【完結】悪役令嬢の純愛

酒酔拳

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第十話

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 私は、アニサスの目を見つめた。

「記憶を消す魔法を教えて欲しいの」

「え?」

「ダリアン王子がしたこと全て、消してあげたいの。誰も、王子がしたことを知らない。このまま、私が罪を被って、死んでいく。その前に、ダリアン王子がワクチンを広めた全てを消してあげて、自分の人生を愛して欲しいの」

 なぜだろう、ダリアン王子の最後の辛そうな目が浮かんでくる。

 愛人の子として生きてきて、色々と苦労があったのだろう。周りから、ひどい中傷も受けたのだろう。

 私ができることを、してあげたかった。

 ダリアン王子からの愛は求めない。

 私が王子を愛する。

 それが、私の生き方だ。

「なんで、報われることのない愛なのに、サーラさんは、そこまでするのですか?」

 アニサスは、どうしたらいいのかわからず、肩をふるわせている。

 アニサスは、心の優しい人だった。私の心の痛みに同調して、涙を浮かべてくれる。

「あなたは、報われないからといって、愛さないの?
 私は、報われる、報われない、関係ないの。私が、愛しているかどうかが、大切なの。これが、私の生き方なの。アニサス、リーキ、どうか、わかってちょうだい!」

 私は、アニサスとリーキの目を交互に見つめ、熱い気持ちを叫んだ。

 リーキの目も、涙ぐんでいた。リーキは、中性的で、どちらかというと女性の心を持っている。だから、情が強かった。

「サーラさん、私は、応援します。私にできることがあったら、何でも言ってください」

 リーキは、涙をぽろりと落として言った。

「ありがとう、リーキ。今は、見守っていてくれたら、大丈夫。心強いわ」

 私は、リーキの手を強く握ってから、アニサスを伺うように見た。

「サーラさんのお気持ちは、わかりました。私ができること、お手伝いさせともらいます。でも、わかってください。私は、サーラさんに幸せになってもらいたいのです」

 アニサスは、ぼろぼろと涙を流して話す。

 アニサスもリーキも、心優しい人たちだった。私は、助手に恵まれたのだ。

「ありがとう、アニサス!あなたの気持ちが嬉しい」

 私は、胸がじんっと温かくなっていくのを感じる。いつの間にか、私も涙ぐんでいた。

 少しの間、3人で、頷きながら、無言で泣いた。

「サーラさん、私の知っている魔法を教えます。記憶を消す魔法は、あります。だけど、悪魔と契約をしなければいけません。黒魔術です」

 アニサスは、涙を拭って、気持ちを切り替えて話す。感情に流されないところは。さすが、優秀な助手だった。

「黒魔術?」

「そうです。古来より、邪気と呼ばれ、相手を攻撃する呪術が多いのですが、悪魔との契約をすることで、こちらの願いが叶う呪術があります。ただ、、、」

 アニサスは、話しを躊躇させ、眉を強張らせた。

「ただ?」

 私は、アニサスの話の続きを促した。

「ただ、契約として、こちらの魂を悪魔に預けます。これは、とても恐ろしいことで、死で終わらない可能性があると書に記されています」

「死で終わらない?」

「はい。魂が奪われ、死の世界を超えて自由にされる。例えば、生まれ変わりがあれば、悪魔として生きる可能性もあります。死の世界を悪魔として漂流する可能性もあります」

 アニサスは、緊張をした声で話した。

「つまり、悪魔に身を売り、自分も悪魔になるということ?」

 私は、呆然として聞く。死は覚悟していた。悪魔に身を売ることまでは、予想できていなかった。

「はい。そういうことです。1200年前、力が欲しくて悪魔と契約した男がいました。男はその後、貿易で多額の金を得て、国の王になったといいます。だけど、最後は悪魔のような笑いを浮かべて、死んでいたと記述があります。
 サーラさんは、そこまでして、ダリアン王子を救いたいですか?」

 アニサスは、説得をするように私に問い、口を閉じた。

 私は、悪魔に身を売ることが、どういうことなのか、頭の中で考える。

 1200年前の力を得たいという欲望と、王子を助けたいという私の願いは、同じものなの?

 私は、自分の欲望のために、悪魔と契約することになる。

 そんなこと、倫理的にして良いことなのだろうか?

 でも、私は王子を愛し、王子のために、愛を捧げたかった。王子が幸せになってくれるなら、私の魂など、どうなっても良いのかもしれない。

 何が正しいのか、わからない。

「サーラさん、少し考えてください。それまでに、ワクチン開発を進めましょう。あとこの内服薬は、少しの間、効果があるのがわかったので、今苦しんでいる人たちに、配ります」

 アニサスは、現実をしっかり見て言う。

「そうね。アニサスは、薬を配ってちょうだい」

 リーキは、同調して頷いた。

「そうね。アニサスにはそちらに行ってもらって、私はリーキと血清を作るわ」

「サーラさん、自分の命も大切にして。ギリギリまでは、血清なくしてワクチンを開発できるように努力してください」

 アニサスは、私を叱るように言った。

 確かに、私は2人に頼りすぎている。血清と悪魔の契約。慎重に考えないと。残された2人が、可哀想だ。

「わかった。手を尽くすわ」

 私は頷き、アニサスに約束をした。


 
 




 

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