勘違いの工房主~英雄パーティの元雑用係が、実は戦闘以外がSSSランクだったというよくある話~

時野洋輔

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幕間話2

騎士団の新装備

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 武器仙人から貰った剣の話です。
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 その日、俺たち騎士団は強制招集された。ただし、緊急性を伴わない強制招集だ。
 この町に赴任してから初めてじゃないだろうか?
 本当なら今日は、二カ月かけてようやく口説き落とした宿屋の看板娘のケティちゃんとデートだったって言うのに、昨日のうちにキャンセルをせざるを得なくなった。結果、お詫びに給料の三分の一もするアクセサリーをプレゼントする羽目になった。まだ手も握っていないというのに。
 やれやれだ。

 さてさて、強制招集の内容はなんだろうか?
 どこかのお偉いさんが訪れるのか? それならまだいいが、グルマク帝国との和平が進み、軍備縮小の流れが王都に広がっているからな。もしかして、人員整理でも起こるのか?
 まぁ、本当に人員整理するってことになったら、アルレイド将軍は自分が最初に辞めるって言いだすだろうな。そうなったら、俺も騎士をやめて、将軍と一緒に傭兵稼業ってのも悪くはないか。そうなるとこの町にいられなくなり、ケティちゃんとのデートもできないけれど、まぁ他の町にもかわいい子はいっぱいいるだろうからな。

 警邏中の騎士を除き全員が鍛錬所に集まっていた。
 最後に入った俺を、アルレイド将軍が注意する。

「遅いぞ、ジェネリク」
「すみません、将軍。いろいろと覚悟を決めていたので。で、話はもう終わりましたか?」
「いや、これからだ。ちょうどいい、ジェネリク、この剣を抜いてみろ」
「剣ですか?」

 人員整理――って話じゃないのか?
 兎も角、俺は将軍から剣を受け取り――そして握っただけで気付く。
 この剣は、ただの剣じゃないってことに。

「将軍、これは?」
「抜いてみろ、と言ったはずだ」

 言われて、俺は剣を抜いた。俺の二枚目の顔が刀身に映った。
 これはただの剣じゃない。ドワーフの秘術でしか作ることができないというダマスカス鋼で作られた剣だ。
 価値は少なく見積もっても金貨100枚ってところだ。家が買えるぞ、これは。

「将軍、教えてください、この剣はどうしたんですか?」
「聞きたいのは俺のほうだ、どうしたものか……」
「えっと、本当にどうしたんですか?」

 将軍の様子がおかしい。何か頭を抱えて考え込んでいる。一体どうやってこの剣を手に入れたんだ?
 その辺の武器屋で売っているわけはないし。

「もしも武器商人が売りにきたのですか? だとしたら、将軍の分だけでも買っておくべきです。この町にはいつ魔族の襲来があるかわからないのですから」
「いや、売りにきたのではない、貰ったのだ」
「貰った? 貸与でもなくてですか? 売ってもらったというわけでもなく?」
「ああ、貰ったんだ」

 そんなバカな。こんな名剣、王都にいるサンノバ将軍でも貸与していただいているかどうか。
 そもそも、普通ならば大富豪が家宝にしてもおかしくないような名剣だ。
 それを貰った?
 どういうことだ?

「どうだ、ジェネリク。その剣を振るってみたくはないか?」
「え……えぇ。勿論、この剣があれば魔族が襲ってきても遅れを取ったりはしないですね」
「そうか、ならそれはお前の剣だ。受け取れ」
「え……えぇぇぇぇぇえっ!?」

 将軍、もしかして俺をからかっているんですか?
 俺の心情を見透かしたかのように将軍は立ち上がると、風呂敷を広げた。
 そこには、大量の剣があった。
 しかも、その一本一本が――

「まさか――将軍、それ」
「ああ。ジェネリクが持っているその剣と比べても遜色のない名剣ばかりだ。この剣は、これより騎士団全員の装備となる」

 そんなことを言われても、素直に歓喜できるわけがない。戸惑いの方が大きい。
 例えるなら、上級貴族が住むような屋敷に案内されて、「今日からここがお前の家だ」と言われるのと同じようなものだから。

「言いたいことはわかるが、俺もよくわからん。例の工房アトリエで働くクルトが訪れてな。知り合いのお爺さんに貰ったんで、皆で使って下さいと言われたので中身も見ずに受け取ったんだ。名剣だと知り、ユーリシア殿にも尋ねたが、気にするなの一点張りでな……どうしたものか」

 こんなに悩む将軍を見るのは初めてだった。

 その後、騎士団全員で話し合い、自分たちでこの剣を使うことにした。
 そして、俺は剣を授かった時、ある誓いを立てた。
 自分の命を懸けてでも、この町とそしてこの町にある工房アトリエを守る剣と盾になるという誓いを。

 きっと騎士団全員同じ気持ちだろう。

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3巻書籍化作業に伴い、内容が変更されています。
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