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第4話 頑張り屋
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「ノブさんは、十代の時に結婚してお子さんが二人いるんだけど、旦那さんが兵隊さんにならざるを得なくて、で、そのまま帰ってこなかったんだって。本当は泣きたかったと思うけど、泣いてられなかったんだよ。子供を育てなきゃいけないんだから。親戚を頼って一緒に住んでいたこともあったみたいだけど、肩身が狭かったかなんかで、親子三人でそこを出て行って。ノブさん、朝から晩まで働き詰めだったって」
確かに根性ありそうな存在には見えた。
「自分は食べる物も食べないで、育ち盛りの子供たちに食べさせた。そういう人だったらしい」
「そうなんですね。立派です」
「息子さんのお嫁さんが言うには、人は一生の内に食べる量が決まってるって言うから、若い頃に食べられなかった分を取り返す為に、歳を取ってからあんなに食べるようになったのかなって。そのことに気が付いたら、夜中に戸棚をゴソゴソやっているおばあちゃんに注意出来なくなっちゃったのよ、だって」
「若い頃に食べてない分を取り返していた?」
「そう。それを聞いてオレ、ノブさんは頑張り屋さんだったんだなって改めて思った」
白井さんはそこまで話すと日誌を読み始めた。私は、若い頃のノブさんを想像して泣けてきてしまった。
大変な時代を生き抜いて来たのだと思わされる。食べるのにも困るっていうことが、私にはリアルにはわからない。
ノブさんはそれでもきっと、弱音一つ吐くことなく、笑顔で乗り切ったんだろうな。
私の夜勤中に現れるノブさん。今までは、このおばあさんは何だろう、くらいにしか思っていなかったのに、これからは見方が変わってしまうな。そう思った。
次の夜勤中もやはり姿を見せたノブさんは、私の顔を覗き込むようにして見ると、
「白井くんから、何か聞いたのかい?」
「あ……はい。聞きました」
「そうかい。ま、そういうことだよ」
私はノブさんを見つめながら、「大変だったんですね」と言った。ノブさんはフッと息を吐き出して小さく笑った。
「大変、か。違うとは言わない。でもね、必死だったから。あの子たちを育てることに夢中だった。苦労とは思ってないよ」
優しい顔で言った。胸が締め付けられるような感じがした。
「元気に育って、それぞれの道に進んで。ただ、私が認知症になってからは苦労かけたかなと思うけど。歳を取ると、あちこち上手くいかない所が出ちゃうもんだよ。それを、あの子たちのお嫁さんは、私のことを非難するでもなく受け止めてくれた。いい人と結婚してくれたなって、嬉しくなったよ」
「息子さんたちがいい人たちだから、そのお相手もいい人なんですかね」
ノブさんは、鼻の下を指で擦るような動きをしてみせると、
「褒めてくれたのかい? ありがとう、茉莉ちゃん」
「しんみりしてるの、似合いませんよ」
「ま、そうだね」
二人で笑った。
「相田さん。シノちゃんに会えるように、私頑張ってみます。顔知らないので、また白井さんに助けてもらいます。期待しててください」
偉そうにそんなことを言ったけれど、どうなるかわからない。とにかく、やってみるしかない。
ノブさんは笑顔になると、「あんたが頼りだからね」と言って、姿を消した。
確かに根性ありそうな存在には見えた。
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「そうなんですね。立派です」
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「あ……はい。聞きました」
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「大変、か。違うとは言わない。でもね、必死だったから。あの子たちを育てることに夢中だった。苦労とは思ってないよ」
優しい顔で言った。胸が締め付けられるような感じがした。
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偉そうにそんなことを言ったけれど、どうなるかわからない。とにかく、やってみるしかない。
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