鬼畜ゲーとして有名な世界に転生してしまったのだが~ゲームの知識を活かして、家族や悪役令嬢を守りたい!~

ガクーン

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戦争の発端 その1

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 アルスが小屋の中へと入って行く。

 遅れて護衛の二人もアルスを追いかけるように中へと入って行くと。

「おっと。今日はお客様とのご予定は無かったはずなのですが……」

 男性が一人、椅子に腰かけながら飲み物を片手に本を嗜んでいた。

 その男性はアルス達が入ってきた事に気が付くと、静かに本を閉じ、アルス達へと体の向きを変える。

「見ない顔ですね? ここのご利用は初めてでしょうか?」

「あぁ、初めてだ」

 もちろん。この世界ではだけど。

 前世では散々お世話になったゼンブルグ商会。
 序盤から終盤までずっと利用させてもらい、嬉しい時も、悲しい時も商会が側にいたと言っても過言ではなかった。

「利用方法等のご説明は必要ですか?」

「いや、必要ない」

 ゲームの時は説明を聞くを選択すると、長い間話に付き合わされることになったが、今の俺には必要ない。
 そんなのは始めたての時だけで十分だ。

「承知しました。では、改めまして、ゼンブルグ商会へようこそ。本日は何用でしょうか? アルザニクス家の次期当主様」

 男性の思わぬ発言に、エルドとモーリーが驚愕する。

「私だと知っていたんですね。流石ゼンブルグ商会です」

「恐れ入ります」
 
 流石ゼンブルグ商会。ここ最近まで屋敷に籠りっきりだった俺の事を把握しているなんて。俺が屋敷外に出た回数は、最近の事を含めても、両手で数えられるほどしか無い。

 それなのに俺の顔まで既に把握しているとは、流石としか言いようがない。

「なら話が早い。今日ここへ来たのは、ある情報を売りたいと思ってなんだが……。その前に君、商会の?」

「っ!? い、一体……、何の話でしょうか?」

 男性は驚きを隠しきれていない様子でアルスに問いかける。

 この反応で大体分かった。

「ははっ、表情に出過ぎだよ。まぁ、その反応からして、ここの支店長じゃない事は分かった。いるんでしょ? この近くのどこかに。早く呼んでくれない?」

 アルスは少し笑うと、男性に、いや、アルス達の近くにいるであろう人物に話しかける。

「一体何を言って……」

「だからさ、貴方じゃ俺が持ってきた情報を話す相手として不足だって言ってるの」

「突然そのような事を言われましても……。せめて内容だけでも教えて下さらない限り……」

 うーん。これじゃ埒が明かないな。

 相手は上の者に話を通す気ないし、俺も下っ端の方の人に持ってきた情報を話すつもりもない。

「じゃあさ、貴方は商会の何番目?」

「……、貴方様に私の個人情報を話すつもりは」

「どうせナンバーすら貰ってない下部メンバーでしょ?」

「…………」

 当たりか。
 
 ゼンブルグ商会は商会員の実力をナンバーで表す。
 NO.10よりもNO.9。NO.9よりもNO.8の方が実力が高いといった具合にね。
 
 商会では数字が小さい者ほど実力が高く、扱える情報の質や量も多くなるため、より重要な情報の売り買いをするには、NO.1により近しい者を相手取る必要がある。

 だが、商会を初めて利用する者がそのような者たちに接触できる確率は限りなく低い。

 商会で力がある者たちに接触するにはそれ相応の商会への貢献。つまり、情報の売り買いをした実績が必要だからな。

 しかし、一つだけ、面倒な工程を踏まないで、商会の実力者に接触する方法を俺は知っている。

「はぁ、分かったよ。じゃあ、よく聞いてね、誰かさん……」

 俺はわざとらしく周囲を見回し。

「ヘルウィス……」

 ある人名をゆっくりと声に出す。

 この名前を出せば、食いつくと思うんだけどな。

「ウォン……」

 アルスがある人名を半分まで言いかけたその時。
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