PMC作ってみた

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初の依頼

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二日ぶりに野村と話し合う中で、経営を安定化させる為にネットにホームページを開設しようという事になった。

正直に言えば、これは中々良い案だったのだが、生憎と山田はこの手の事にはからっきしだ。

小中高時代のパソコンを使った授業で良い点を取った事など一度も無い。

Wordで書類一つ作るのすら億劫なのだ、ホームページ開設など、逆立ちして一日中過ごせ、と言われるのと同義である。

さらに言えば、言い出しっぺである野村も山田と同じだった。

タイピングの速度や使い方が、山田と瓜二つで、どこからどう見ても「パソコン初心者」だった。

この件は事務方のあの3人に任せる事にした。

つまり、後8日は待たなければならない。

事務所も看板もあるにはあるが、それだけで「よし、ここに頼もう。」と思う人間がいるとは思えなかった。

覚悟していたが、先行きが不安になる。

暗礁に乗り上げるとはこの事だと、皮肉りたくなる。

他にも細々とした案も出てきはしたが、ホームページ開設の件を引きづり、会議がだらけたと感じ、山田は解散を切り出した。

自宅へ向けて歩く中で、山田は依頼人が降って来てくれればと思った。

そんな事を考えながら、15分程度車を走らせると自宅に着いた。

自宅に着いた後にジャージに着替えた。

ランニングと筋トレをする為だ。

10キロを走り、120回ずつ腹筋、腕立て、スクワットを行う。

最近のトレーニングの成果か、筋肉の筋が浮き出てきた。

全盛期までは後少しという感じだったが、不安な事がある。

銃を撃っていないのだ。

89式もSIGも、分解結合も何度も行い、勘は取り戻せた実感はある。

だが、銃を撃つ感覚ばかりはどうしようもない、撃てないからだ。

射撃場もあるにはあるが、レンタル料も馬鹿にならない。

PMCが増えてきて、安くなりはしたが、それでも何の収入も無い中、そう易々とは借りる気はしない。

自前のものを買おうと思えば、4、500万は欲しい。

それに、清掃費も維持費もかかるので、現状は不可能だ。

初めの内は、小規模かつ危険性の低い依頼を受け、金を貯めながら、評判を売っていくやり方が最善だと思う。

例えどんなに時間が掛かろうとも、やってやる。

そんな事を考えていたら、家の呼び鈴が鳴った。

玄関のドアの前に居たのは、第14普通科連隊長、川内圭吾一等陸佐、山田の上官だった。

驚愕の余り、固まっていると、額を叩かれた。

「元気だったか、山田。」という声にはっとした。

「お久しぶりです。川内1佐。」思わず10度の敬礼をしてしまう。

陸自時代の癖が未だに染み付いていた、そして、それを見て川内は笑いを堪えながら、口を開いた。

「山田、PMCを開業したらしいな。」

山田は驚いた。

どうしてその事を、誰から聞いたんだ、と思っていたら、「甲斐田から聞いたぞ。まだ、開きたてだそうだが。」と言った。

あのお調子者が話したらしい。

多少腹は立つが、相手が川内1佐なら別に良いかと思った。

「山田、お前に頼みがあって、ここに来たんだ。」

いつの間にか沈痛な面持ちになっていた川内がそう言った。

山田は驚きながら、「分かりました。まずはお上りください。コーヒーを出します。」と家の中に入る事を勧めた。

にこりと笑うと、川内は靴を脱ぎ、コートを脱ぎながら家に入った。

リビングに通し、コーヒーを出して話をする事にした。

「川内1佐、どういったご依頼でしょうか。」

山田が尋ねると、川内はテーブルの上に置いた両手を握りしめて言葉を絞り出すようにして言った。

「山田、この事は絶対に部外者には言うな。」

「部外者というのは、私の部下は含まれませんか?」山田が聞くと、「出来る限り言うな。」と念を押して来た。

山田は頷くと、「分かりました、それで依頼の内容は何ですか?」

山田が再度聞くと、川内は「実は…日菜子が浮気しているんだ…。」と言った。

信じられない、と思った。

日菜子夫人には何度か会っていた。

川内が山田自宅に招いてくれた事があり、面識ぐあるのだ。

招いてくれた理由は、「お前を信頼してるからだよ。」と、毎回言われた。

特に優れた隊員ではないのに何故、とは思いはしたが、内心嬉しかったのもあり、毎回喜んで行っていたのだ。

そして、日菜子夫人は毎回、笑顔で出迎えてくれ、川内の隣で川内と共に笑いながら、会話に花を咲かせていた。

川内の隣で笑うあの人は良く、自分の夫を褒めていた。

そして、心配していると、毎度の事のように川内の隣で言い、川内をしかめ面にさせていた。

しかし、最後は「私にはこの人はすぎた人です。」と、笑いながら言っていた。

そして、帰る際は、川内と共に玄関までではあるが、見送ってくれた。

とても信じられない話だったが、川内は話し始めた。

「最初は、気のせいだと思ったが、外出する前には必ず、化粧をして、気に入りの服を来て行く。そして、帰ってきた時は少し服げはだけている。」俯きながら、川内は続けた。

「怪しいと思って、尾行した事がある。やってはいけないと思っていたが、不安でたまらなかった。だが、あいつは駅前で若い男と楽しそうに話しながら、レストランに入り、出てきたと思ったら、最後はホテルだ。もう、疑う余地は無い。あいつは、俺を捨てた。」

話をする川内は悲しさを感じさせた。

いたたまれなかった。

しかし、尚も川内は話し続けた。

「山田、俺はあいつに言ったんだ。裏切りめ、もう信じられない。離婚だと。だが、あいつは「やってない。そんな男は知らない。私を信じて」とのたまう。」

山田は何も言えなかった。

「証拠を突きつけて、あいつを後悔させたい。報酬は400万だ。頼む、山田。受けてくれ。」

今の山田は目の前の悲しみに暮れる上官の願いを断る事が出来なかった。

「分かりました。引き受けます。」と言った。

川内は「ありがとう、ある程度の情報は後日送る。」と言うと、今まで口を付けていなかったコーヒーを一口で飲みきり、玄関へ向かった。

そして、帰り際に「頼む。」と一言だけ言い、去って行った。

気分が重かった。この依頼の成功は、日菜子夫人の裏切りを決定的なものにするからだ。

だが、川内の悲しみと怒りを思えば、この依頼は断れない、成功させなければならない。

そう決意した山田は、野村に連絡を取ることにした。
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