17 / 18
第十七話
しおりを挟む
少しずつ、ダリアン王子に近づいていく。
土を踏む、シャリっという音で、ダリアン王子が私に気づいた。
ダリアン王子は、心持ち笑顔になる。緊張しているのだろう、笑顔は固く、能面のように見えた。
「久しぶりだ。無事だったんだね」
ダリアン王子の喉が鳴る音が聞こえる。よほど、切羽詰まっているのだろう。
「あなたに、牢に入れられて、感染させられて、もうすぐ死にそうだけどね」
私は皮肉な色合いを込めて言う。
「あのときは、ああするしかなかったんだ。すまなかった。後悔している」
ダリアン王子は、申し訳なさそうに、腰を曲げて謝罪する。意外な行動だった。まさか、謝ってもらえるとは、思わなかった。
「なら、感染源のブースト科の猿はどこ?ミンティア令嬢に、遺伝子操作させたわよね?」
私は、強気の姿勢で言った。
「そうだ。私がミンティアに頼んだ。まだ生きている。君たちに渡そう。それに、サーラ令嬢が自分の国に帰られるよう、全て手配してきた」
ダリアン王子は、あっさりと引き下がり、全ての要求を受け入れた。
なに?どうしたの、急に。。死者が続出して、流石に罪悪感がでてきた?
「そ、それで、ダリアン王子は、その後、どうするの?」
「ミンティア令嬢に泣きつかれたよ。自首をして一緒に罪を償っていこうと。でなければ、死ぬと言われた。私にとっては、ミンティア令嬢がいなくなれば、私は生きてられない」
ダリアン王子は、か細い声で話す。
2人は固い絆で繋がっている。
私がつけ入る隙間は、1ミリもない。
現実を突きつけられる。私が黒魔術を使うことなど、できないのだ。
黒魔術を使うとしたら、ミンティア令嬢だったのだ。しかし、ミンティア令嬢は、黒魔術など考えず、現実を受け入れて、罪を償っていくことを選んだ。強い人だ。
私は悔しくなった。私の恋は、初めから蚊帳の外。試合にもならない。あまりにも、無惨な結果だった。
「きっと、それが一番良いことだわ。何か、私ができることはある?」
「いや。君には本当に悪いことをした。ミンティアに怒られたよ。今日は、せめて謝りたくて来た。本当に、申し訳なかった」
ダリアン王子はそう言って、深々と頭を下げた。
私にできることは、何もなかった。
完敗だった。
「もういいですよ。早くワクチンを仕上げて、民に配らないといけません」
森や太陽が、滲んで見える。声がうわずってしまうから、あまりにも惨めに感じられるから、早くここから去りたかった。
「ありがとう。サーラ令嬢の汚名は、撤回してまわるようにしておく。貴方こそが、正義のヒーローだ」
ダリアン王子は、再度頭を下げると、チースト科猿の所在を教えてくれる。
ここから近くの牧場だった。
私たちは、急いで牧場にむかい、血清をとり、ワクチン開発に成功する。アニサスが私にまず打ってくれる。
一応、実験者として、効果を見て配布するのは待った。翌日には解熱し、体が軽くなっていた。副反応もなさそうだった。
すぐにワクチンを大量生産し、民に配り始めた。感染は、終息していく。
ダリアン王子の約束通り、私とアニサス、リーキは、感染に負けずにワクチン開発へと戦った正義のヒーローとして謳われた。
反対に、ダリアン王子とミンティア令嬢は、重度犯罪者として死刑の判決を受けた。
広場での公開処刑であり、最も厳しい火あぶりの刑と聞き、私はどうにかしたく、もがき苦しんだ。
黒魔術を使うべきか。
他の方法があるのか。
私は、何をするべきなのか。
公開処刑は、明日に迫っていた。
土を踏む、シャリっという音で、ダリアン王子が私に気づいた。
ダリアン王子は、心持ち笑顔になる。緊張しているのだろう、笑顔は固く、能面のように見えた。
「久しぶりだ。無事だったんだね」
ダリアン王子の喉が鳴る音が聞こえる。よほど、切羽詰まっているのだろう。
「あなたに、牢に入れられて、感染させられて、もうすぐ死にそうだけどね」
私は皮肉な色合いを込めて言う。
「あのときは、ああするしかなかったんだ。すまなかった。後悔している」
ダリアン王子は、申し訳なさそうに、腰を曲げて謝罪する。意外な行動だった。まさか、謝ってもらえるとは、思わなかった。
「なら、感染源のブースト科の猿はどこ?ミンティア令嬢に、遺伝子操作させたわよね?」
私は、強気の姿勢で言った。
「そうだ。私がミンティアに頼んだ。まだ生きている。君たちに渡そう。それに、サーラ令嬢が自分の国に帰られるよう、全て手配してきた」
ダリアン王子は、あっさりと引き下がり、全ての要求を受け入れた。
なに?どうしたの、急に。。死者が続出して、流石に罪悪感がでてきた?
「そ、それで、ダリアン王子は、その後、どうするの?」
「ミンティア令嬢に泣きつかれたよ。自首をして一緒に罪を償っていこうと。でなければ、死ぬと言われた。私にとっては、ミンティア令嬢がいなくなれば、私は生きてられない」
ダリアン王子は、か細い声で話す。
2人は固い絆で繋がっている。
私がつけ入る隙間は、1ミリもない。
現実を突きつけられる。私が黒魔術を使うことなど、できないのだ。
黒魔術を使うとしたら、ミンティア令嬢だったのだ。しかし、ミンティア令嬢は、黒魔術など考えず、現実を受け入れて、罪を償っていくことを選んだ。強い人だ。
私は悔しくなった。私の恋は、初めから蚊帳の外。試合にもならない。あまりにも、無惨な結果だった。
「きっと、それが一番良いことだわ。何か、私ができることはある?」
「いや。君には本当に悪いことをした。ミンティアに怒られたよ。今日は、せめて謝りたくて来た。本当に、申し訳なかった」
ダリアン王子はそう言って、深々と頭を下げた。
私にできることは、何もなかった。
完敗だった。
「もういいですよ。早くワクチンを仕上げて、民に配らないといけません」
森や太陽が、滲んで見える。声がうわずってしまうから、あまりにも惨めに感じられるから、早くここから去りたかった。
「ありがとう。サーラ令嬢の汚名は、撤回してまわるようにしておく。貴方こそが、正義のヒーローだ」
ダリアン王子は、再度頭を下げると、チースト科猿の所在を教えてくれる。
ここから近くの牧場だった。
私たちは、急いで牧場にむかい、血清をとり、ワクチン開発に成功する。アニサスが私にまず打ってくれる。
一応、実験者として、効果を見て配布するのは待った。翌日には解熱し、体が軽くなっていた。副反応もなさそうだった。
すぐにワクチンを大量生産し、民に配り始めた。感染は、終息していく。
ダリアン王子の約束通り、私とアニサス、リーキは、感染に負けずにワクチン開発へと戦った正義のヒーローとして謳われた。
反対に、ダリアン王子とミンティア令嬢は、重度犯罪者として死刑の判決を受けた。
広場での公開処刑であり、最も厳しい火あぶりの刑と聞き、私はどうにかしたく、もがき苦しんだ。
黒魔術を使うべきか。
他の方法があるのか。
私は、何をするべきなのか。
公開処刑は、明日に迫っていた。
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました
丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、
隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。
だが私は知っている。
原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、
私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。
優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。
私は転生者としての知識を武器に、
聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、
王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。
「婚約は……こちらから願い下げです」
土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。
私は新しい未来を選ぶ。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!
木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。
胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。
けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。
勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに……
『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。
子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。
逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。
時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。
これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる