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VS 雑魚吸血鬼
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白馬のパトリックに乗り闇夜を疾走する二人。
背後を見ると追いかけてきた護衛の姿はもうそこになく、代わりに蝙蝠の群れがこちらに近付いてくる。
「ねぇ!」
闇の針を飛ばして一匹、また一匹と倒していくがその数は減っていく様子がない。
「ねぇ!」
魔力で生み出しているのならば数に限りはあるはずだが、吸血鬼ともなるとその魔力は人間より遥かに多く、魔力が尽きるのを待つのは得策ではないと彼は考える。
「ねぇってば! 聞こえてるんでしょ!」
男の前にいるミネリスがそう言って大声を上げた。
「聞きたいことはあるだろうが、今は我慢しろ」
「あなた、名前は?」
「こんな時にか?」
「名前がわからないと不便なのよ。それとも亡霊には名前もないの?」
本当は雑談に興じている場合ではないのだが、ミネリスには逃げるよりも彼の名前の方が大事らしい。
「ガウディルと呼べ」
「本物なの?」
「俺は俺だ。偽物も本物もない」
ミネリスは考えるように黙る。
「ねぇ、いつまで逃げるの?」
「無関係な人間を巻き込むのは俺の本意ではない」
「彼らは無関係じゃ……いえ、そうね」
ミネリスはラークのことを思い出して頷いた。
「この辺りでいいだろう」
馬は森の中を一切の迷いもなく進む。
まるで自分の庭を走っているかのように。
森の中の開けた場所で彼は馬を停めて降りた。
ここで蝙蝠を迎え撃つのだろうと思っていたら、突然ガウディルの手がミネリスの胸へと伸びた。
突然のことにミネリスは動けない。
彼の手は彼女の胸にある赤い宝石ペンダントを千切ると、それを放り投げた。
すると、飛んできた蝙蝠がその赤い宝石の方に向かって飛んでいく。
ガウディルはそこに目掛けて闇の球を投げた。
その闇は赤い宝石を呑み込み、さらにはそこに飛んでくる蝙蝠たちをも呑み込んだ。
「……闇の上級魔法――ブラックホール」
ミネリスが言った。
闇魔法は人間には扱えない魔法だと言われている。
そして闇の上級魔法が確認されたのは歴史上でただ一度――《闇紅竜》が使った時だけだと言われている。
「あの数の蝙蝠だ。同時に操るとなると簡単な命令しか下すことができない。そして、その命令は先ほどの宝石に込められた魔力を追えというものだ。誰から貰ったものかは知らないが、不用心だったな」
ミネリスは下唇を噛む。
迂闊だったと言わんばかりに。
「じゃあ、もう蝙蝠に追われる心配はないの?」
「いや、もうこちらの場所は相手に知られている。だったら――」
ガウディルは森の中を見た。
そこから白髪の痩せた男が現れた。
まるで病気のようにやせ細った白い肌。
不健康そうなその身体からは似つかわしくないほどのプレッシャーを、ミネリスは彼から感じていた。
やはり彼は吸血鬼なのだろう。
「キヒヒヒヒ。まさか姫ともあろうお方がそんな得体のしれない男と二人でいるなんて」
「あなた、何者?」
「ええ、全てお答えしましょう。その男を始末した後でね」
男が動いた。
直後、ガウディルの身体が吹っ飛んだ。
ミネリスは全く目で追えなかった。
「嘘っ!?」
彼女は信じられなかった。
目の前の吸血鬼の姿を目で追えなかったことにではない。
ガウディルが何もさせてもらえずに負けたことだ。
「私が生み出した蝙蝠を全て倒したときはもしやと思いましたが、やはり大したことがない。あの方から頂いたこの力の前では赤子も同然」
「あの方? レナルドのこと?」
「いいえ、違います。私の主は吸血鬼公爵――あの方ただ一人です。彼女こそが世界の王に相応しい」
「その吸血鬼公爵はいったい何者なの? 何を企んでいるの?」
そう尋ねながら、ミネリスは少し後ずさるが、足を止めた。
逃げようかと思ったが、しかし彼女の足は動かない。
時間稼ぎをして護衛の誰かが駆け付けても犠牲者が増えるだけだ。
ミネリスの剣は吸血鬼に効果の高い聖銀を使っている。
勝てるとしたら、もう自分しかいない。
吸血鬼は自分が圧倒的に有利だと思っている。
その隙をつく。
「教えてくれるんでしょう?」
「ええ、もちろん教えましょう。あの方は――」
直後、ミネリスは動いた。
隙をついたつもりだった。
しかし、ミネリスの剣は彼に届かない。
彼はいつの間にか腰の剣を抜いて、ミネリスの剣を受け止めていた。
そして、その剣はまるで蛇のように姿を変え、ミネリスの身体にまとわりついてきた。
「物騒な姫様ですね。いいでしょう。お望みとあらば、先にあなたを眷属にしましょう」
男はそう言って大きな口を開けた。
尖った犬歯がミネリスに迫る。
ミネリスは拘束を解こうとするが、その身体は動かない。
彼女はとうとう覚悟を決めた――が――男の剣が根元から斬られ、逃げようとしていたミネリスはそのまま後ろに倒れた。
それを斬ったのはガウディルだった。
「貴様、何故生きて――ぶほっ!」
吸血鬼が吹っ飛び後方の木に激突し、その大木をへし折る。
ガウディルが脚を上げていたので、彼が蹴り飛ばしたのだと気付いた。
「もう少し情報が得られるかと思ったが、北の姫君はせっかちだな」
「あなた、わざとやられたフリをしていたの!?」
「こんな雑魚にやられる俺ではない」
ガウディルはそう言って、蹴り飛ばした吸血鬼へと向かって歩いて行く。
「話の続きだ。それで、彼女とは誰だ?」
吸血鬼は質問には答えない。
彼は先ほど斬られたものとは別の剣を取り出し、ガウディルに斬りかかった。
しかし、その速度はミネリスにも見える程に落ちている。
そのような剣がガウディルに届くはずがなく――
「姫はせっかちだが、貴様は遅いな」
その剣が彼に届く前に、剣を持っていた吸血鬼の手首が斬り落とされる。。
「なんなんだ、なんなんだ貴様はっ! 私はあの方から力を授かった! 最強となるための力を――何故通じない?」
「元が弱いからだろ?」
「貴様ぁぁぁぁぁっ!」
激昂した吸血鬼から力が溢れるが、それがどのような力かは最後までミネリスにはわからなかった。
何故なら、男がその力を元に行動をとる前に、その首から上が飛んでいたからだ。
そして、吸血鬼の身体が灰に変わっていく。
吸血鬼が死ねば灰になる。
そして、気付けばガウディルの姿も消えていた。
パトリックが近付いてきて、ミネリスの頭にその頬をこすりつける。
もうすべて終わったと言っているかのようだった。
そして、ミネリスはパトリックの足跡を追ってこちらに駆け付けてくる護衛達のことを考える。
ここで何があったのか? さっきミネリスと一緒にいた男は誰なのか?
これから来るであろう質問にどう答えたらいいか?
正直に答えていいものかどうか悩みながら、とりあえず彼女は宝石を失ってただの細い鎖になってしまったペンダントを森の中に投げ捨てるのだった。
背後を見ると追いかけてきた護衛の姿はもうそこになく、代わりに蝙蝠の群れがこちらに近付いてくる。
「ねぇ!」
闇の針を飛ばして一匹、また一匹と倒していくがその数は減っていく様子がない。
「ねぇ!」
魔力で生み出しているのならば数に限りはあるはずだが、吸血鬼ともなるとその魔力は人間より遥かに多く、魔力が尽きるのを待つのは得策ではないと彼は考える。
「ねぇってば! 聞こえてるんでしょ!」
男の前にいるミネリスがそう言って大声を上げた。
「聞きたいことはあるだろうが、今は我慢しろ」
「あなた、名前は?」
「こんな時にか?」
「名前がわからないと不便なのよ。それとも亡霊には名前もないの?」
本当は雑談に興じている場合ではないのだが、ミネリスには逃げるよりも彼の名前の方が大事らしい。
「ガウディルと呼べ」
「本物なの?」
「俺は俺だ。偽物も本物もない」
ミネリスは考えるように黙る。
「ねぇ、いつまで逃げるの?」
「無関係な人間を巻き込むのは俺の本意ではない」
「彼らは無関係じゃ……いえ、そうね」
ミネリスはラークのことを思い出して頷いた。
「この辺りでいいだろう」
馬は森の中を一切の迷いもなく進む。
まるで自分の庭を走っているかのように。
森の中の開けた場所で彼は馬を停めて降りた。
ここで蝙蝠を迎え撃つのだろうと思っていたら、突然ガウディルの手がミネリスの胸へと伸びた。
突然のことにミネリスは動けない。
彼の手は彼女の胸にある赤い宝石ペンダントを千切ると、それを放り投げた。
すると、飛んできた蝙蝠がその赤い宝石の方に向かって飛んでいく。
ガウディルはそこに目掛けて闇の球を投げた。
その闇は赤い宝石を呑み込み、さらにはそこに飛んでくる蝙蝠たちをも呑み込んだ。
「……闇の上級魔法――ブラックホール」
ミネリスが言った。
闇魔法は人間には扱えない魔法だと言われている。
そして闇の上級魔法が確認されたのは歴史上でただ一度――《闇紅竜》が使った時だけだと言われている。
「あの数の蝙蝠だ。同時に操るとなると簡単な命令しか下すことができない。そして、その命令は先ほどの宝石に込められた魔力を追えというものだ。誰から貰ったものかは知らないが、不用心だったな」
ミネリスは下唇を噛む。
迂闊だったと言わんばかりに。
「じゃあ、もう蝙蝠に追われる心配はないの?」
「いや、もうこちらの場所は相手に知られている。だったら――」
ガウディルは森の中を見た。
そこから白髪の痩せた男が現れた。
まるで病気のようにやせ細った白い肌。
不健康そうなその身体からは似つかわしくないほどのプレッシャーを、ミネリスは彼から感じていた。
やはり彼は吸血鬼なのだろう。
「キヒヒヒヒ。まさか姫ともあろうお方がそんな得体のしれない男と二人でいるなんて」
「あなた、何者?」
「ええ、全てお答えしましょう。その男を始末した後でね」
男が動いた。
直後、ガウディルの身体が吹っ飛んだ。
ミネリスは全く目で追えなかった。
「嘘っ!?」
彼女は信じられなかった。
目の前の吸血鬼の姿を目で追えなかったことにではない。
ガウディルが何もさせてもらえずに負けたことだ。
「私が生み出した蝙蝠を全て倒したときはもしやと思いましたが、やはり大したことがない。あの方から頂いたこの力の前では赤子も同然」
「あの方? レナルドのこと?」
「いいえ、違います。私の主は吸血鬼公爵――あの方ただ一人です。彼女こそが世界の王に相応しい」
「その吸血鬼公爵はいったい何者なの? 何を企んでいるの?」
そう尋ねながら、ミネリスは少し後ずさるが、足を止めた。
逃げようかと思ったが、しかし彼女の足は動かない。
時間稼ぎをして護衛の誰かが駆け付けても犠牲者が増えるだけだ。
ミネリスの剣は吸血鬼に効果の高い聖銀を使っている。
勝てるとしたら、もう自分しかいない。
吸血鬼は自分が圧倒的に有利だと思っている。
その隙をつく。
「教えてくれるんでしょう?」
「ええ、もちろん教えましょう。あの方は――」
直後、ミネリスは動いた。
隙をついたつもりだった。
しかし、ミネリスの剣は彼に届かない。
彼はいつの間にか腰の剣を抜いて、ミネリスの剣を受け止めていた。
そして、その剣はまるで蛇のように姿を変え、ミネリスの身体にまとわりついてきた。
「物騒な姫様ですね。いいでしょう。お望みとあらば、先にあなたを眷属にしましょう」
男はそう言って大きな口を開けた。
尖った犬歯がミネリスに迫る。
ミネリスは拘束を解こうとするが、その身体は動かない。
彼女はとうとう覚悟を決めた――が――男の剣が根元から斬られ、逃げようとしていたミネリスはそのまま後ろに倒れた。
それを斬ったのはガウディルだった。
「貴様、何故生きて――ぶほっ!」
吸血鬼が吹っ飛び後方の木に激突し、その大木をへし折る。
ガウディルが脚を上げていたので、彼が蹴り飛ばしたのだと気付いた。
「もう少し情報が得られるかと思ったが、北の姫君はせっかちだな」
「あなた、わざとやられたフリをしていたの!?」
「こんな雑魚にやられる俺ではない」
ガウディルはそう言って、蹴り飛ばした吸血鬼へと向かって歩いて行く。
「話の続きだ。それで、彼女とは誰だ?」
吸血鬼は質問には答えない。
彼は先ほど斬られたものとは別の剣を取り出し、ガウディルに斬りかかった。
しかし、その速度はミネリスにも見える程に落ちている。
そのような剣がガウディルに届くはずがなく――
「姫はせっかちだが、貴様は遅いな」
その剣が彼に届く前に、剣を持っていた吸血鬼の手首が斬り落とされる。。
「なんなんだ、なんなんだ貴様はっ! 私はあの方から力を授かった! 最強となるための力を――何故通じない?」
「元が弱いからだろ?」
「貴様ぁぁぁぁぁっ!」
激昂した吸血鬼から力が溢れるが、それがどのような力かは最後までミネリスにはわからなかった。
何故なら、男がその力を元に行動をとる前に、その首から上が飛んでいたからだ。
そして、吸血鬼の身体が灰に変わっていく。
吸血鬼が死ねば灰になる。
そして、気付けばガウディルの姿も消えていた。
パトリックが近付いてきて、ミネリスの頭にその頬をこすりつける。
もうすべて終わったと言っているかのようだった。
そして、ミネリスはパトリックの足跡を追ってこちらに駆け付けてくる護衛達のことを考える。
ここで何があったのか? さっきミネリスと一緒にいた男は誰なのか?
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