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第一章
行き倒れ
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ククルド村を出て数時間ほど歩いたミスティは、森の中の細い一本道を進んでいる。木々の隙間から日の光が地面に様々な模様を描いていた。大きく左に曲がった道を抜けたとき、数メートル先に人が倒れているのを発見した。
「えっ……、人?」
ミスティは慌てて駆け寄った。黒髪の男性で、顔を覗き込むと真っ青だ。いつからこの場所に倒れていたのだろうか。ミスティが触れた男性の体は冷え切っていた。さらに声がけをしても意識が戻らない。
「どうしよう。こんな場所で人も通らないのに……」
ここで見捨てるわけにはいかない。助けられるのはミスティだけだ。辺りを見回して、開けた場所を探す。少し先の方に道幅が広くなっている場所があって、そこから少し森に入れば横に寝かせる場所くらいは作れるかもしれない。
ミスティはまず男性の呼吸を確認した。息があるようでホッとするが、脈は弱いようだ。男性を仰向けにして後ろから脇に手を入れ、力いっぱい引っ張る。そのまま引きずって開けた場所まで連れて行く。
「お~も~い~~~!」
途中どのくらい休憩をしたかわからない。意識のない人間は見た目以上に重いことを学んだ。
「はぁはぁはぁ……やっと連れてこられた」
周りの落ち葉を足で払って土を剥き出しにし、石で囲った中に枯れ葉や枯れ木を積んでいく。早く火を起こさないと日が落ちれば今よりもっと冷え込んでくる。
男性は黒い服に黒いマントを身につけていた。荷物はあまりないようだが、旅をしているのか革靴がかなりくたびれている。
大急ぎで火を起こし男性を側に近づける。顔にかかる黒髪を掻き分けると、その風貌はかなりの美男子だった。唇の色は真っ青で顔色は悪い。そして首元に真っ黒な痣があることに気がついてまじまじと見てしまった。
(意識、戻らないな。お水、そうだ……お水を飲ませてみよう)
ミスティは自分のバッグから水筒を取り出し飲み口を近づけて飲ませようとするが、口を開けてくれないのでこぼれるばかりだ。
(どうしようかな……)
考えた末、ミスティは清潔な布に水を浸し男性の唇を濡らすことにした。すると少し口が開いたので、少しずつ水を口の中へ流し込んでいく。すると何回目かでゴクンと男性の喉が動いた。
「あ、飲んだ!」
うれしくなったミスティはしばらくの間、男性に水を与え続けた。日が落ちて辺りが暗くなる。それと同時に気温が下がり始め、吐き出す息が白くなっていった。
ミスティは毛布を頭から被り、膝を立てたそこに日記帳を載せ、今日あった出来事を記していた。朝目が覚めて、知らない男性が寝ていたら驚くだろう。そのことを詳細に記していった。
男性は未だに目を覚まさない。でも顔色はずいぶんよくなっていて唇の色も戻っている。もしかしたら体を焚き火で温めて、根気よく水を飲ませたことがよかったのかもしれない。
「ふあぁあ……もう眠いな」
ひと晩火が消えないように薪を追加して、ミスティは毛布に包まって横になった。揺らぐ火の影が男性の綺麗な顔に映っている。この世の中にこれほど美しい男性がいるのかと改めて見つめてしまう。
そうして見ているうちに眠くなったミスティは、ゆっくりと意識を手放していったのだった。
誰かに体を揺すられている。もしかしたら母親が起きなさいと起こしに来たのかもしれない。意識を浮上させてミスティは目を開く。見慣れた天井と母親の顔があると思ったが、そこには見知らぬ男性がこちらを覗き込んでいた。
「うああああ!」
驚いたミスティは大声を上げて飛び起きて、地面を這って男性から距離を取った。そして自分がなぜ外で寝ているのかわからなくてキョロキョロしながら混乱する。
「あ、あなたは誰ですか! ここは、どこだ? なんで、外で寝てるんだ……?」
一人でパニックになっていると、困惑した顔の男性がミスティを見つめて固まっている。
「俺は……ルト……ルト・ヘンディエクスという。旅の途中で倒れてしまって……それを君が、助けてくれたん、だよな?」
そう説明されたが、ミスティにはなんのことかわからない。自分がどうして外で寝ているのかもわからないのに……。
目の前にいるのは黒い服を着て、黒いマントを着けた男だ。短い黒髪に黒い瞳。やさしそうで美しい顔立ちの男性だった。その顔が困惑してミスティを見つめている。
「えっ……、人?」
ミスティは慌てて駆け寄った。黒髪の男性で、顔を覗き込むと真っ青だ。いつからこの場所に倒れていたのだろうか。ミスティが触れた男性の体は冷え切っていた。さらに声がけをしても意識が戻らない。
「どうしよう。こんな場所で人も通らないのに……」
ここで見捨てるわけにはいかない。助けられるのはミスティだけだ。辺りを見回して、開けた場所を探す。少し先の方に道幅が広くなっている場所があって、そこから少し森に入れば横に寝かせる場所くらいは作れるかもしれない。
ミスティはまず男性の呼吸を確認した。息があるようでホッとするが、脈は弱いようだ。男性を仰向けにして後ろから脇に手を入れ、力いっぱい引っ張る。そのまま引きずって開けた場所まで連れて行く。
「お~も~い~~~!」
途中どのくらい休憩をしたかわからない。意識のない人間は見た目以上に重いことを学んだ。
「はぁはぁはぁ……やっと連れてこられた」
周りの落ち葉を足で払って土を剥き出しにし、石で囲った中に枯れ葉や枯れ木を積んでいく。早く火を起こさないと日が落ちれば今よりもっと冷え込んでくる。
男性は黒い服に黒いマントを身につけていた。荷物はあまりないようだが、旅をしているのか革靴がかなりくたびれている。
大急ぎで火を起こし男性を側に近づける。顔にかかる黒髪を掻き分けると、その風貌はかなりの美男子だった。唇の色は真っ青で顔色は悪い。そして首元に真っ黒な痣があることに気がついてまじまじと見てしまった。
(意識、戻らないな。お水、そうだ……お水を飲ませてみよう)
ミスティは自分のバッグから水筒を取り出し飲み口を近づけて飲ませようとするが、口を開けてくれないのでこぼれるばかりだ。
(どうしようかな……)
考えた末、ミスティは清潔な布に水を浸し男性の唇を濡らすことにした。すると少し口が開いたので、少しずつ水を口の中へ流し込んでいく。すると何回目かでゴクンと男性の喉が動いた。
「あ、飲んだ!」
うれしくなったミスティはしばらくの間、男性に水を与え続けた。日が落ちて辺りが暗くなる。それと同時に気温が下がり始め、吐き出す息が白くなっていった。
ミスティは毛布を頭から被り、膝を立てたそこに日記帳を載せ、今日あった出来事を記していた。朝目が覚めて、知らない男性が寝ていたら驚くだろう。そのことを詳細に記していった。
男性は未だに目を覚まさない。でも顔色はずいぶんよくなっていて唇の色も戻っている。もしかしたら体を焚き火で温めて、根気よく水を飲ませたことがよかったのかもしれない。
「ふあぁあ……もう眠いな」
ひと晩火が消えないように薪を追加して、ミスティは毛布に包まって横になった。揺らぐ火の影が男性の綺麗な顔に映っている。この世の中にこれほど美しい男性がいるのかと改めて見つめてしまう。
そうして見ているうちに眠くなったミスティは、ゆっくりと意識を手放していったのだった。
誰かに体を揺すられている。もしかしたら母親が起きなさいと起こしに来たのかもしれない。意識を浮上させてミスティは目を開く。見慣れた天井と母親の顔があると思ったが、そこには見知らぬ男性がこちらを覗き込んでいた。
「うああああ!」
驚いたミスティは大声を上げて飛び起きて、地面を這って男性から距離を取った。そして自分がなぜ外で寝ているのかわからなくてキョロキョロしながら混乱する。
「あ、あなたは誰ですか! ここは、どこだ? なんで、外で寝てるんだ……?」
一人でパニックになっていると、困惑した顔の男性がミスティを見つめて固まっている。
「俺は……ルト……ルト・ヘンディエクスという。旅の途中で倒れてしまって……それを君が、助けてくれたん、だよな?」
そう説明されたが、ミスティにはなんのことかわからない。自分がどうして外で寝ているのかもわからないのに……。
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