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10巻
10-2
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「よ、ようこそ、第二百五十七居住区へ」
街の入り口の検問所、城壁の扉から出てきて、やや緊張した様子でそう言って出迎えたのは、口と鼻をマスクで覆った若い衛兵と思われる男の人だった。
どうやら言葉が通じるらしい。
「輸送隊……には見えないし、調査団の方でしょうか?」
「いや、私たちは旅人なんだ……けど」
「旅人っ!?」
ユーリシアさんの返答にとても驚き声を上げた。
何かまずかったのだろうか?
アクリみたいな小さな子供が一緒になっている旅人は珍しいのかもしれない。
「すみません、中にお入りください」
そう言うと、街の重い扉が開き、僕たちが扉に入るとすぐに閉じた。
二重扉になっているらしく、奥にはさらに扉がある。
「こちらでお待ちください」
二つの扉の間に並べられた椅子に座るように促され、男の人は奥の扉を開けてどこかに向かった。
どうも城壁の中にも部屋があるらしく、椅子の横に中に通じる扉があり、その上にはプレートがかかっていた。
「ラピタル文明の古代文字ですね。アクリ、読めますか?」
「はい。シャワー室って書いてあります」
アクリがスラスラと答えた。
「シャワー室? こんなところにですか?」
「たぶん、街の外の魔素を洗い流すための施設ではないでしょうか? この二重扉も、外の魔素を街の中に入れないためのものでしょうし」
「魔素を入れないって、空ががら空きじゃないか?」
「上空には結界が敷かれているみたいですね。こんな設備があるなんて知りませんでした。町全体を覆う結界と換気システム、あとは多分水の浄化システムがそれぞれあるんだと思います」
あぁ、確かに結界が張ってあるみたいだ。見た感じ、魔力を弾くものだから、魔力と同じ性質を持つ魔素も中に通さない。
ただ、何度も人が行き来する街の入り口はどうも結界が緩くなるから、こうして二重扉にしているのか。
「すみません、いま上司がこちらに向かっていますので」
そう言って衛兵が戻ってきた。
「待ってる間、質問いいかい?」
「はい、俺に答えられることでしたら」
ユーリシアさんが声をかけると、彼はそう答えて姿勢を正す。
「いや、そこまでのことじゃないよ。この街って、何人くらい人がいるんだい?」
「はい、この居住区の定員は三百名で、現在二百九十八名の人がいます。ですから、移住は少し厳しいかもしれません」
「移住は考えてないんだけどさ――これ、骨董品屋から買った地図なんだけど、この周囲の居住区ってどこにあるかわかるか?」
そう言って、バンダナさんが用意してくれた、かつてのこの世界の地図を見せる。
「うわ、本当に古い地図ですね。俺も街の外のことはあんまり知らないんですけど、この地図、地形も結構変わってますよ。えっと、俺が聞いて知っているのは――」
衛兵は少し慣れてきた様子で、すらすらと知っている場所を指差していく。
どうやらかつて大きな街があった場所は居住区として使われているようだった。逆に、小さな街や村などはほとんど居住区として使われていない。
さらに、そこに住んでいる人のだいたいの数をユーリシアさんは聞き出してくれた。
衛兵は本当に周辺の居住区しか知らないため、教えてもらったのは数カ所だけだったが、この大陸の居住区は少なくとも百以上存在するらしい。
行き来はほとんどしておらず、唯一、輸送隊と呼ばれる行商人が訪れるだけなんだとか。
「ところで、皆さんにお聞きしたいのですが――その、邪素は平気なのですか?」
「――?」
「ユーリシアさん、たぶん魔素のことだと思います」
邪素という言葉に聞き慣れないユーリシアさんが一瞬なんのことかと不思議そうな顔をしたので、僕が小声で伝える。
普通の人間は邪素の溢れている場所を歩くことはできないのだ。
「ああ、それなら、この首からぶらさげてるこいつが無効にしてくれてるんだ」
そう言って、ユーリシアさんは首からぶら下げているネックレスを指差す。
埋め込まれた宝石のように見える玉は空のダンジョンコアから作ったもので、一定時間周囲の魔素を吸収する力がある。
魔素が濃すぎる場所だとあっという間に玉が真っ黒に染まり、魔素を吸収できなくなってしまうが、特別に濃い場所に行くわけじゃないのならかなり長い時間――それこそ数カ月単位で使用できる。
「そんなの聞いたことないです。どこで造られてるんですか?」
「中央大陸なのっ!」
すかさずアクリが挙手して声を上げた。
これも打ち合わせで済ませていた。
中央大陸とは、ここから遥か東にある大陸の名前だ。今も同じ名前かどうかはわからないし、そもそも船や飛空艇(旧世界にも古代文明の時代にはあったらしい)での行き来がされているかどうかもわからない。
もしも人と出会った場合、別の大陸から来たと言えば、こちらの世界の現状について全く知らないこともある程度言い訳ができるからだ。
「別の大陸から来たんですか……道理でこのあたりの地理に詳しくないわけだ。よく居住区に辿り着けましたね」
衛兵は驚くより感心しているという感じで言った。
他にも話を聞いていると、衛兵が他の人から呼び出され、再び街の中に戻っていく。
「これは困りましたね」
「あぁ、困った」
「何が困ったんですか? 衛兵さん、いい人だったじゃないですか。それに言葉も通じますし」
リーゼさんとユーリシアさんがため息とともに言った感想に、僕が疑問を挟む。
「パパ、私たちの目的の一つは、この旧世界に残された人を見つけ、私たちの世界に連れていくかどうかを考えること。でも、今の話を聞くと、この旧世界には私たちが思っているより多くの人が生活を築いているみたい」
「それだけの大勢の人を私たちの世界に連れていくには、移民の受け入れの準備も大変です。トルシェンからの移民の受け入れも苦労しましたし」
そういえば、僕もトルシェンからの避難民を受け入れるために開拓村を作ったことがあったっけ。
あの時は数百人程度の移民だったけれど、それが数十万人、数百万人となったら確かに大変だ。
確かに、今回の旅、簡単に終わりそうにないな。
待つこと約一時間。
もしかして、忘れられているんじゃないだろうか? という可能性を感じた頃――
「待たせてしまってすみません。旅人がやってくるなんて前代未聞だったので、対応に戸惑って」
そう言ってやってきたのは、窮屈そうな服を着ているムキムキの筋肉質の男性だった。
年齢は四十歳くらいだろうか? かなり強そうだ。
「私はダイナー。この居住区の区長です。それで、この居住区に来た目的を聞かせてもらってもいいですか?」
「ああ、しばしの休息と人を探しているからその情報集め、あとは取引だな」
ユーリシアさんが言うと、ダイナーは顎に蓄えた髭を撫でる。
「取引ですか。他の居住区ではどうかは知りませんが、街の中に生物の持ち込みは禁止、また武器、薬や毒はここで検査を済ませたもので、区長である私との取引のみ。酒と香辛料はそれぞれギルドで販売されています。それと、街に入る時、長剣と弓矢は置いていってください。短剣なら護身用として持ち込みは可能です」
そう言われ、ユーリシアさんは一瞬躊躇したけれど鞘を外して、僕が作った刀である雪華を、リーゼさんも持っていた弓矢を衛兵の男の人に預ける。
「塩は売っても大丈夫なのか?」
「ん?」
塩は専売している地域が多いから念のためにと思ってユーリシアさんは尋ねたのだろう。だけど、区長さんは不思議そうな顔をした。
「他の大陸から来たのでしたね。岩塩は人の生活に欠かせませんから独占されることはありません。それと、街での取引も全て岩塩で行われていることもありますよ。たとえばこの服は岩塩約一キロといったところですかね? まぁ、通貨での取引の方が多いですが」
区長さんはいまにもボタンが飛びそうな服を摘まんで言う。
「では、街に入る前に《鑑定》をさせていただきます」
「いや、まだ売るとは決めてないから鑑定は後で――」
「君たちの地域ではやらないのですか? 私は《鑑定》の適性値が特に高いので、相手の賞罰等の情報を見ることができます。そのため、初めて訪れる来客には私が《鑑定》を行っているのですよ」
相手の賞罰を調べるスキル――魔法のようなものということだろうか? 犯罪者相手に《鑑定》を使えば、過去の罪歴がわかるみたいな。
僕たちの世界には存在しない魔法だけど、これまでの話からして、居住区間では情報のやり取りを行うのも至難の業だ。
別の居住区で罪を犯し、追放された人間がいたとしても他の居住区にそれを伝えるのは難しい。体の一部に烙印を押すという手もあるけれど、犯罪者全員に烙印を押すというのも、烙印で細かい情報まで残すとなると、押す方も押される方も大変だ。
その点、目に見えない状態で、《鑑定》を使って調べられるというのなら、情報を他の居住区と共有することもできるか。
「じゃあ、まずは僕に《鑑定》を――」
「いや、私に頼む」
何か危険なことがあるかもと思って僕が前に出たけど、ユーリシアさんが割って入った。
ユーリシアさんが肩越しに振り向き、「大丈夫だ」と目で伝える。
「では、《鑑定》。うん、問題ありません。《鑑定》《鑑定》《鑑定》と。うん、四人とも賞罰はないですね」
え?
何をされたのかはわからない。区長さんはただ、《鑑定》と呟いて僕たち四人を一瞥しただけのように思える。
しかも魔力のようなものも感じなかった。
どのような仕組みなんだろ?
それとも、《鑑定》ってただの観察眼で、僕たちの挙動で犯罪者かどうか見抜こうとしたとか?
「ようこそ、第二百五十七居住区へ、ユーリシア・エレメントさん、クルト・ロックハンスさん、リーゼさん、アクリ・ロックハンスさん」
「「「「――っ!?」」」」
区長さんの言葉に、思わず息を呑む。
え?
僕たち、まだ自己紹介していないよね?
《鑑定》で名前がわかるんだ。
下手に偽名を使ったりしたら、一発でバレるってことか。
「アクリってファミリーネームはロックハンスなんですか? 家名は三人ともバラバラだから決めてなかったんですけど」
「あ、それはアクリが生まれた直後に私が役所に届けを出しました。それより、なんで私のフルネームが、リーゼ・ロックハンスじゃないんですかっ!?」
「まだ婚約者ってだけで結婚してないから当然だろ。リーゼロッテじゃないだけマシだ。私の名前は……あぁ、氏族から抜けたはずなのにローレッタ姉さんが勝手に登録しやがったな」
「ごほんっ」
僕とリーゼさん、ユーリシアさんが名前のせいで騒いでいると、区長さんが咳払いをした。
「とにかく、滅多にない客人です。特に急ぐ用事がないのであれば、今日は私の家に泊まるといいですよ」
区長さんは親切な人らしく、見ず知らずの僕たちを家に招待してくれた。
もしかしたら、まだ信用していない僕たちの監視の意味を含んでいるのかもしれないけど、断る理由もないので、その言葉に甘えることにした。
奥の門が開き、僕たちは居住区内に入った。
居住区に入って最初に目に入ったのは、野菜を育てている畑――いや、田んぼだった。
どうやら、この居住区の主食は小麦ではなく米らしい。
ホムーロス王国でも他国から輸入することがあって販売されているお米だけど、王国内ではあまり栽培されていない。米の栽培には多量の水が必要で、雨の少ないホムーロス王国では栽培に向いていないからだ。
ただ、同じ耕地面積でも採取できる量が多いという利点もある。
居住区の外は邪気となった魔素に溢れているから、城壁の内側に畑を作るしかない。
でも、敷地面積が限られているから、取れ高の多い稲作が中心になっているのか。
稲作に必要な水は、あの井戸から汲んでいるのかな?
井戸の水って街の外から流れ込んでいる地下水だよね? 魔素が溶け込んだりしてないのかな?
でも、田んぼの稲を見る限り、そんな兆候は見られないから、きっと井戸に魔素を浄化する仕組み、もしくは魔素を通さないフィルターみたいなものがあるんだと思う。
そして歩いている途中で気付いたことがある。
それは、僕たちが来たことは居住区中に伝わっているのだろうということだ。
田んぼで作業をしていた人や荷物を運ぶ人たちが遠巻きに僕たちを観察している。
好奇の視線は、女装して給仕服を着た状態で武道大会の受付に行った時にも感じたけど、やっぱり慣れるものじゃないな。
ただ、居住区の広さにしては、住民の数は少ないように思えた。
二百九十八人って言ってたもんね。
「ところで、そちらのアクリさんは、クルトさんのお子さんでしょうか?」
「はい、僕たちの娘です」
「そうですか。うちの娘の小さい頃を思い出します」
区長さんは朗らかに笑ったと思ったら、少し悲しそうな目を浮かべて言う。
「実はうちの娘はリーゼさんやユーリシアさんくらいの年齢なのですが、先日、事故で足を怪我してしまいまして、今は家から出ることもできないんです。なので、もしよかったら旅の話でもしてあげてもらえないでしょうか? きっと喜ぶと思いますので」
「はい、もちろん喜んで」
僕たちは頷いて了承した。
「――ここが私の家です」
案内された家は工房の三分の一くらいの広さの建物で、庭に生えている木には黄色い果物が実っている。
見たことのない果物だけど、旧世界にしかないものなのだろうか? たぶん食べられると思う。
客間に案内された僕たちは、持っていた嵩張る荷物をそこに下ろした。
ニーチェさん――木の大精霊ドリアードである彼女の枝が入っている鞄や、薬などの入っている僕の鞄は一応持ったままの方がいいかな?
荷物を下ろすと、僕たちはそのまま足を怪我したという区長さんの娘さんの部屋へと案内された。
「アイナ、入るぞ」
区長さんがそう言って扉を開けると、その部屋には薄緑色の髪の、リーゼさんたちくらいの年齢の可愛らしい女性がベッドに座り――
「あら、お客様ですか? トレーニング中なのでお見苦しいところ失礼します」
笑顔でダンベルを持ち上げて筋トレをしていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
私は第二百五十七居住区の区長――ダイナーという。
区長といっても、街の問題事を押し付けられるだけの名誉職であり、その恩恵は決して大きくない。私が住んでいる屋敷だって、単純に果樹の栽培により成した財で先祖が建てただけで、区長だから広い家に住んでいるというわけでもない。
その仕事も、基本は居住区のトラブルの仲裁がほとんどで、時折、罪人を罰し、居住区から追放する書類に判を押すくらいなものだ。
だが、今日は珍しいことが起きた。
居住区に旅人が訪れたというのだ。
居住区の外からの来訪者といえば、数カ月に一度、輸送隊が来るか、もしくは近くの居住区の人間が訪れるか二つに一つである。
少なくとも別の大陸からの訪問客など、私の知る限り聞いたことがない。
しかも、驚くことにその旅人のうち三人は私の娘くらいの年齢で、そのうち二人は女性。
もう一人は三歳くらいの女の子というのだから驚きだ。
いったい、どんな理由があって旅などという危険なことをしているのだろうか? と疑問に思う。
もしかしたら、他の居住区の間諜か罪人だろうか? という可能性も感じつつ、彼らと面会した。
最初に驚いたのは、彼らの荷物が少なすぎたこと。そして、その姿がとても綺麗なことだった。
着替えを何着も持っているようには見えないのに、まるでその日に着替えたかのような綺麗な服。
おそらく、《収納》と《浄化》のスキルを持っていることは間違いないと思われる。
そのような貴重なスキルを持つ人間を間諜にしたり追放したりする者はいない。
さらに、邪素吸着マスクとは別の邪素を寄せ付けない新技術をも持つという。
欲しい。
どうにかしてこの居住区に住まわせられないだろうか?
住民の定員を考えると、後二人が限度。だが、そこは区長の権限を使い、なんとかあの四人をこの居住区に迎え入れることはできるだろう。
だが、彼らは移住には興味がないという感じだったと聞く。
せめて、彼らの情報をもう少し入手できないかと、私は彼らを家に招待することにした。
もちろん、怪我で暇を持て余している娘の話し相手にもなるということも考えた上での話だ。
うちの娘は良くも悪くも槍術バカだからな。
剣を持っているユーリシアさんとは気が合うだろう。
客人に出すための水を汲んで戻ってくると、娘の部屋から笑い声が聞こえてきた。
「笑い声か……久しぶりだな」
脚がもう二度と動くことはないと、輸送隊に同行していた医者に言われたその日から、こんな元気な笑い声は聞いていない。
年齢も近いし、きっと話が弾んでいるんだろう。
そう思っていると、部屋の中から、話をするだけでは聞こえてくるはずのない、花瓶が割れたり棚が壊れたりするような、破壊音が聞こえてきた。
まさか、客人が暴れているのか!?
「何をしてるんだっ!」
私が慌てて部屋の扉を開けると――
「凄いです、ユーリシアさん! 私の槍を避けるなんて」
「いや、お嬢さんこそ凄い……が、棚を壊して怒られないか?」
「大丈夫です……あ、お父様。今、ユーリシアさんと模擬戦をしているんで、少し待ってください」
そう言って、アイナは大きく跳躍し――二度と動かないと言われていたその脚で跳躍し、練習用の槍でユーリシアさんに襲いかかった。
「なんで動いてるんだぁぁぁぁぁぁあっ!?」
二度と動かないと言われていた娘の脚が動いたことに、私は喜びより驚きが勝ってしまったのだった。
街の入り口の検問所、城壁の扉から出てきて、やや緊張した様子でそう言って出迎えたのは、口と鼻をマスクで覆った若い衛兵と思われる男の人だった。
どうやら言葉が通じるらしい。
「輸送隊……には見えないし、調査団の方でしょうか?」
「いや、私たちは旅人なんだ……けど」
「旅人っ!?」
ユーリシアさんの返答にとても驚き声を上げた。
何かまずかったのだろうか?
アクリみたいな小さな子供が一緒になっている旅人は珍しいのかもしれない。
「すみません、中にお入りください」
そう言うと、街の重い扉が開き、僕たちが扉に入るとすぐに閉じた。
二重扉になっているらしく、奥にはさらに扉がある。
「こちらでお待ちください」
二つの扉の間に並べられた椅子に座るように促され、男の人は奥の扉を開けてどこかに向かった。
どうも城壁の中にも部屋があるらしく、椅子の横に中に通じる扉があり、その上にはプレートがかかっていた。
「ラピタル文明の古代文字ですね。アクリ、読めますか?」
「はい。シャワー室って書いてあります」
アクリがスラスラと答えた。
「シャワー室? こんなところにですか?」
「たぶん、街の外の魔素を洗い流すための施設ではないでしょうか? この二重扉も、外の魔素を街の中に入れないためのものでしょうし」
「魔素を入れないって、空ががら空きじゃないか?」
「上空には結界が敷かれているみたいですね。こんな設備があるなんて知りませんでした。町全体を覆う結界と換気システム、あとは多分水の浄化システムがそれぞれあるんだと思います」
あぁ、確かに結界が張ってあるみたいだ。見た感じ、魔力を弾くものだから、魔力と同じ性質を持つ魔素も中に通さない。
ただ、何度も人が行き来する街の入り口はどうも結界が緩くなるから、こうして二重扉にしているのか。
「すみません、いま上司がこちらに向かっていますので」
そう言って衛兵が戻ってきた。
「待ってる間、質問いいかい?」
「はい、俺に答えられることでしたら」
ユーリシアさんが声をかけると、彼はそう答えて姿勢を正す。
「いや、そこまでのことじゃないよ。この街って、何人くらい人がいるんだい?」
「はい、この居住区の定員は三百名で、現在二百九十八名の人がいます。ですから、移住は少し厳しいかもしれません」
「移住は考えてないんだけどさ――これ、骨董品屋から買った地図なんだけど、この周囲の居住区ってどこにあるかわかるか?」
そう言って、バンダナさんが用意してくれた、かつてのこの世界の地図を見せる。
「うわ、本当に古い地図ですね。俺も街の外のことはあんまり知らないんですけど、この地図、地形も結構変わってますよ。えっと、俺が聞いて知っているのは――」
衛兵は少し慣れてきた様子で、すらすらと知っている場所を指差していく。
どうやらかつて大きな街があった場所は居住区として使われているようだった。逆に、小さな街や村などはほとんど居住区として使われていない。
さらに、そこに住んでいる人のだいたいの数をユーリシアさんは聞き出してくれた。
衛兵は本当に周辺の居住区しか知らないため、教えてもらったのは数カ所だけだったが、この大陸の居住区は少なくとも百以上存在するらしい。
行き来はほとんどしておらず、唯一、輸送隊と呼ばれる行商人が訪れるだけなんだとか。
「ところで、皆さんにお聞きしたいのですが――その、邪素は平気なのですか?」
「――?」
「ユーリシアさん、たぶん魔素のことだと思います」
邪素という言葉に聞き慣れないユーリシアさんが一瞬なんのことかと不思議そうな顔をしたので、僕が小声で伝える。
普通の人間は邪素の溢れている場所を歩くことはできないのだ。
「ああ、それなら、この首からぶらさげてるこいつが無効にしてくれてるんだ」
そう言って、ユーリシアさんは首からぶら下げているネックレスを指差す。
埋め込まれた宝石のように見える玉は空のダンジョンコアから作ったもので、一定時間周囲の魔素を吸収する力がある。
魔素が濃すぎる場所だとあっという間に玉が真っ黒に染まり、魔素を吸収できなくなってしまうが、特別に濃い場所に行くわけじゃないのならかなり長い時間――それこそ数カ月単位で使用できる。
「そんなの聞いたことないです。どこで造られてるんですか?」
「中央大陸なのっ!」
すかさずアクリが挙手して声を上げた。
これも打ち合わせで済ませていた。
中央大陸とは、ここから遥か東にある大陸の名前だ。今も同じ名前かどうかはわからないし、そもそも船や飛空艇(旧世界にも古代文明の時代にはあったらしい)での行き来がされているかどうかもわからない。
もしも人と出会った場合、別の大陸から来たと言えば、こちらの世界の現状について全く知らないこともある程度言い訳ができるからだ。
「別の大陸から来たんですか……道理でこのあたりの地理に詳しくないわけだ。よく居住区に辿り着けましたね」
衛兵は驚くより感心しているという感じで言った。
他にも話を聞いていると、衛兵が他の人から呼び出され、再び街の中に戻っていく。
「これは困りましたね」
「あぁ、困った」
「何が困ったんですか? 衛兵さん、いい人だったじゃないですか。それに言葉も通じますし」
リーゼさんとユーリシアさんがため息とともに言った感想に、僕が疑問を挟む。
「パパ、私たちの目的の一つは、この旧世界に残された人を見つけ、私たちの世界に連れていくかどうかを考えること。でも、今の話を聞くと、この旧世界には私たちが思っているより多くの人が生活を築いているみたい」
「それだけの大勢の人を私たちの世界に連れていくには、移民の受け入れの準備も大変です。トルシェンからの移民の受け入れも苦労しましたし」
そういえば、僕もトルシェンからの避難民を受け入れるために開拓村を作ったことがあったっけ。
あの時は数百人程度の移民だったけれど、それが数十万人、数百万人となったら確かに大変だ。
確かに、今回の旅、簡単に終わりそうにないな。
待つこと約一時間。
もしかして、忘れられているんじゃないだろうか? という可能性を感じた頃――
「待たせてしまってすみません。旅人がやってくるなんて前代未聞だったので、対応に戸惑って」
そう言ってやってきたのは、窮屈そうな服を着ているムキムキの筋肉質の男性だった。
年齢は四十歳くらいだろうか? かなり強そうだ。
「私はダイナー。この居住区の区長です。それで、この居住区に来た目的を聞かせてもらってもいいですか?」
「ああ、しばしの休息と人を探しているからその情報集め、あとは取引だな」
ユーリシアさんが言うと、ダイナーは顎に蓄えた髭を撫でる。
「取引ですか。他の居住区ではどうかは知りませんが、街の中に生物の持ち込みは禁止、また武器、薬や毒はここで検査を済ませたもので、区長である私との取引のみ。酒と香辛料はそれぞれギルドで販売されています。それと、街に入る時、長剣と弓矢は置いていってください。短剣なら護身用として持ち込みは可能です」
そう言われ、ユーリシアさんは一瞬躊躇したけれど鞘を外して、僕が作った刀である雪華を、リーゼさんも持っていた弓矢を衛兵の男の人に預ける。
「塩は売っても大丈夫なのか?」
「ん?」
塩は専売している地域が多いから念のためにと思ってユーリシアさんは尋ねたのだろう。だけど、区長さんは不思議そうな顔をした。
「他の大陸から来たのでしたね。岩塩は人の生活に欠かせませんから独占されることはありません。それと、街での取引も全て岩塩で行われていることもありますよ。たとえばこの服は岩塩約一キロといったところですかね? まぁ、通貨での取引の方が多いですが」
区長さんはいまにもボタンが飛びそうな服を摘まんで言う。
「では、街に入る前に《鑑定》をさせていただきます」
「いや、まだ売るとは決めてないから鑑定は後で――」
「君たちの地域ではやらないのですか? 私は《鑑定》の適性値が特に高いので、相手の賞罰等の情報を見ることができます。そのため、初めて訪れる来客には私が《鑑定》を行っているのですよ」
相手の賞罰を調べるスキル――魔法のようなものということだろうか? 犯罪者相手に《鑑定》を使えば、過去の罪歴がわかるみたいな。
僕たちの世界には存在しない魔法だけど、これまでの話からして、居住区間では情報のやり取りを行うのも至難の業だ。
別の居住区で罪を犯し、追放された人間がいたとしても他の居住区にそれを伝えるのは難しい。体の一部に烙印を押すという手もあるけれど、犯罪者全員に烙印を押すというのも、烙印で細かい情報まで残すとなると、押す方も押される方も大変だ。
その点、目に見えない状態で、《鑑定》を使って調べられるというのなら、情報を他の居住区と共有することもできるか。
「じゃあ、まずは僕に《鑑定》を――」
「いや、私に頼む」
何か危険なことがあるかもと思って僕が前に出たけど、ユーリシアさんが割って入った。
ユーリシアさんが肩越しに振り向き、「大丈夫だ」と目で伝える。
「では、《鑑定》。うん、問題ありません。《鑑定》《鑑定》《鑑定》と。うん、四人とも賞罰はないですね」
え?
何をされたのかはわからない。区長さんはただ、《鑑定》と呟いて僕たち四人を一瞥しただけのように思える。
しかも魔力のようなものも感じなかった。
どのような仕組みなんだろ?
それとも、《鑑定》ってただの観察眼で、僕たちの挙動で犯罪者かどうか見抜こうとしたとか?
「ようこそ、第二百五十七居住区へ、ユーリシア・エレメントさん、クルト・ロックハンスさん、リーゼさん、アクリ・ロックハンスさん」
「「「「――っ!?」」」」
区長さんの言葉に、思わず息を呑む。
え?
僕たち、まだ自己紹介していないよね?
《鑑定》で名前がわかるんだ。
下手に偽名を使ったりしたら、一発でバレるってことか。
「アクリってファミリーネームはロックハンスなんですか? 家名は三人ともバラバラだから決めてなかったんですけど」
「あ、それはアクリが生まれた直後に私が役所に届けを出しました。それより、なんで私のフルネームが、リーゼ・ロックハンスじゃないんですかっ!?」
「まだ婚約者ってだけで結婚してないから当然だろ。リーゼロッテじゃないだけマシだ。私の名前は……あぁ、氏族から抜けたはずなのにローレッタ姉さんが勝手に登録しやがったな」
「ごほんっ」
僕とリーゼさん、ユーリシアさんが名前のせいで騒いでいると、区長さんが咳払いをした。
「とにかく、滅多にない客人です。特に急ぐ用事がないのであれば、今日は私の家に泊まるといいですよ」
区長さんは親切な人らしく、見ず知らずの僕たちを家に招待してくれた。
もしかしたら、まだ信用していない僕たちの監視の意味を含んでいるのかもしれないけど、断る理由もないので、その言葉に甘えることにした。
奥の門が開き、僕たちは居住区内に入った。
居住区に入って最初に目に入ったのは、野菜を育てている畑――いや、田んぼだった。
どうやら、この居住区の主食は小麦ではなく米らしい。
ホムーロス王国でも他国から輸入することがあって販売されているお米だけど、王国内ではあまり栽培されていない。米の栽培には多量の水が必要で、雨の少ないホムーロス王国では栽培に向いていないからだ。
ただ、同じ耕地面積でも採取できる量が多いという利点もある。
居住区の外は邪気となった魔素に溢れているから、城壁の内側に畑を作るしかない。
でも、敷地面積が限られているから、取れ高の多い稲作が中心になっているのか。
稲作に必要な水は、あの井戸から汲んでいるのかな?
井戸の水って街の外から流れ込んでいる地下水だよね? 魔素が溶け込んだりしてないのかな?
でも、田んぼの稲を見る限り、そんな兆候は見られないから、きっと井戸に魔素を浄化する仕組み、もしくは魔素を通さないフィルターみたいなものがあるんだと思う。
そして歩いている途中で気付いたことがある。
それは、僕たちが来たことは居住区中に伝わっているのだろうということだ。
田んぼで作業をしていた人や荷物を運ぶ人たちが遠巻きに僕たちを観察している。
好奇の視線は、女装して給仕服を着た状態で武道大会の受付に行った時にも感じたけど、やっぱり慣れるものじゃないな。
ただ、居住区の広さにしては、住民の数は少ないように思えた。
二百九十八人って言ってたもんね。
「ところで、そちらのアクリさんは、クルトさんのお子さんでしょうか?」
「はい、僕たちの娘です」
「そうですか。うちの娘の小さい頃を思い出します」
区長さんは朗らかに笑ったと思ったら、少し悲しそうな目を浮かべて言う。
「実はうちの娘はリーゼさんやユーリシアさんくらいの年齢なのですが、先日、事故で足を怪我してしまいまして、今は家から出ることもできないんです。なので、もしよかったら旅の話でもしてあげてもらえないでしょうか? きっと喜ぶと思いますので」
「はい、もちろん喜んで」
僕たちは頷いて了承した。
「――ここが私の家です」
案内された家は工房の三分の一くらいの広さの建物で、庭に生えている木には黄色い果物が実っている。
見たことのない果物だけど、旧世界にしかないものなのだろうか? たぶん食べられると思う。
客間に案内された僕たちは、持っていた嵩張る荷物をそこに下ろした。
ニーチェさん――木の大精霊ドリアードである彼女の枝が入っている鞄や、薬などの入っている僕の鞄は一応持ったままの方がいいかな?
荷物を下ろすと、僕たちはそのまま足を怪我したという区長さんの娘さんの部屋へと案内された。
「アイナ、入るぞ」
区長さんがそう言って扉を開けると、その部屋には薄緑色の髪の、リーゼさんたちくらいの年齢の可愛らしい女性がベッドに座り――
「あら、お客様ですか? トレーニング中なのでお見苦しいところ失礼します」
笑顔でダンベルを持ち上げて筋トレをしていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
私は第二百五十七居住区の区長――ダイナーという。
区長といっても、街の問題事を押し付けられるだけの名誉職であり、その恩恵は決して大きくない。私が住んでいる屋敷だって、単純に果樹の栽培により成した財で先祖が建てただけで、区長だから広い家に住んでいるというわけでもない。
その仕事も、基本は居住区のトラブルの仲裁がほとんどで、時折、罪人を罰し、居住区から追放する書類に判を押すくらいなものだ。
だが、今日は珍しいことが起きた。
居住区に旅人が訪れたというのだ。
居住区の外からの来訪者といえば、数カ月に一度、輸送隊が来るか、もしくは近くの居住区の人間が訪れるか二つに一つである。
少なくとも別の大陸からの訪問客など、私の知る限り聞いたことがない。
しかも、驚くことにその旅人のうち三人は私の娘くらいの年齢で、そのうち二人は女性。
もう一人は三歳くらいの女の子というのだから驚きだ。
いったい、どんな理由があって旅などという危険なことをしているのだろうか? と疑問に思う。
もしかしたら、他の居住区の間諜か罪人だろうか? という可能性も感じつつ、彼らと面会した。
最初に驚いたのは、彼らの荷物が少なすぎたこと。そして、その姿がとても綺麗なことだった。
着替えを何着も持っているようには見えないのに、まるでその日に着替えたかのような綺麗な服。
おそらく、《収納》と《浄化》のスキルを持っていることは間違いないと思われる。
そのような貴重なスキルを持つ人間を間諜にしたり追放したりする者はいない。
さらに、邪素吸着マスクとは別の邪素を寄せ付けない新技術をも持つという。
欲しい。
どうにかしてこの居住区に住まわせられないだろうか?
住民の定員を考えると、後二人が限度。だが、そこは区長の権限を使い、なんとかあの四人をこの居住区に迎え入れることはできるだろう。
だが、彼らは移住には興味がないという感じだったと聞く。
せめて、彼らの情報をもう少し入手できないかと、私は彼らを家に招待することにした。
もちろん、怪我で暇を持て余している娘の話し相手にもなるということも考えた上での話だ。
うちの娘は良くも悪くも槍術バカだからな。
剣を持っているユーリシアさんとは気が合うだろう。
客人に出すための水を汲んで戻ってくると、娘の部屋から笑い声が聞こえてきた。
「笑い声か……久しぶりだな」
脚がもう二度と動くことはないと、輸送隊に同行していた医者に言われたその日から、こんな元気な笑い声は聞いていない。
年齢も近いし、きっと話が弾んでいるんだろう。
そう思っていると、部屋の中から、話をするだけでは聞こえてくるはずのない、花瓶が割れたり棚が壊れたりするような、破壊音が聞こえてきた。
まさか、客人が暴れているのか!?
「何をしてるんだっ!」
私が慌てて部屋の扉を開けると――
「凄いです、ユーリシアさん! 私の槍を避けるなんて」
「いや、お嬢さんこそ凄い……が、棚を壊して怒られないか?」
「大丈夫です……あ、お父様。今、ユーリシアさんと模擬戦をしているんで、少し待ってください」
そう言って、アイナは大きく跳躍し――二度と動かないと言われていたその脚で跳躍し、練習用の槍でユーリシアさんに襲いかかった。
「なんで動いてるんだぁぁぁぁぁぁあっ!?」
二度と動かないと言われていた娘の脚が動いたことに、私は喜びより驚きが勝ってしまったのだった。
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