鬼畜ゲーとして有名な世界に転生してしまったのだが~ゲームの知識を活かして、家族や悪役令嬢を守りたい!~

ガクーン

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不穏な空気 その1

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「お父様とお母様は……っと」

 アルスは人混みを縫うように進みながら、ガイル達を見つけて回る。


 あっ、いた。

 視線の先には心配そうな顔のガイル。

 そのガイルの元へ近寄っていくと。

「アルス! 良かった……帰ってこないかと心配したぞ」

「すいません。遅くなりました」

 ガイルはアルスが中々帰ってこなかったのを腕を組みながら心配していたようで、アルスの姿を確認でき、安堵しているようだった。


「あの方たちが登場する前に戻ってこれたんだ。問題はない」

 そう言ってガイルは会場の中央にある大きなステージへと視線を向ける。

 するとその時、辺りの証明が薄暗くなり、ステージ中央に複数のスポットライトが当てられる。


「いよいよか……。アルス。ステージを見てみろ」

 如何にも何か特別なことが起こると思わせるようなライトアップ。

 会場の雰囲気とガイルの表情から何かを察したアルスは、視線をゆっくりとステージへ移す。


『皆様……長らくお待たせいたしました。只今より、王子の入場です!』

 そこからともなく、司会者であろう者の声が会場全体に響き、その合図と共に、王国騎士団演奏隊の隊員たちが演奏を始める。


「アルス。よくあの方たちの顔を見ておけよ」

「もちろんです」

 そして、演奏のクライマックスに達した瞬間。ステージの奥にあった豪華な扉が開き、3つの人影がステージ上に現れる。


 ようやく王国戦争の主役たちとご対面か。


『皆様! 大きな拍手と共にお出迎え下さい!』

 司会者の一声で、会場にいる貴族たちが一斉に拍手をし始める。



『まずはこの方! シルバ・ハーゼム・リングリープ王子です!』

 まず最初に名を呼ばれて歩き始めたのは青髪を肩まで伸ばし、片眼鏡をかけ、知的な印象を醸し出す男性であった。


 シルバ・ハーゼム・リングリープ。

 王位継承権第1位。この中で一番王に近い王子である。ステータスは詳しくは覚えていないが、知略を得意とするキャラであり、尚且つ王の一族というアドバンテージも備えているため、智力と政治のステータス上限は最低でも80は越しているだろう。

 前世の王国戦争時、プレイヤーが戦争に特に介入せず放置プレイをし続けると、ほぼ100%と言っていいほどシルバ陣営が勝利していた。つまり、シルバを王にしたければプレイヤーが王国戦争に関わらなければいいということ。


 ただ、この先の帝国編や獣国編等を考慮すると、いちプレイヤーとしてはシルバを王にする事はあまりお勧めしない。


 まぁ、俺はアメリアを助けたいからシルバルートはあり得ないんだがな。



『続いては、ハルス・ハーゼム・リングリープ王子です!』

 次に名を呼ばれて歩き始めたのは3人の中で一番身長が高く、綺麗な赤髪をオールバックにした、野性的な男性であった。


「ハルス……」

 ハルスの名が呼ばれた途端、アルスは手を変色する程に力を入れ握りしめる。その姿はまるで、復讐に燃えているかのように。


 ハルス・ハーゼム・リングリープ。

 王位継承権第2位。のちのアメリアの旦那である。

 そして、グレシアスに登場する人物の中で一番嫌いな奴でもある。

 嫌いな理由は簡単。ただただ、ハルスがアメリアに行うであろう仕打ちがクズ過ぎるからである。

 
 アメリアが受けた仕打ちを数えるだけでも両手には収まりきらない。覚えていろよ……ハルス。

 前世のやりきれない鬱憤をハルスにぶつけるのは確定。


 個人的な恨みはここまでにして忖度無しのハルスの評価をするとしよう。

 まずハルスは武力と統率のステータスが高く、智力と政治のステータスが低い。典型的な脳筋キャラだな。

 だが、グレシアス攻略の観点からハルスを王にした時、得られる利益が多いという事から王国戦争に勝たせようとするプレイヤーが多く存在し、攻略班も王国戦争はハルスを王にすべしという結論を出していた。脳筋なだけあって非常に操りやすいキャラだしな。

 しかし、俺は攻略班の結論を無視しアメリアの幸せのみを視野に入れ攻略をしていたため、ハルスを王にして王国戦争を終結させた事は少なかった。



『最後はこの方! キルク・ハーゼム・リングリープ王子です!』

 最後に名を呼ばれて歩き出したのは、緑髪を腰まで伸ばし、優しそうな顔の華奢な体をした美しい王子であった。


 キルク・ハーゼム・リングリープ。

 王位継承権第3位であり、前世のグレシアスでは謎のベールに包まれていた人物でもある。


「キルク王子、益々美しくなりましたな。まるで女性みたいに……」

「何を言っている。キルク王子は男だぞ。変な想像は止めてもらいたい」

「分かっていますが、あの容姿をみてくだされ」

「ううむ。確かにそう言われると……」


 アルスの周りでヒソヒソとキルクの話題が持ち上がる。

 
 確かにな。髪も腰まで伸ばして、見た目も中性的。

 女と言われても納得してしまう自分がいる。


 まぁ、俺にしたらキルク王子が男でも女でも問題はない。キルク王子ににさえなってもらえればな……

 そう。アルスはシルバ王子でもハルス王子でもなく、キルク王子に王になってもらう。いや、王にさせようとしていた。


 これは前世の時から考えていた事ではあった。シルバ王子やハルス王子が王になった場合にアメリアが不幸になるのなら、キルク王子を王にすればこの問題は解決するのではないかと。

 もちろん、解決すべき問題は他にもある。だがしかし、キルク王子が王になれば今まで悩んでいた、アメリアを破滅に追い込む問題の多くが解決するのだ。


 それならば何故、前世では王国戦争編のルートが第一王子が王国戦争に勝利。第二王子が王国戦争に勝利。王国戦争中に王国が他国に侵略される。という3つしかないとされていたのか。

 それは……
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