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1、なぎ
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父さんの都合で引っ越した家の傍には、海が広がっているらしい。
四月に控える新学期前の休日、小学校が始まる前に町の道に慣れるために僕は、家の近くを散歩していた。
きれいに区画整理された住宅地。そこから少し離れて、古い日本家屋が目立つ道を適当に歩く。
しばらく行くと、微かに波の音が聞こえてきた。見ると向こうに雑木林。その奥から小さく、潮騒が漂ってくる。
それにつられて僕は、海に出た。
青い……というより濁った青緑色に近い海が、ずっと地平線まで続いている。小刻みに揺れる海面が陽光を受けて、きらきらと光っていた。
せっかくだから、もっと近付いてみよう。
手前にある消波工のコンクリートを越えると砂浜が広がっていて、海水が白く泡立ちながら、寄っては返っていく波打ち際の砂が黒く濡れている。
「……」
その海は、お世辞にも綺麗とは言えなかった。
砂浜には、いろんなゴミが散乱していた。
黄色いプラスチックのビールケース。魚を獲るための破れた網。派手なオレンジ色の大きなウキ。干からびた魚の死骸。砂にまみれた発泡スチロールの破片。持ち手のところに『もも』と書かれた焼き鳥の串。他にも色々、枚挙に暇がない。
ちょっと嫌な気分になりながら、それでも波の音は好きだから、その砂浜に足を踏み入れる。
波打ち際まで来たけれど、水着なんて持ってきてないから、濡れるのが嫌で乾いた砂の辺りに留まる。
浜辺は左右どこまでも広がっていて、とりあえず家の方向とは逆の、左側に向かってみることにした。
スニーカーの下から伝わるやわらかい砂の感触が、アスファルトとは違ってなんだかおもしろい。海水に運ばれてきたのだろう、乱雑に散らばったゴミを避けて進む。
こんな汚れた海だからなのか、釣り人も、散歩する人も居なかった。僕以外には誰も……いや、そうじゃなかった。
少し遠くに、人影が一つだけ見える。
ぼんやりとしか分からないけれど、身長からすると僕と同じ子供みたいだった。砂浜に立って、海の方を眺めている。
歩いて行くとだんだん人影も大きくなってきて、ようやくどんな人か分かるくらいの位置にまで来た。
女の子だった。
四月に控える新学期前の休日、小学校が始まる前に町の道に慣れるために僕は、家の近くを散歩していた。
きれいに区画整理された住宅地。そこから少し離れて、古い日本家屋が目立つ道を適当に歩く。
しばらく行くと、微かに波の音が聞こえてきた。見ると向こうに雑木林。その奥から小さく、潮騒が漂ってくる。
それにつられて僕は、海に出た。
青い……というより濁った青緑色に近い海が、ずっと地平線まで続いている。小刻みに揺れる海面が陽光を受けて、きらきらと光っていた。
せっかくだから、もっと近付いてみよう。
手前にある消波工のコンクリートを越えると砂浜が広がっていて、海水が白く泡立ちながら、寄っては返っていく波打ち際の砂が黒く濡れている。
「……」
その海は、お世辞にも綺麗とは言えなかった。
砂浜には、いろんなゴミが散乱していた。
黄色いプラスチックのビールケース。魚を獲るための破れた網。派手なオレンジ色の大きなウキ。干からびた魚の死骸。砂にまみれた発泡スチロールの破片。持ち手のところに『もも』と書かれた焼き鳥の串。他にも色々、枚挙に暇がない。
ちょっと嫌な気分になりながら、それでも波の音は好きだから、その砂浜に足を踏み入れる。
波打ち際まで来たけれど、水着なんて持ってきてないから、濡れるのが嫌で乾いた砂の辺りに留まる。
浜辺は左右どこまでも広がっていて、とりあえず家の方向とは逆の、左側に向かってみることにした。
スニーカーの下から伝わるやわらかい砂の感触が、アスファルトとは違ってなんだかおもしろい。海水に運ばれてきたのだろう、乱雑に散らばったゴミを避けて進む。
こんな汚れた海だからなのか、釣り人も、散歩する人も居なかった。僕以外には誰も……いや、そうじゃなかった。
少し遠くに、人影が一つだけ見える。
ぼんやりとしか分からないけれど、身長からすると僕と同じ子供みたいだった。砂浜に立って、海の方を眺めている。
歩いて行くとだんだん人影も大きくなってきて、ようやくどんな人か分かるくらいの位置にまで来た。
女の子だった。
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