちゃっかり尋ねてみたりする。
「私は、七月六日。七夕の前日だよ」
「ふ~ん、覚えやすいね」
ホント。
メモなんてしなくても、覚えられそうだ。
でも、ということは、もう少しで彼女の誕生日なんだ。
「もうすぐだなぁ。何買ってくれる?」
「えっ?」
意外な問いかけにちょっと戸惑ってしまった。
「洋服がいいかなぁ?あ、もう少しで卒業だから、カバンもいいな。うん」
なんちゃって、一人で言ったりしてるけど……
「いくらすんの?それ」
「七・八千円くらい……かな?あ、なんなら就職祝でもいいよ」
おいおい……。
「そういえば、カバンで思い出した。今年、修学旅行でしょっ!」
「ま、普通にいけば……」
目まぐるしく話の展開が変わってゆくのも、彼女と話している時の特徴の一つだ。
それに、一人でよく話す、話す。
たまに、俺がいること忘れてるんじゃないかってくらい。
「じゃ、ハウステンボス行くでしょ!」
「えっ?まだ、よくわからないけど……」
そういえば、彼女は昨年、修学旅行に行ってるんだよね。
「たぶん、行くと思うよ。でね、そこに綺麗なガラスの靴が売ってたの」
何か楽しく話してるけど、ちょっと嫌な予感。
「で……?」
「お土産、それがいいな」
やっぱし。
でも、ちょっと?嬉しかったりもする。
「で、いくらなの?それは」
「えっと~、たしかちっちゃいのは三千円くらいじゃなかったかなぁ~?」
げっ……。
ちっちゃいのは、って……。
「あ、あと……ひよこ饅頭!」
まだあんの?
そんなこんなを話しながら、ふと気がつくと、また一時間以上も電話してしまっていた。
彼女とだと、いくら話していても苦にならないんだよね。
それどころか、この頃はテストだとか検定だとかで勉強ばかりのせいか、彼女と話している時間が家での唯一の楽しみになっている気がする。
もちろん、それだけが理由ではないが……。
「じゃ、またね」
「おやすみ」
トゥルルルルル……トゥルルル……
いつものように電話をかける。
最初の頃は、何かとうまいこと理由を作っていたのだけれど、今となっては、そんなことは半ばどうでもよくなっていた。
「はい、片桐ですけど」
「結城ですが」
「こんばんは」
いつもの明るく、そして何となく落ち着く声が受話器の向こうから返ってくる。
なぜか彼女と話していると、子供になってしまう。
「よっ!何してた」
もちろん、最初からこんな調子で話していたわけではない。
中途半端だったけれど、出会った頃は敬語で話していた。
でも、それでは彼女が嫌だっていうので、少しずつ友達同士の会話になるようにしていったのだ。
最近になってようやくこの調子にも壁がなくなってきた。
「花に水あげてた。タカは?」
「ボーっとしてた」
「検定近いんじゃないの?」
「人のこと言えないでしょ」
「まぁね。一緒の検定受けるわけだし」
そう、実は学年が一つ違うのに今度受ける検定は同じ級なのだ。
別に彼女が出来が悪いとかいうのではない。
むしろ、学年でも上位の成績を持つ優等生なのである。
つまり、ただ俺の方が無謀だったりするわけで。
今回の検定、学年でも部活外の生徒では、俺ともう二、三人いるかどうか。
そうそう。
言い忘れてたけど。
俺って以外と成績優秀なのね。
学年でも一桁の順位を保っている。
無遅刻無欠席。
いわゆる、皆勤でもあるし。
まだ、二年だけど、ね。
一応、学校のホープでも在るらしい。
だから、こうして彼女と一緒の検定を受けることができるのだ。
凄いでしょ?
褒めて褒めて!
さて。
余談は置いといて。
「そういえば、突然だけど誕生日いつなの?」
ホント、突然だよ。
どうやったら、検定の話しから、誕生日の話しになるんだ?
「十一月九日だけど」
「ふ~ん、じゃ、さそり座だね」
「そういうこと。で、真由ちゃんは?」
彼女から聞いてきたんだものね。
これはいいチャンス!
そう思って、ちゃっかり尋ねてみたりする。
「私は、七月六日。七夕の前日だよ」
「ふ~ん、覚えやすいね」
ホント。
メモなんてしなくても、覚えられそうだ。
でも、ということは、もう少しで彼女の誕生日なんだ。
「もうすぐだなぁ。何買ってくれる?」
「えっ?」
意外な問いかけにちょっと戸惑ってしまった。
「洋服がいいかなぁ?あ、もう少しで卒業だから、カバンもいいな。うん」
なんちゃって、一人で言ったりしてるけど……
「いくらすんの?それ」
「七・八千円くらい……かな?あ、なんなら就職祝でもいいよ」
おいおい……。
「そういえば、カバンで思い出した。今年、修学旅行でしょっ!」
「ま、普通にいけば……」
目まぐるしく話の展開が変わってゆくのも、彼女と話している時の特徴の一つだ。
それに、一人でよく話す、話す。
たまに、俺がいること忘れてるんじゃないかってくらい。
「じゃ、ハウステンボス行くでしょ!」
「えっ?まだ、よくわからないけど……」
そういえば、彼女は昨年、修学旅行に行ってるんだよね。
「たぶん、行くと思うよ。でね、そこに綺麗なガラスの靴が売ってたの」
何か楽しく話してるけど、ちょっと嫌な予感。
「で……?」
「お土産、それがいいな」
やっぱし。
でも、ちょっと?嬉しかったりもする。
「で、いくらなの?それは」
「えっと~、たしかちっちゃいのは三千円くらいじゃなかったかなぁ~?」
げっ……。
ちっちゃいのは、って……。
「あ、あと……ひよこ饅頭!」
まだあんの?
そんなこんなを話しながら、ふと気がつくと、また一時間以上も電話してしまっていた。
彼女とだと、いくら話していても苦にならないんだよね。
それどころか、この頃はテストだとか検定だとかで勉強ばかりのせいか、彼女と話している時間が家での唯一の楽しみになっている気がする。
もちろん、それだけが理由ではないが……。
「じゃ、またね」
「おやすみ」
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