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第5話 告白?
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五分で着くはずの距離だが、足が痛くて倍くらいの時間が掛かった。先生は時々僕を見て、「大丈夫ですか」と声を掛けてくれる。僕は頷き、「大丈夫です」と、その度に答えた。
どうにかマンション前までたどり着くと、僕は先生の方に顔を向け、「ありがとうございました」と笑顔で言った。が、先生は眉間に皺を寄せ、
「ちゃんと部屋に入るのを見届けてから帰ります。上まで付き添います」
「先生。あの……本当に大丈夫ですから」
「いいから、行きましょう」
「先生……」
逆らおうとしても無駄だということは、よく知っている。僕は黙って先生に守られながらエレベーターに乗り、降りて、部屋まで向かった。が、いざ部屋の前まで来ると、このまま帰ってもらうのは失礼なのじゃないか? お茶の一杯も出すべきなのでは? そんな考えが頭に浮かんできた。
そうして考え事をしている僕に、先生は心配そうな顔を向け、
「吉隅くん。どうしましたか?」
「先生。送って頂いてありがとうございました。お茶をお出ししますから、どうぞ中へ」
「ここで終わりにしようと思ったんですけど」
「えっと……良かったら、どうぞ」
カバンから鍵を出してドアを開けると、もう一度、「どうぞ」と言った。先生は、「じゃあ……」と言って中に入ってきた。
リビングのソファに座ってもらうと、僕は急いでお茶を淹れて持って行った。先生は、「いただきます」と小さく言ってから、湯飲みに口をつけた。
「おいしいです。ありがとう」
微笑みながら先生が言う。僕は軽く頭を下げて、自分の湯飲みを手に取った。一口飲んでから、
「先生。いつも僕に優しくしてくださって、ありがとうございます」
「どうしたんですか、急に」
不思議そうな顔になって、先生が首を傾げつつ言う。
「あの時も、今日も。先生は僕のそばにいて、僕を守ってくれていますよね。どうしてこんなに優しくしてくれるのかなって……」
「それは簡単です。君を好きだからですよ」
「は?」
今、さらっと何か言われた気がするのは思い違いだろうか。僕は、横目で先生を見た。先生は、お茶を一口飲むと、
「聞こえませんでしたか? じゃあ、もう一度言います。君を好きだからですよ、と言いました」
「先生。僕のこと、好きなんですか?」
驚いて、思わず訊き返してしまった。先生は、表情を全く変えず、
「好きに決まってるでしょう。君、僕が君のこと嫌ってるとでも思っていたんですか? 心外です」
戸惑って何も言えない僕の方に体ごと向くと先生は、
「愛弟子を嫌うはず、ないでしょう。好きに決まってるじゃないですか」
「あ、そういうことですか」
心臓が速く打って、息苦しくなったというのに。顔も絶対赤くなっているのに。そんなオチはやめてほしい、と心の中だけで抗議した。
先生は僕から視線を外すと、
「いえ。本当に好きですけどね。でも、君には油利木くんがいますからね。僕は、こんなことを言うつもり全くなかったんですよ。それなのに、今夜はおかしいですね。何故言ってしまったんでしょう。まあ、言ってしまったものは仕方ありません」
先生は、いきなり立ち上がると「ごちそうさまでした」と言い、キッチンで湯飲みを洗い始めた。お客様にそんなことをさせてはいけないと思い慌てて立ち上がると、いきなり右足首に痛みが走った。
「痛……」
顔をしかめて、再びソファへ座ってしまう。すると、流しの水の音が止まり、こちらに先生が走って戻ってきた。その表情には、焦りが見て取れた。
「何をやってるんですか」
「すみません。先生に洗い物なんかさせちゃいけないと思って立ち上がったら……」
「もう一度言われたいですか? 馬鹿ですね」
「はい。すみません」
僕は先生に謝ると、俯いた。そして、右足首を擦りながら、
「僕は、やっぱり馬鹿なんですね。先生と出会って随分経ちますけど、先生からそんなことを言われる日が来るとは、全く想像もしませんでした」
「僕も言う気はありませんでした」
先生が僕の前に膝をつく。僕の右足首を見つめながら、「かわいそうに」と言った後、溜息を吐き出した。
告白のようなものをされてしまったことと、そのいかにも切なそうな声に、再びドキドキとしてしまう。
今日の先生は、ちょっとおかしい。でも、僕もちょっとおかしい。そう思いながら、先生を見つめていた。
どうにかマンション前までたどり着くと、僕は先生の方に顔を向け、「ありがとうございました」と笑顔で言った。が、先生は眉間に皺を寄せ、
「ちゃんと部屋に入るのを見届けてから帰ります。上まで付き添います」
「先生。あの……本当に大丈夫ですから」
「いいから、行きましょう」
「先生……」
逆らおうとしても無駄だということは、よく知っている。僕は黙って先生に守られながらエレベーターに乗り、降りて、部屋まで向かった。が、いざ部屋の前まで来ると、このまま帰ってもらうのは失礼なのじゃないか? お茶の一杯も出すべきなのでは? そんな考えが頭に浮かんできた。
そうして考え事をしている僕に、先生は心配そうな顔を向け、
「吉隅くん。どうしましたか?」
「先生。送って頂いてありがとうございました。お茶をお出ししますから、どうぞ中へ」
「ここで終わりにしようと思ったんですけど」
「えっと……良かったら、どうぞ」
カバンから鍵を出してドアを開けると、もう一度、「どうぞ」と言った。先生は、「じゃあ……」と言って中に入ってきた。
リビングのソファに座ってもらうと、僕は急いでお茶を淹れて持って行った。先生は、「いただきます」と小さく言ってから、湯飲みに口をつけた。
「おいしいです。ありがとう」
微笑みながら先生が言う。僕は軽く頭を下げて、自分の湯飲みを手に取った。一口飲んでから、
「先生。いつも僕に優しくしてくださって、ありがとうございます」
「どうしたんですか、急に」
不思議そうな顔になって、先生が首を傾げつつ言う。
「あの時も、今日も。先生は僕のそばにいて、僕を守ってくれていますよね。どうしてこんなに優しくしてくれるのかなって……」
「それは簡単です。君を好きだからですよ」
「は?」
今、さらっと何か言われた気がするのは思い違いだろうか。僕は、横目で先生を見た。先生は、お茶を一口飲むと、
「聞こえませんでしたか? じゃあ、もう一度言います。君を好きだからですよ、と言いました」
「先生。僕のこと、好きなんですか?」
驚いて、思わず訊き返してしまった。先生は、表情を全く変えず、
「好きに決まってるでしょう。君、僕が君のこと嫌ってるとでも思っていたんですか? 心外です」
戸惑って何も言えない僕の方に体ごと向くと先生は、
「愛弟子を嫌うはず、ないでしょう。好きに決まってるじゃないですか」
「あ、そういうことですか」
心臓が速く打って、息苦しくなったというのに。顔も絶対赤くなっているのに。そんなオチはやめてほしい、と心の中だけで抗議した。
先生は僕から視線を外すと、
「いえ。本当に好きですけどね。でも、君には油利木くんがいますからね。僕は、こんなことを言うつもり全くなかったんですよ。それなのに、今夜はおかしいですね。何故言ってしまったんでしょう。まあ、言ってしまったものは仕方ありません」
先生は、いきなり立ち上がると「ごちそうさまでした」と言い、キッチンで湯飲みを洗い始めた。お客様にそんなことをさせてはいけないと思い慌てて立ち上がると、いきなり右足首に痛みが走った。
「痛……」
顔をしかめて、再びソファへ座ってしまう。すると、流しの水の音が止まり、こちらに先生が走って戻ってきた。その表情には、焦りが見て取れた。
「何をやってるんですか」
「すみません。先生に洗い物なんかさせちゃいけないと思って立ち上がったら……」
「もう一度言われたいですか? 馬鹿ですね」
「はい。すみません」
僕は先生に謝ると、俯いた。そして、右足首を擦りながら、
「僕は、やっぱり馬鹿なんですね。先生と出会って随分経ちますけど、先生からそんなことを言われる日が来るとは、全く想像もしませんでした」
「僕も言う気はありませんでした」
先生が僕の前に膝をつく。僕の右足首を見つめながら、「かわいそうに」と言った後、溜息を吐き出した。
告白のようなものをされてしまったことと、そのいかにも切なそうな声に、再びドキドキとしてしまう。
今日の先生は、ちょっとおかしい。でも、僕もちょっとおかしい。そう思いながら、先生を見つめていた。
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