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氷晶華繚乱篇
礼拝堂の秘密
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ダリアが両手で結んだ印は、呪文とともに目も眩むような閃光を放った。通路に充満していた黒い霧は、一瞬で晴れてしまう。百合香とヒオウギは、その様子に息をのんで立ち尽くした。
『なんだと?』
明らかにアルタネイトの声は苛立ちを含んでいた。それほどまでに予想外の出来事だったのだろう。
まさか、ダリアにこれほどの力があるとは、百合香とヒオウギもまったく考えておらず呆気にとられたが、ダリアの身体が糸が切れたように崩れ落ちたのに気付くと、慌てて駆け寄った。
「ダリア!」
「大丈夫か、おい!」
ヒオウギが上半身を起こす。意識はあるようだが、力がまるで入っていない。ダリアは、弱々しいがハッキリとした声で言った。
「私を、置いて行ってください。足手まといになるだけです」
「フリージアと同じこと言ってんじゃねえよ!そういう時は助けてくれって言えばいいんだ!」
ヒオウギはその身を抱え、立たせようとした。だが、百合香はヒオウギの肩を叩いて、冷徹に言い放った。
「ヒオウギ。奴を叩こう。ダリアを助けに来るのは、そのあと」
「…なんだと」
ヒオウギは、怒りをたたえた目で百合香の襟首をつかんだ。
「見捨てて行くってのか」
「ダリアが作ってくれたチャンスを無駄にはできない。そう言ってるのよ!みんな、命がけでやってるんでしょ!」
百合香の叫びに、ヒオウギはハッと我に返る。背中を壁にもたれさせたダリアを振り返ると、その手をしっかりと握った。
「必ず戻る。待ってろ」
ダリアは、ヒオウギの目を見据えて弱々しく頷いた。百合香とヒオウギは、それまでの澱みのような気配が少し晴れた通路を再び、礼拝堂に向けて駆け出した。
礼拝堂に飛び込むなり、ヒオウギと百合香は遠慮なく、額縁めがけてそれぞれの技をお見舞いした。
「タンデム・クラッシャー!」
「ゴッデス・エンフォースメント!」
恐るべき重圧の波動が、礼拝堂のあらゆるものを打ち砕いた。並べられていた長椅子は一瞬でスクラップと化し、美しいアーチの天井も、壁も床も無惨な塵芥と成り果て、無造作に砕かれた壁面の凹凸だけが残された。
「どうだ!」
「ヒオウギ、見て!」
百合香が指さした先に、もうもうと立ち込める粉塵の背後から、額縁の絵の中で不機嫌そうな表情を浮かべるアルタネイトと、額縁を護るように浮遊する3つの首が現れた。
「くそっ、外したか!」
「いいえ、見て。あの生首」
浮遊する3つの首は、髪がほころび、ところどころがヒビ割れ始めているのがわかった。ふたりの大技を同時に受け、ただでは済まなかったのだ。このまま押し切れる。百合香とヒオウギは互いの目を見て頷いた。
『不愉快だな!邪魔をしてくれたあの娘を今すぐあの世に送ってやりたい所だけど、目障りな2匹の羽虫を先に叩かないといけないらしい』
「羽虫はそっちだろうが!今すぐ細切れにして、氷魔皇帝に粗大ゴミで送り付けてやる!」
昂るヒオウギの肩を、百合香が止める。
「待って!…まだ、一筋縄ではいかないみたいよ」
「なにい?」
「ぶち壊したと思ってたけど、どうやらあれは普通の代物ではなかったらしい」
百合香が剣を向けた先には、礼拝堂に鎮座していた聖母像が、ほとんど完全な形で立っていた。もう、顔面はすでに復元されており、穏やかなほほ笑みが尚のこと不気味に見えた。
「二の轍は踏まない。どうやら、あの聖母像がこのアルタネイトにとって、重要な意味を持っていたらしいわね」
「どういう意味だ」
「アルタネイト、あいつの力はあの聖母像を通じて得られているということよ」
百合香は、聖剣アグニシオンの切っ先を絵の中のアルタネイトに真っ直ぐに向けた。すると、アルタネイトは邪悪さをたたえた笑みを浮かべた。
『ご明察、と言いたいところだけどね。半分だけ正解だ。僕自身の力でも、君達を倒すくらいは造作もない』
「その聖母像はなに?なぜ、私の力を吸収したの?そのたびに姿が復元されているようだけど。完全に復元されたら、何が起こるのかしら」
『それをお姉さんに説明する義務はないね。だいいち、今から死ぬのにそんな事を知ったって仕方ないだろう!』
3つの首から、真っ白な光線が百合香めがけて放たれた。百合香はそれをアグニシオンの背で受け止め、逆にアルタネイトめがけて弾き返す。アルタネイトはそれを障壁でかわし、背後の壁が大きく穿たれた。
『呆れたね。あれだけ吸い取られて、まだそれほどの力が残っているなんて。きれいな顔をして、その実は化け物のようだ』
アルタネイトはゆっくりと移動し、聖母像の前に立ちはだかるように陣取った。百合香は、その行動を睨むように観察していた。
『おしゃべりはおしまいだ。こっちもさすがに飽きてきたよ』
「それはこっちのセリフよ」
百合香は、横目にヒオウギを見た。
「ヒオウギ、あの首を落としてしまうわよ」
「ああ。あの首さえいなくなれば、あの額縁坊やは丸裸だ」
「私が首を落とす。あとはあなたに任せる」
百合香は、自らの首を斬るジェスチャーをしてみせた。ヒオウギは頷く。
『やれやれ、どうせ君達に、僕を倒せる作戦なんてありはしない。これで終わりだよ!』
3つの首が、百合香達を取り囲むように回転を始めた。不気味な鳴動がふたりの周囲に響く。
『さようなら!』
百合香たちの周囲から、禍々しい瘴気の波が襲いかかる、その時だった。百合香は、アグニシオンを水平に構え叫ぶ。
「ラ・ヴェルダデーラ・シルクロ!」
聖剣アグニシオンの切っ先から、まばゆい光の渦が巻き起こり、百合香とヒオウギの周囲に猛烈な風の障壁として展開した。アルタネイトが放った瘴気は、障壁にかき乱されて散り散りに消えてしまう。これはかつて百合香と闘った第1層最後の氷騎士、バスタードから盗み取った技である。ヒオウギは、百合香が隠し持っていた技に驚嘆した。
「なんだ、こりゃあ」
「あの風の壁に当たらないでね。死ぬわよ」
「あたし達も出られないのかよ!」
本来は、自らを風の闘技場に留めて相手もろとも退路を断つ、背水の奥義である。だが、百合香の狙いはそれではなかった。
『くだらない真似を!』
アルタネイトは、なおも浮遊する首から、今度は風を消し去るための波動を放った。だが、百合香はこの障壁に全力を込めており、アルタネイトの攻撃さえもいっさい通用しなかった。
『いったい、何者だ!?これほどの力を持つ者、氷騎士であってもざらには存在しない!』
いよいよ、アルタネイトの口調にも焦りのようなものが見え始める。百合香は不敵に笑ったが、その実、障壁の展開に全力を傾けているため、一歩も動けずエネルギーを消費し続けているのだった。
「百合香、お前大丈夫なのか!」
ヒオウギは両手に閉じた扇を構えて臨戦態勢を取りつつ、百合香に叫んだ。身を案じるというより、本当に相手に勝てるのか、という不安である。
だがそのとき、ヒオウギは気付いた。床面をえぐるほどの暴風の障壁は、じわじわとその半径を拡大しつつあるのだ。
「おい、百合香、これは…」
「話しかけないで。余裕ないから」
そう悪態をつく百合香の額には、汗がにじんでいた。その様子を、アルタネイトは見逃さなかった。
『お前、まさか人間なのか!?人間…ま、まさか!?』
その驚愕は長くは続かなかった。なぜなら、風の障壁はさらに半径を拡げ、アルタネイトをも追い詰め始めたからだ。
『まっ、まさか…』
聖母像をよけて大きく後退したアルタネイトだったが、障壁は容赦なく拡大を続ける。アルタネイトは光線、衝撃波とあらゆる攻撃を試みたが、百合香の全力の障壁には敵わなかった。だが、アルタネイトはそこで、大きく天井に向けて、3つの首とともに上昇した。
『どうやらこの障壁は、上空までは届いていないようだな!上はがら空きだ!』
百合香めがけ、3つの首の目が輝く。
「まずいぞ、百合香!」
ヒオウギは扇を展開し、天井方向からのアルタネイトの攻撃を迎え撃つ態勢を取る。だが、次の瞬間、アルタネイトが予想しなかった事が起きた。
『なに!?』
それまで拡大し続けていた暴風の障壁は一瞬で消え去り、拡散していたエネルギーは一瞬で百合香に向けて収束してゆく。そして、百合香は即座に叫んだ。
「瑠魅香!」
『あいよー!』
百合香の姿は一瞬で、紫のドレスをまとった黒髪の魔女に変ぼうする。瑠魅香は間髪入れず杖を振るった。
『まっ…まさか!』
アルタネイトの声が震える。瑠魅香の狙いはアルタネイトではない。無言でたたずむ聖母像だった。
「トライデント・ドリリング・サンダー!」
3本の渦巻く雷の槍が、杖から聖母像めがけて放たれた。アルタネイトは叫ぶ。
『やめろー!』
アルタネイトは3つの首とともに、ものすごい勢いで聖母像の前に立ちはだかり、全力の障壁を展開して瑠魅香の攻撃に対抗した。だがエネルギーを温存していた瑠魅香の魔力には対抗し切れず、3つの首は障壁もろとも、雷の槍によって打ち砕かれてしまった。
「きゃああ!」
自ら放った魔法と障壁の激突の余波に、瑠魅香自身があやうく吹き飛ばされかける。その背を支えたのはヒオウギだった。
「おっと!」
「サンキュー!」
「お前は百合香より軽いな」
瑠魅香の背後から、百合香の抗議の叫びが聞こえたが、それはどうでもよかった。目の前には、3つの首を失ったアルタネイトが頼りなげに浮遊しており、その背後には聖母像が無傷で立っていた。
『やっぱりね』
百合香が瑠魅香の中から、してやったり、という風情で呟いた。ヒオウギが訊ねる。
「どういうことだよ」
『あいつにとって、この聖母像が何らかの目的のために必要だったのよ。だから、ヒオウギへの攻撃を止めてまで、守らなきゃいけなかったんでしょ』
「どういうことだ。おい、額縁野郎。その気味の悪い像に、何かあるってのか」
ヒオウギは一歩踏み出すと、もはや防衛手段を失ったアルタネイトに凄んだ。アルタネイトはどこか投げやりなふうに笑う。
『ふん…バカな奴らだ、何も知らないくせに』
「なにい?」
『まあいい。僕を倒せたとしても、この像には手を出さない事だね。いちおう忠告だけはしておこう』
アルタネイトの言うことの意味がわかりかねたヒオウギは、面倒くさそうに扇を眼前に交差させた。
「額縁とおしゃべりする趣味はない。さっさと消えてもらうぜ」
『勘違いしないことだね。僕にもう、君たちを倒せる力はないとでも思ってるのかい』
アルタネイトが絵の中で不敵に笑うと、青白いオーラがその姿を覆いはじめた。すると、見えない重圧がヒオウギと瑠魅香を襲った。
「うっ!」
「なっ、なにこれ!」
内側からえぐられるような不快な波動が、ふたりの全身を震わせる。防御力で劣る瑠魅香は、その激痛に耐えられなかった。
「うあああーっ!」
『瑠魅香!』
慌てて百合香がバトンタッチして表に出てくる。だが百合香もまたエネルギーを消耗したままであり、まったく動けずその場に膝をついた。
「くっ…!」
『はははは!僕には勝てないってことさ!』
アルタネイトは勝ち誇った。防衛手段を失ってなお、その強さは氷騎士クラスといえた。だがそこで、まだ抵抗する者がいた。
「額縁ふぜいが、なめるなよ」
波動に耐えながらアルタネイトににじり寄るのは、ヒオウギだった。あきれたようにアルタネイトは笑う。
『見上げたものだね。もう、全身がバラバラに砕けそうだよ』
「ちがうね。砕けるのはお前さ」
重圧の中、ヒオウギは鳥の翼のように扇を広げる。全身にオーラが満ちていった。
「さあ、聖母像の前でお祈りをするんだな」
『なめるな!』
さらに重圧が強まる。だが、ヒオウギは怯まなかった。
「フェザー・ミストラル!」
勢いよく眼前に交差させた扇から、猛烈な突風がアルタネイトめがけて放たれた。
『ぐああああー!』
もはや防御手段を持たないアルタネイトは、背後の壁面に叩きつけられ、額縁はバラバラに砕け散り、カンバスごとズタズタにされて聖母像のわきに崩れ落ちた。
『がはっ!』
折れ曲がり、裂けたカンバスの中から、アルタネイトは苦痛にうめいた。重圧から解放されたヒオウギだったが、自ら放ったエネルギーの反動に耐え切れず、左腕が砕け散ってしまう。
「ぐっ…!」
「ヒオウギ!」
百合香が駆け寄る。だが、ヒオウギは強がって笑ってみせた。
「なんてことねえよ」
「あるでしょ!」
百合香の突っ込みに笑いながら、ヒオウギは床に情けなく転がるアルタネイトを指した。
「まだ息があるらしい。百合香、残念だがとどめを刺すのはお前にゆずってやる」
「気が進まないわね」
そう言いながら、百合香はアグニシオンを逆手に構え、ゆっくりとアルタネイトに近寄った。
「悪いけど、あんたのせいで大勢のレジスタンスが道具にされて、殺された。同情はしないよ」
動けない相手にとどめを刺す事に、百合香はいささかためらいはあったが、無数のレジスタンスの亡骸を思い浮かべた時にそれは消え去った。力をこめ、アグニシオンを振り下ろす。
だがその瞬間、思いもよらないことが起きた。
「えっ!?」
百合香の手が止まる。なぜなら、聖母像が突然、鳴動を始めたからだ。
「こっ、これは…」
すると、アルタネイトが突然、大声で笑い始めた。
『はははは!』
「な…」
『ただじゃ死なない…ここまで僕を追い詰めた、あなた達が悪いんだ!』
笑うアルタネイトに残された最後のエネルギーが、百合香の目の前で、聖母像に吸い取られていった。アルタネイトのカンバスは、全ての力を失うと、砂粒となって崩れ去ってしまった。
「いっ、いったい何が…」
「百合香!」
ボロボロのヒオウギが、百合香を残った右腕で支えた。驚く百合香の視界で、聖母像のわずかに欠けていた頭頂部が完全に復元されてゆく。禍々しい重圧が、崩壊した礼拝堂に満ちていった。
「百合香、何かまずい」
「ええ」
「逃げるぞ」
それ以外に選択肢はない。ふたりはダメージを負った足で、ふたたび礼拝堂から脱出するために歩き出した。
◇
ダリアは、礼拝堂から響いてくる振動に不安を覚えながら、必死で耐えていた。もし、百合香とヒオウギが戻ってこなかったら、という不安がよぎったとき、右手方向から聞き覚えのある足音がふたつ近寄ってきた。
「ダリア!」
「ダリア!」
その頼もしいユニゾンは、ルテニカとプミラだった。ルテニカはダリアに駆け寄ると、その身を起こしてやった。
「大丈夫ですか」
「はっ、はい…」
「じっとしていてください」
プミラが数珠を手に何か呪文を唱えると、ダリアの全身が淡いピンクのオーラに包まれた。すると、わずかではあるが力が戻ってくることに、ダリアは気付いた。
「応急処置なので、全快とはいきませんが、立てますか」
ダリアは、手をついて膝に力をこめる。どうにか、立って歩く程度にはエネルギーが回復したようだった。
「あっ、ありがとうございます」
「どういたしまして。あなた一人ですか」
すると、ダリアはハッとしてふたりを見た。
「百合香さんとヒオウギさんが、礼拝堂に!敵です!」
その報せにルテニカたちは頷き合って、ダリアが指さした方を見た。
「ダリア、申し訳ありませんが、あなたはここにいてください。私たちがヒオウギたちに加勢してきます」
「ルテニカ、その必要はなさそうですよ」
プミラが、ルテニカの肩をたたく。
「え?」
すると、振動が聞こえる通路の奥から、よく知った長髪とショートヘアの二人が、肩をくんで歩いてきた。
「ルテニカ!」
「プミラ!無事だったか」
百合香とヒオウギが、ボロボロの状態で歩いてくる。ルテニカ達は慌てて駆け寄った。
「大丈夫ですか、二人とも」
「ヒオウギ、あなた腕が…」
プミラがヒオウギのダメージに深刻な顔を見せたが、ヒオウギはそれどころではない、と言った。
「やばい事が起きているらしい。敵は倒したんだが、どうも奴さん、何か企んでたみたいでな」
「それが、今のこの不気味な振動ということですか」
すると、百合香が言った。
「あの礼拝堂には、何か秘密が隠されていたらしい。敵が死ぬ間際に、それを発動させた」
「秘密?」
「説明はあと。とにかく逃げよう、今はやばい。他のみんなと再び合流するのが先」
やばい、と連呼されて只ならぬ事態と悟ったルテニカ達は、頷き合うとそれぞれが百合香、ヒオウギの肩を支えた。
「わかりました。とにかく、ここから遠ざかりますよ」
満身創痍の百合香とヒオウギをガードしつつ、5人は振動が響く通路をゆっくりと移動した。振動はなおも続き、まるで止む気配を見せなかった。
『なんだと?』
明らかにアルタネイトの声は苛立ちを含んでいた。それほどまでに予想外の出来事だったのだろう。
まさか、ダリアにこれほどの力があるとは、百合香とヒオウギもまったく考えておらず呆気にとられたが、ダリアの身体が糸が切れたように崩れ落ちたのに気付くと、慌てて駆け寄った。
「ダリア!」
「大丈夫か、おい!」
ヒオウギが上半身を起こす。意識はあるようだが、力がまるで入っていない。ダリアは、弱々しいがハッキリとした声で言った。
「私を、置いて行ってください。足手まといになるだけです」
「フリージアと同じこと言ってんじゃねえよ!そういう時は助けてくれって言えばいいんだ!」
ヒオウギはその身を抱え、立たせようとした。だが、百合香はヒオウギの肩を叩いて、冷徹に言い放った。
「ヒオウギ。奴を叩こう。ダリアを助けに来るのは、そのあと」
「…なんだと」
ヒオウギは、怒りをたたえた目で百合香の襟首をつかんだ。
「見捨てて行くってのか」
「ダリアが作ってくれたチャンスを無駄にはできない。そう言ってるのよ!みんな、命がけでやってるんでしょ!」
百合香の叫びに、ヒオウギはハッと我に返る。背中を壁にもたれさせたダリアを振り返ると、その手をしっかりと握った。
「必ず戻る。待ってろ」
ダリアは、ヒオウギの目を見据えて弱々しく頷いた。百合香とヒオウギは、それまでの澱みのような気配が少し晴れた通路を再び、礼拝堂に向けて駆け出した。
礼拝堂に飛び込むなり、ヒオウギと百合香は遠慮なく、額縁めがけてそれぞれの技をお見舞いした。
「タンデム・クラッシャー!」
「ゴッデス・エンフォースメント!」
恐るべき重圧の波動が、礼拝堂のあらゆるものを打ち砕いた。並べられていた長椅子は一瞬でスクラップと化し、美しいアーチの天井も、壁も床も無惨な塵芥と成り果て、無造作に砕かれた壁面の凹凸だけが残された。
「どうだ!」
「ヒオウギ、見て!」
百合香が指さした先に、もうもうと立ち込める粉塵の背後から、額縁の絵の中で不機嫌そうな表情を浮かべるアルタネイトと、額縁を護るように浮遊する3つの首が現れた。
「くそっ、外したか!」
「いいえ、見て。あの生首」
浮遊する3つの首は、髪がほころび、ところどころがヒビ割れ始めているのがわかった。ふたりの大技を同時に受け、ただでは済まなかったのだ。このまま押し切れる。百合香とヒオウギは互いの目を見て頷いた。
『不愉快だな!邪魔をしてくれたあの娘を今すぐあの世に送ってやりたい所だけど、目障りな2匹の羽虫を先に叩かないといけないらしい』
「羽虫はそっちだろうが!今すぐ細切れにして、氷魔皇帝に粗大ゴミで送り付けてやる!」
昂るヒオウギの肩を、百合香が止める。
「待って!…まだ、一筋縄ではいかないみたいよ」
「なにい?」
「ぶち壊したと思ってたけど、どうやらあれは普通の代物ではなかったらしい」
百合香が剣を向けた先には、礼拝堂に鎮座していた聖母像が、ほとんど完全な形で立っていた。もう、顔面はすでに復元されており、穏やかなほほ笑みが尚のこと不気味に見えた。
「二の轍は踏まない。どうやら、あの聖母像がこのアルタネイトにとって、重要な意味を持っていたらしいわね」
「どういう意味だ」
「アルタネイト、あいつの力はあの聖母像を通じて得られているということよ」
百合香は、聖剣アグニシオンの切っ先を絵の中のアルタネイトに真っ直ぐに向けた。すると、アルタネイトは邪悪さをたたえた笑みを浮かべた。
『ご明察、と言いたいところだけどね。半分だけ正解だ。僕自身の力でも、君達を倒すくらいは造作もない』
「その聖母像はなに?なぜ、私の力を吸収したの?そのたびに姿が復元されているようだけど。完全に復元されたら、何が起こるのかしら」
『それをお姉さんに説明する義務はないね。だいいち、今から死ぬのにそんな事を知ったって仕方ないだろう!』
3つの首から、真っ白な光線が百合香めがけて放たれた。百合香はそれをアグニシオンの背で受け止め、逆にアルタネイトめがけて弾き返す。アルタネイトはそれを障壁でかわし、背後の壁が大きく穿たれた。
『呆れたね。あれだけ吸い取られて、まだそれほどの力が残っているなんて。きれいな顔をして、その実は化け物のようだ』
アルタネイトはゆっくりと移動し、聖母像の前に立ちはだかるように陣取った。百合香は、その行動を睨むように観察していた。
『おしゃべりはおしまいだ。こっちもさすがに飽きてきたよ』
「それはこっちのセリフよ」
百合香は、横目にヒオウギを見た。
「ヒオウギ、あの首を落としてしまうわよ」
「ああ。あの首さえいなくなれば、あの額縁坊やは丸裸だ」
「私が首を落とす。あとはあなたに任せる」
百合香は、自らの首を斬るジェスチャーをしてみせた。ヒオウギは頷く。
『やれやれ、どうせ君達に、僕を倒せる作戦なんてありはしない。これで終わりだよ!』
3つの首が、百合香達を取り囲むように回転を始めた。不気味な鳴動がふたりの周囲に響く。
『さようなら!』
百合香たちの周囲から、禍々しい瘴気の波が襲いかかる、その時だった。百合香は、アグニシオンを水平に構え叫ぶ。
「ラ・ヴェルダデーラ・シルクロ!」
聖剣アグニシオンの切っ先から、まばゆい光の渦が巻き起こり、百合香とヒオウギの周囲に猛烈な風の障壁として展開した。アルタネイトが放った瘴気は、障壁にかき乱されて散り散りに消えてしまう。これはかつて百合香と闘った第1層最後の氷騎士、バスタードから盗み取った技である。ヒオウギは、百合香が隠し持っていた技に驚嘆した。
「なんだ、こりゃあ」
「あの風の壁に当たらないでね。死ぬわよ」
「あたし達も出られないのかよ!」
本来は、自らを風の闘技場に留めて相手もろとも退路を断つ、背水の奥義である。だが、百合香の狙いはそれではなかった。
『くだらない真似を!』
アルタネイトは、なおも浮遊する首から、今度は風を消し去るための波動を放った。だが、百合香はこの障壁に全力を込めており、アルタネイトの攻撃さえもいっさい通用しなかった。
『いったい、何者だ!?これほどの力を持つ者、氷騎士であってもざらには存在しない!』
いよいよ、アルタネイトの口調にも焦りのようなものが見え始める。百合香は不敵に笑ったが、その実、障壁の展開に全力を傾けているため、一歩も動けずエネルギーを消費し続けているのだった。
「百合香、お前大丈夫なのか!」
ヒオウギは両手に閉じた扇を構えて臨戦態勢を取りつつ、百合香に叫んだ。身を案じるというより、本当に相手に勝てるのか、という不安である。
だがそのとき、ヒオウギは気付いた。床面をえぐるほどの暴風の障壁は、じわじわとその半径を拡大しつつあるのだ。
「おい、百合香、これは…」
「話しかけないで。余裕ないから」
そう悪態をつく百合香の額には、汗がにじんでいた。その様子を、アルタネイトは見逃さなかった。
『お前、まさか人間なのか!?人間…ま、まさか!?』
その驚愕は長くは続かなかった。なぜなら、風の障壁はさらに半径を拡げ、アルタネイトをも追い詰め始めたからだ。
『まっ、まさか…』
聖母像をよけて大きく後退したアルタネイトだったが、障壁は容赦なく拡大を続ける。アルタネイトは光線、衝撃波とあらゆる攻撃を試みたが、百合香の全力の障壁には敵わなかった。だが、アルタネイトはそこで、大きく天井に向けて、3つの首とともに上昇した。
『どうやらこの障壁は、上空までは届いていないようだな!上はがら空きだ!』
百合香めがけ、3つの首の目が輝く。
「まずいぞ、百合香!」
ヒオウギは扇を展開し、天井方向からのアルタネイトの攻撃を迎え撃つ態勢を取る。だが、次の瞬間、アルタネイトが予想しなかった事が起きた。
『なに!?』
それまで拡大し続けていた暴風の障壁は一瞬で消え去り、拡散していたエネルギーは一瞬で百合香に向けて収束してゆく。そして、百合香は即座に叫んだ。
「瑠魅香!」
『あいよー!』
百合香の姿は一瞬で、紫のドレスをまとった黒髪の魔女に変ぼうする。瑠魅香は間髪入れず杖を振るった。
『まっ…まさか!』
アルタネイトの声が震える。瑠魅香の狙いはアルタネイトではない。無言でたたずむ聖母像だった。
「トライデント・ドリリング・サンダー!」
3本の渦巻く雷の槍が、杖から聖母像めがけて放たれた。アルタネイトは叫ぶ。
『やめろー!』
アルタネイトは3つの首とともに、ものすごい勢いで聖母像の前に立ちはだかり、全力の障壁を展開して瑠魅香の攻撃に対抗した。だがエネルギーを温存していた瑠魅香の魔力には対抗し切れず、3つの首は障壁もろとも、雷の槍によって打ち砕かれてしまった。
「きゃああ!」
自ら放った魔法と障壁の激突の余波に、瑠魅香自身があやうく吹き飛ばされかける。その背を支えたのはヒオウギだった。
「おっと!」
「サンキュー!」
「お前は百合香より軽いな」
瑠魅香の背後から、百合香の抗議の叫びが聞こえたが、それはどうでもよかった。目の前には、3つの首を失ったアルタネイトが頼りなげに浮遊しており、その背後には聖母像が無傷で立っていた。
『やっぱりね』
百合香が瑠魅香の中から、してやったり、という風情で呟いた。ヒオウギが訊ねる。
「どういうことだよ」
『あいつにとって、この聖母像が何らかの目的のために必要だったのよ。だから、ヒオウギへの攻撃を止めてまで、守らなきゃいけなかったんでしょ』
「どういうことだ。おい、額縁野郎。その気味の悪い像に、何かあるってのか」
ヒオウギは一歩踏み出すと、もはや防衛手段を失ったアルタネイトに凄んだ。アルタネイトはどこか投げやりなふうに笑う。
『ふん…バカな奴らだ、何も知らないくせに』
「なにい?」
『まあいい。僕を倒せたとしても、この像には手を出さない事だね。いちおう忠告だけはしておこう』
アルタネイトの言うことの意味がわかりかねたヒオウギは、面倒くさそうに扇を眼前に交差させた。
「額縁とおしゃべりする趣味はない。さっさと消えてもらうぜ」
『勘違いしないことだね。僕にもう、君たちを倒せる力はないとでも思ってるのかい』
アルタネイトが絵の中で不敵に笑うと、青白いオーラがその姿を覆いはじめた。すると、見えない重圧がヒオウギと瑠魅香を襲った。
「うっ!」
「なっ、なにこれ!」
内側からえぐられるような不快な波動が、ふたりの全身を震わせる。防御力で劣る瑠魅香は、その激痛に耐えられなかった。
「うあああーっ!」
『瑠魅香!』
慌てて百合香がバトンタッチして表に出てくる。だが百合香もまたエネルギーを消耗したままであり、まったく動けずその場に膝をついた。
「くっ…!」
『はははは!僕には勝てないってことさ!』
アルタネイトは勝ち誇った。防衛手段を失ってなお、その強さは氷騎士クラスといえた。だがそこで、まだ抵抗する者がいた。
「額縁ふぜいが、なめるなよ」
波動に耐えながらアルタネイトににじり寄るのは、ヒオウギだった。あきれたようにアルタネイトは笑う。
『見上げたものだね。もう、全身がバラバラに砕けそうだよ』
「ちがうね。砕けるのはお前さ」
重圧の中、ヒオウギは鳥の翼のように扇を広げる。全身にオーラが満ちていった。
「さあ、聖母像の前でお祈りをするんだな」
『なめるな!』
さらに重圧が強まる。だが、ヒオウギは怯まなかった。
「フェザー・ミストラル!」
勢いよく眼前に交差させた扇から、猛烈な突風がアルタネイトめがけて放たれた。
『ぐああああー!』
もはや防御手段を持たないアルタネイトは、背後の壁面に叩きつけられ、額縁はバラバラに砕け散り、カンバスごとズタズタにされて聖母像のわきに崩れ落ちた。
『がはっ!』
折れ曲がり、裂けたカンバスの中から、アルタネイトは苦痛にうめいた。重圧から解放されたヒオウギだったが、自ら放ったエネルギーの反動に耐え切れず、左腕が砕け散ってしまう。
「ぐっ…!」
「ヒオウギ!」
百合香が駆け寄る。だが、ヒオウギは強がって笑ってみせた。
「なんてことねえよ」
「あるでしょ!」
百合香の突っ込みに笑いながら、ヒオウギは床に情けなく転がるアルタネイトを指した。
「まだ息があるらしい。百合香、残念だがとどめを刺すのはお前にゆずってやる」
「気が進まないわね」
そう言いながら、百合香はアグニシオンを逆手に構え、ゆっくりとアルタネイトに近寄った。
「悪いけど、あんたのせいで大勢のレジスタンスが道具にされて、殺された。同情はしないよ」
動けない相手にとどめを刺す事に、百合香はいささかためらいはあったが、無数のレジスタンスの亡骸を思い浮かべた時にそれは消え去った。力をこめ、アグニシオンを振り下ろす。
だがその瞬間、思いもよらないことが起きた。
「えっ!?」
百合香の手が止まる。なぜなら、聖母像が突然、鳴動を始めたからだ。
「こっ、これは…」
すると、アルタネイトが突然、大声で笑い始めた。
『はははは!』
「な…」
『ただじゃ死なない…ここまで僕を追い詰めた、あなた達が悪いんだ!』
笑うアルタネイトに残された最後のエネルギーが、百合香の目の前で、聖母像に吸い取られていった。アルタネイトのカンバスは、全ての力を失うと、砂粒となって崩れ去ってしまった。
「いっ、いったい何が…」
「百合香!」
ボロボロのヒオウギが、百合香を残った右腕で支えた。驚く百合香の視界で、聖母像のわずかに欠けていた頭頂部が完全に復元されてゆく。禍々しい重圧が、崩壊した礼拝堂に満ちていった。
「百合香、何かまずい」
「ええ」
「逃げるぞ」
それ以外に選択肢はない。ふたりはダメージを負った足で、ふたたび礼拝堂から脱出するために歩き出した。
◇
ダリアは、礼拝堂から響いてくる振動に不安を覚えながら、必死で耐えていた。もし、百合香とヒオウギが戻ってこなかったら、という不安がよぎったとき、右手方向から聞き覚えのある足音がふたつ近寄ってきた。
「ダリア!」
「ダリア!」
その頼もしいユニゾンは、ルテニカとプミラだった。ルテニカはダリアに駆け寄ると、その身を起こしてやった。
「大丈夫ですか」
「はっ、はい…」
「じっとしていてください」
プミラが数珠を手に何か呪文を唱えると、ダリアの全身が淡いピンクのオーラに包まれた。すると、わずかではあるが力が戻ってくることに、ダリアは気付いた。
「応急処置なので、全快とはいきませんが、立てますか」
ダリアは、手をついて膝に力をこめる。どうにか、立って歩く程度にはエネルギーが回復したようだった。
「あっ、ありがとうございます」
「どういたしまして。あなた一人ですか」
すると、ダリアはハッとしてふたりを見た。
「百合香さんとヒオウギさんが、礼拝堂に!敵です!」
その報せにルテニカたちは頷き合って、ダリアが指さした方を見た。
「ダリア、申し訳ありませんが、あなたはここにいてください。私たちがヒオウギたちに加勢してきます」
「ルテニカ、その必要はなさそうですよ」
プミラが、ルテニカの肩をたたく。
「え?」
すると、振動が聞こえる通路の奥から、よく知った長髪とショートヘアの二人が、肩をくんで歩いてきた。
「ルテニカ!」
「プミラ!無事だったか」
百合香とヒオウギが、ボロボロの状態で歩いてくる。ルテニカ達は慌てて駆け寄った。
「大丈夫ですか、二人とも」
「ヒオウギ、あなた腕が…」
プミラがヒオウギのダメージに深刻な顔を見せたが、ヒオウギはそれどころではない、と言った。
「やばい事が起きているらしい。敵は倒したんだが、どうも奴さん、何か企んでたみたいでな」
「それが、今のこの不気味な振動ということですか」
すると、百合香が言った。
「あの礼拝堂には、何か秘密が隠されていたらしい。敵が死ぬ間際に、それを発動させた」
「秘密?」
「説明はあと。とにかく逃げよう、今はやばい。他のみんなと再び合流するのが先」
やばい、と連呼されて只ならぬ事態と悟ったルテニカ達は、頷き合うとそれぞれが百合香、ヒオウギの肩を支えた。
「わかりました。とにかく、ここから遠ざかりますよ」
満身創痍の百合香とヒオウギをガードしつつ、5人は振動が響く通路をゆっくりと移動した。振動はなおも続き、まるで止む気配を見せなかった。
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