鬼畜ゲーとして有名な世界に転生してしまったのだが~ゲームの知識を活かして、家族や悪役令嬢を守りたい!~

ガクーン

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転生者 その2

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「貴方、転生者ですよね?」

 エッセンが笑みを浮かべながらアルスへ事実を突きつける。


 こいつっ! 何故その事を。

 アルスは足を止め、ゆっくりと振り向く。

「転生者? 何のことですか?」

 アルスは警戒を最大限に上げ、一歩後ろに下がり話を続ける。

「貴方が首からかけているその首飾り、アーサー家の秘宝の一つ、真実の首飾りですよね? それを装備している貴方なら私が鎌を掛けているのではなく、確信を持って聞いている事がぐらい分かるはずです」

 アルスは大きく動揺する。

 
 真実の首飾りまでお見通しか。

 無意識にアルスは真実の首飾りを手で弄る。


 それにさっきからエッセンが言っている事が真実だとこの首飾りが訴えてきている。

 アルスは初めはこっちを誘い出そうとしているのかと思い、冗談半分で聞いていたが、首飾りを発動させた途端、真実という結果が突き付けられていた。


 俺が転生者だと確信しているって事は……はぁ、しらばっくれても無駄か。


「そこまで知っているんですか。何故私が転生者だと?」

 アルスは疑問をぶつける。

 
 何処にも俺が転生者だという証拠はなかったはずだ。一体どうやって……

「うーん。勘ですかね?」

 エッセンは顎に手を当て、考えるふりをしてから答える。


 ……嘘か。

「嘘を言ってもばれるって分かってますよね」

「ははっ、まぁそんな事はどうでもいいじゃないですか。貴方を排除しようと思って接触したわけじゃないですし」

 エッセンは笑みを浮かべながら話を続ける。


 今度は真実。

 という事は……

 アルスは一つの答えにたどり着く。


「多分アルス君が今考えている事と同じですよ。どうです? 私と手を組みませんか?」

 エッセンは手を大きく広げ、アルスに提案を持ちかける。


 手を組む……か。

 確かに……これから先に進んでいくにつれ、信頼できる仲間がもっと欲しいとは考えていた。

 しかし、今の状況だと俺に何のメリットもない。

「それで私のメリットは?」

 アルスは品定めをするようにエッセンへ問いかける。

「転生者の仲間が出来るのが一つ」

 
 やっぱりな。こいつも転生者だったか。

「他には?」

「あとは……アルス君が欲しいであろう情報を提供するってのはどうですか?」

 アルスは黙り込み、考え始める。


 俺が欲しい情報を提供するだと? 

 今は欲しい情報など無いし、あるとしても信頼できる情報筋……ゼンブルグ商会がいる。

「別に欲しい情報なんて……」

 アルスはエッセンの力は必要ないと切り捨てようとした時。

「他の転生者の情報……なんてどうですか?」

「っ!」

 魅力的なエサをぶら下げられたアルス。


 確かに欲しい。これはゼンブルグ商会でも取り扱っていないだろうからな。

 それに俺以外の転生者がいると知ったのもつい最近。早めの対策をするにも、相手の情報を知っているに越したことはない。

 アルスは少し、考え込むと。

 
 相手は既に俺が転生者だと知っていた。それに敵意は抱いていない。なら、返事は一つ。

「……分かった。手を組もう。で、私は何をすればいい?」

 手を組むことを了承し交渉に入る。

「今は特にないですね」

 するとエッセンはうーん、と悩み、今は必要ないと返事をする。


 こいつは何で俺と手を組もうなんて考えたんだ? 

 俺が転生者だったからか?

 アルスは相手の意図が読めず。

「特にないだと? 何で私に声をかけた?」

「アルス君だから……ですかね?」

 エッセンは首を傾げながら、含み笑いをする。


 俺だから? 益々訳が分からん。

「これでは私にしかメリットがないじゃないか……。一体何を企んでいる?」

 アルスは戸惑いながらもエッセンの考えを探ろうと話を続ける。


「別に私が企んでる訳じゃないんですけどね……。この世界に転生してきた者はアルス君が思っているよりも多いんです。そうなると良からぬ事を考える輩もいまして、その者達を相手に対抗するには今の内に仲間を作る必要があると思いまして」

 エッセンは急に作り笑いを止めると、真面目な面持ちでアルスへ語る。


 この話も本当だ。

 アルスは真実の首飾りを左手で握り、真実と判断する。

「よく私が手を組んでくれるだろうって思いましたね」

「アルス君は私と一緒ですから……」


 私と一緒? 一体どういう……

「一緒……だって?」

「はい。アルス君もこの世界に守りたい大事な方がいるでしょう?」

「なるほどな……」

 アルスはエッセンの言葉に納得し、少しの警戒を解く。

「しかし、仲間と言ってもこの人なら信頼できると思った者にしか私も声をかけませんよ?」

 するとエッセンもアルスの態度が変わったのを感じ取ったのか、自然な笑顔と共に話す。

「ははっ。それもそうだな」

 こうして二人の間に一定の絆が芽生え始めた時……


 会場がざわめき始めたのだった。


 一体この歓声はなんだ?

「あちゃーもう来ちゃいましたか……」

「来たとは……?」

「今日一番の主役たちですよ」

「主役……あっ」

 エッセンのヒントによって、歓声の正体を突き止める。

「王子たち……か」

 アルスが一つの答えに達し、エッセンも無言で頷く。


 王子たちが来たってことは……お父様の所へ戻らないと!

 想定よりも長い休憩を挟んでしまったアルスは慌てた様子で。

「エッセンさん。続きはまた今度」

「はい。こちらこそ時間を取ってしまってすいません。最後にアルス君。君に忠告を」

「忠告?」

「えぇ、私の調べによると、この会場に良からぬ輩が忍び込んでいます。何が目的なのか調べが付きませんでしたが、お気を付けて」

 エッセンは忠告し、ふと思い出したようにアルスに近づき。

「あとこれを……」

「えっ? これは……」

 あるモノをアルスへと手渡す。

「これからアルス君も私のパートナーになったのですから、一種のご褒美……と考えてください」

「ありがとうございます。大事に使わせていただきます」

 エッセンはニコッと笑顔を振りまき、人混みの中へと消えていった。



「エッセンか……。ほとんど真実しか話していなかったし、少しは信用できるか」

 そしてアルスは受け取ったモノをもう一度確認し。


「それにこんな貴重なモノを渡されちゃな……」


 内ポケットに大事そうにしまうと、アルスもガイル達の元へと戻っていくのだった。
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