【完結】捨てられた姫の行方 〜名高い剣士に育てられ〜

酒酔拳

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 女執事は、ミネアを連れて、化粧部屋に入って行った。

 化粧部屋には、ドレスや和服、礼服など、ありとあらゆる服が整えられていた。

「さて、ミネア様は、お美しい方。金髪に青い瞳、紅い唇。それだけで、華やかさと気品があります。お洋服は、ミネア様の持っている素材を引き立てるよう、少し控えめの色にしましょう。」

 女執事は、にっこりと微笑んで言う。一つ一つの動作が、無駄なく、優雅であった。

「待ってください。私は、カリューシャから、王子を守る使命があります。こんなところにいる間に、カリューシャが乗り込んでくるかもしれません。すみません、私は戻ります。」

 ミネアは、我を取り戻したように、きっぱりと言った。

 しかし、女執事も負けていかなかった。王子の命令をしっかりと遂行しなければいけない。

「ミネア様のお気持ちは、わかります。カリューシャは、強い剣士。だからこそ、タンジア王子には、考えがあると思います。」

「考え?」

「そうです。王子は、サーリャの地を支配する、山の民の長をも説得したお方。そんな方が、何の考えもなく、このようなことをお遊びで考えると思いますか?」

「確かにそうね。人のいないところに二人で行くなんて、軽率に見えるけど、実は何か作戦があるのかしら」

「きっと、隠された計画があるのです。ミネア様は、タンジア王子を信じてあげてください。」

 女執事は、知的な目を光らせて話す。

(まあ、たぶん、タンジア王子の、いつもの思いつきだと思うんだけど。。)

 女執事は、王子の性格を知っているので、隠された計画などないことは知っていた。
だが、ミネアは素直に聞き、納得していた。

「さあ、お着替えしましょう。私にお任せくださいね」

 女執事は、簡単にミネアを説得できたことを内心ではほくそ笑んでいた。

 ミネアは、そんな女執事の心中など知らずに、素直に頷き、言われるままに着替え始めた。
 

 タンジア王子は、ミネアが部屋に戻ってくるのを、今か今かと待ち構えていた。

「王子、お入りして大丈夫ですか?」

 ドアの向こう側から、ミネアの声が聞こえた途端、慌てて椅子に座り、足を組み、

「良かろう」
 
 と、椅子の肘掛けに腕を着いて言った。

 おずおずと部屋に入ってきたミネアを見て、王子は目を見張った。

 美しいと思っていたが、薄い青いドレスがミネアの金髪や青い瞳を際立たせ、胸につけた金の飾りが高貴な輝きを放っていた。

 薄く化粧をしたミネアは、まるでダイヤの原石のように、光り輝いていた。

「こんな、女の子のような装いをしたのは、初めてで。似合ってないと思いますが。」

 ミネアは恥ずかしくて仕方がなかった。

「そんなことはない。美しい。」

 タンジア王子は、ミネアの前に跪き、青い目を見つめて言った。ミネアの美しは、王子の幼稚な心を吹き飛ばしていた。

「立派な、レディだ。」

 タンジア王子は、溜め息をついて、言った。

「レディ?私は、剣士です。」

 ミネアは、王子に真剣に見つめられ、鼓動が速くなってくるのを感じていた。

(王子の、漆黒の瞳。こんな深い漆黒は、見たことない)

 今まで、頭一つ下げていたの。王子の顔をはっきりと見たのは、今が初めてだった。

「いや。俺の目には、女にしか見えない」

 タンジア王子が、あまりにも真剣な目をして言うので、ミネアは高鳴る胸を抑えるのに必死であった。

(いや。私は、剣士。これは、きっと罠だわ。。でも、王子の真剣な目。一体、私に何が起こっているの?!)

 ミネアは、ずっと剣士として生きてきた。女の子扱いをされたことも、今までなく、自分が女であることにも鈍感になっていた。

「さあ、散歩に出かけようか」

 タンジア王子は、ミネアの手を取って、促した。

(ミネア、正気を保って。カリューシャが来たら、王子を守らないといけないのよ)

 ミネアは必死に自分に言い聞かせながらも、高鳴る鼓動は、抑えられなかった。
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