シーグラス

きのたまご

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3、シーグラス

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それは、白くて細かい粉砂糖をまぶしたグミみたいな見た目をしていた。

半透明な淡い水色で、尖った部分が全然ないなめらかな形状。丸い形に近いけど不規則で、ゆるいカーブのところもあればにゅっと細く出ているところもある。

なんというか、インド料理でカレーをつけて食べるナンに似てる。

きれいだった。宝石とか水晶みたいな、目を惹きつけられる輝き。

親指と人差し指でそれをつまんだなみが、自分の右目の前に持ってくる。

「シーグラスって言うの」
「シーグラス?」
「そう。ガラスの破片が海に落ちて、長い時間をかけて海底や海中を流れていく間に、表面が削られていくの。それでこんな見た目になるんだって」
「じゃあそれ、元々はガラスの欠片なんだ」

硬い感じとか、尖った部分は全然残ってないのに。

「ね? 単なるゴミだって、こんなにきれいになる時があるんだよ」
「ふーん」

小さな青いシーグラスを握ったままで、ナギはまた海の方に顔を向けた。

「私、エコって言葉、あんまり好きじゃないんだよね」
「……どうして?」

基本的には、いい行いのことだと思うけど。

「だってさ、人間がプラスチックとか作って、ゴミを適当に捨てて、車とかいっぱい走らせて、地球が住みづらい環境になることを、悪いとか言うじゃん」
「言うね」
「そういう時って大体、困ってる顔の地球のキャラクターとかが横に居たりして。けど、そもそも宇宙とかを見ると、人間が住めない環境の星の方が多いでしょ?」
「まあ……そうだね。火星とかも、まだ住めないっていうし」
「何億年ってスパンで考えると、きっと地球だって、人間がどんなに表面を汚そうと、別にどうでもいいって思ってそうだなって。生命が死滅しようが、関係ないでしょ、惑星にとっては」
「……かもね」

絶滅したところで、何億年後にはその環境に適応した生き物が誕生する。

それだけのこと、ってわけだ。

「だから、環境破壊を嘆くんじゃなくて、こんなふうに楽しめばいいのにって、ね」
「それは……どうなんだろう」

僕は、彼女の言い分に反論してみる。

「そりゃあ、宇宙レベルの大きい話ならそうだけど。でも、マイクロプラスチックとか、海に捨てられたゴミが、ウミガメとかがご飯を食べる時に一緒に口に入って困ってるらしいし。身近なところを見れば、そういう弊害は起こってるんでしょ。カメが可哀想って思うのは自然なことだよ」
「……んー。まあ、そうだね」

眉を寄せて、悔しそうに言う。

「なぎ君の言うのも、一理ある。それだって、いやいやプラスチックくらい避けて食べてよ、って言いたくなるけど。人間がカニを食べる時に、殻も一緒に食べてるようなものよ、それって」
「……まあ、カメって不器用そうだからなぁ」
「じゃあこれ」

ナミはシーグラスを掲げて、日光に透かすようにして。

そして、にこりと笑った。

「海岸のゴミは拾って、持ち帰ってやりますか。……エコでしょ、私」
「……」

それは、ただ単にシーグラスがきれいだからほしいだけなのでは……。

でも、そうだね。

ゴミ拾いは、悪いことじゃない。僕も何か珍しい、おもしろい漂着ゴミを見つけたら、拾ってみよう。


彼女ともうちょっと、一緒に居たいから。
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