鬼畜ゲーとして有名な世界に転生してしまったのだが～ゲームの知識を活かして、家族や悪役令嬢を守りたい！～

鑑定指輪 その2

「やっぱり普通の指輪にしか見えないね」

　ミネルヴァは箱の中にある、銀に光り輝く輪っか状のモノ。鑑定指輪を凝視する。


　素朴な見た目してるけど、前世では凄い助けられたんだよな。

　アルスは久しぶりに親友と再開したかのように、熱い視線を鑑定指輪に浴びせ、恐る恐る自身の指に嵌めようとした時。

　
　指輪を嵌めようとするアルスを邪魔する白くてか弱そうな腕がにゅるっと伸びてくる。

　
　この手は……

　アルスは真横から伸びる手を辿っていくと。

「ニーナ？」

　アルスが持つ指輪にニーナが手を伸ばしていた所であった。

「アルス……まだ遅くないよ？」


　何を言ってるんだ？

　意図が読めないアルス。


　まだ遅くない……だって？

　アルスはどういう意味で言っているのかを考えようとした時。ふと、視界にニーナへと何か良からぬ事を囁くミネルヴァの姿が映った。


　ニーナに変な事を吹き込んだのはあの人か……！

　ミネルヴァはアルスの視線に気が付くと。

　ニタァ

　悪そうな笑みを浮かべる。


　はぁ……

　そんなミネルヴァをよそにアルスは小さくため息を吐く。

「ミネルヴァさんの言ってることは違うからね？」

「アルス……大丈夫。ニーナ、分かってる」


　やっぱり変な勘違いを……

「だからこれは！　……うん？」


　あれ？　ニーナが笑ってる？

　その瞬間、ニーナも分かってて自分を揶揄っている事を感じ取る。

「もしかして……分かっててやってる？」

「ふふっ……」

「ちょっ、ニーナ……」

　そんなアルスを見て小さく吹き出すニーナ。


　あっ、ニーナ。こんな顔も出来るんだ。

　クスクスと笑うニーナを見たアルスは何故か出会ったばかりの時のニーナを思い出し、心が温かくなるのを感じる。


　まぁ、ニーナが笑ってくれているならいいか。

「それでアルス様。その指輪の何が凄いのでしょうか？」

「私も聞きたいね。鑑定眼鏡ははっきりとした効果を説明されたから凄い事は理解したけど、鑑定指輪はどうなんだい？」

　エバンとミネルヴァは何故そんな物を？　と言う表情でアルスを見る。


「そうだね。まずこの二つの違いを説明するよ」

　そう言ってアルスは懐から鑑定眼鏡を取り出し、鑑定指輪と並べる。

「まず二つの大きな違いは人を鑑定するか、道具や武器を鑑定するかという事だね。つまり、人を鑑定する時は鑑定眼鏡。物を鑑定する時には鑑定指輪を使わなければいけないんだ」

　アルスは違いをはっきりさせるべく、説明を始める。

「確かにアルス様が鑑定眼鏡を使用する際には人相手でしかされていませんでしたね」

　エバンが納得した様子で答える。


「なるほどね。二つの違いは分かったけどさ、鑑定指輪はどんな風に使うんだい？」

　ミネルヴァはアルスに鑑定指輪を使って見せろと顔を近づける。

「ちょっとミネルヴァさん！　近い！　近いですって！」

　アルスが顔を赤らめてミネルヴァから離れる。

「あら、ごめんよ。つい気になってさ」

　ミネルヴァは悪びれる様子もなく手を前に出して、ゴメンなと謝る。

「ゴホン。それで……鑑定指輪はどのように使うかでしたね。実演ついでにニーナの「ニルフェスト」……弓じゃなくてニルフェストね。ちょっと貸してくれないかな？」

　すると、ニーナは弓をじっと見つめ。

「……うん。アルスになら良いって」

　ニルフェストをアルスへ渡す。

「アルスになら良いのかい？　そんなに私って怖いかねぇ……」

　何故かミネルヴァは意気消沈してしまったが、アルスは気にする素振りを見せずに説明を続ける。

「ありがとう……。じゃあ今から説明していくね。まず、鑑定指輪を使う時の条件は、対象物を指輪を嵌めた方の手で触れること。そして頭の中で鑑定したいという気持ちを強くイメージするだけ。そうすれば勝手に……」

　アルスは前世と同じ手順で鑑定指輪を使用する。


　するとそこには……