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第三章
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どこからか鳥の囀りが聞こえて目が覚めた。ゆっくりと上半身を起こす。窓が開け放たれていて、その向こうにある大きな木の小枝に小鳥が止まっているようだ。
「おはよう、ミスティ」
「おはよ、ルト。天気がいいね」
ルトは窓際のテーブルに座ってなにかを書いているようだった。そしてミスティは昨夜のことを忘れていないうれしさと同時に、気恥ずかしさを覚えていた。
「今日はどう? 忘れてない?」
「うん、平気みたい。ルトのこともわかる。でも昨日の午前中とかのことはあんまり……ここはどこだっけ、宿屋、じゃないよね」
記憶がところどころ抜け落ちていた。でも昨日よりは覚えていることが多そうだ。特に寝る前にルトとしたキスの感覚は生々しく残っていた。
「ここはロドリゲスの家だよ。奥さんはキャリン。朝食を済ませたらトラジの家に行って昨日の続きだ。今日の昼頃に村を出ようと思う」
ルトに説明されて、この場所がどこかを思い出した。リアンを助け、その次男のロドリゲスの家に来て、そこから本の虫であるトラジの家で竜についての伝承などを調べていた。なんとなく思い出してきて、ミスティは前日の記憶があるうれしさに頬を緩ませた。
「思い出したようだな。どうやら俺のキスは有効らしい。そしてこれで俺が竜人である可能性も強くなったな」
「ところどころは記憶が抜けてるけど、ルトに説明されたらなんとなくぼんやり浮かんでくる感じ。昨日よりは覚えていることが多いかも」
ベッドから出て身支度を整える。窓際のテーブルの上にはパンと果物が置いてあった。
「これ、キャリンが朝早くに持ってきてくれた。朝ご飯だ」
「あ、そう。ありがたいね」
ミスティは自分が寝ている間にキャリンがこの部屋に来て、ルトと話したのかと考えて胸がチクンと痛む。その感情が声に出てしまい、ルトが怪訝な顔でこちらを見ていた。
「さて、僕も好意に預かろうっと」
わざと元気な声を出してルトの正面にある椅子を引いて座った。リアンを助けたお礼で、こんなにまでしてもらうのはそろそろ気が引ける。ひと晩泊めてもらうだけでもありがたいのに、食事や湯桶まで準備してくれるのだ。さらには「いつまででもいてくださいね」とキャリンが言う。ルトもその言葉に素直に甘える気はなさそうだ。
「ここを出て、どこに向かうの?」
「昨日、トラジのところで見つけたルサンド高原を目指して、まずはその手間にあるハーザンドの街に向かう。ここで有効な情報を得られたし、もうこの村に長居は無用だからな」
「そっか、ハーザンドの街、か」
ミスティの記憶にそれはなかった。抜けている記憶の中に入っていたようだ。聞いたことがあるようなないような感覚は、もやもやした感じで気持ちが悪い。
(今までは覚えていないことが普通だったから、部分的に覚えていないことの不快さを知らなかったんだ。もっとちゃんと覚えておきたいと思うのに、忘れてしまうのが悔しい……)
ミスティはキャリンが持ってきてくれたパンを齧りながら、中途半端な物覚えにストレスを感じていた。しかしそれもしかたがない。少しでも覚えていられることがあるのだから。それをありがたいと思うしかない。
ミスティとルトは朝食を済ませると出発の準備を整えた。トラジの家に行き、昼くらいまで調べ物をしてそのまま村を出る予定だ。
「そんな、ひと晩だけだなんて寂しいわ」
村を出ることをキャリンやロドリゲスに伝えると、残念そうな顔でそう言われた。もちろん言ったのはキャリンだが、彼女はずっとルトだけを見つめていて、ミスティのことは目に入っていないようだ。
(なんか僕はいないも同然、みたいな感じなのかな。別にいいけどさ……)
世話になったのだから文句は言うまいと唇を真一文字に結ぶ。よく考えたらキャリンはミスティにほとんど話しかけていないことに気づく。ロドリゲスという夫が隣に立っているのに、なんてあからさまなのだろうと少し呆れてしまう。
(ロドリゲスさんはいやな気分になったりしないのかな?)
そんなことを考えていると、目の前に手が差し出される。ロドリゲスだ。
「また立ち寄ってくださいね。母もミスティさんと話したいって言ってましたから」
思わぬ言葉をもらい、ミスティは喉の奥から迫り上がるうれしさをグッと我慢した。ロドリゲスの手を掴んで握手をし、人のやさしさに触れて心を和ませる。
「ありがとうございます。食事もお湯もお世話してもらって助かりました。今日はトラジさんのところでもう少し調べたら出発します」
「旅の道中、十分に気をつけてください」
ロドリゲスから心のこもった言葉をもらい、ミスティは温かい気持ちになる。さらに旅に必要な水や食料なども準備してくれて、彼らの心遣いに感謝するのだった。
「おはよう、ミスティ」
「おはよ、ルト。天気がいいね」
ルトは窓際のテーブルに座ってなにかを書いているようだった。そしてミスティは昨夜のことを忘れていないうれしさと同時に、気恥ずかしさを覚えていた。
「今日はどう? 忘れてない?」
「うん、平気みたい。ルトのこともわかる。でも昨日の午前中とかのことはあんまり……ここはどこだっけ、宿屋、じゃないよね」
記憶がところどころ抜け落ちていた。でも昨日よりは覚えていることが多そうだ。特に寝る前にルトとしたキスの感覚は生々しく残っていた。
「ここはロドリゲスの家だよ。奥さんはキャリン。朝食を済ませたらトラジの家に行って昨日の続きだ。今日の昼頃に村を出ようと思う」
ルトに説明されて、この場所がどこかを思い出した。リアンを助け、その次男のロドリゲスの家に来て、そこから本の虫であるトラジの家で竜についての伝承などを調べていた。なんとなく思い出してきて、ミスティは前日の記憶があるうれしさに頬を緩ませた。
「思い出したようだな。どうやら俺のキスは有効らしい。そしてこれで俺が竜人である可能性も強くなったな」
「ところどころは記憶が抜けてるけど、ルトに説明されたらなんとなくぼんやり浮かんでくる感じ。昨日よりは覚えていることが多いかも」
ベッドから出て身支度を整える。窓際のテーブルの上にはパンと果物が置いてあった。
「これ、キャリンが朝早くに持ってきてくれた。朝ご飯だ」
「あ、そう。ありがたいね」
ミスティは自分が寝ている間にキャリンがこの部屋に来て、ルトと話したのかと考えて胸がチクンと痛む。その感情が声に出てしまい、ルトが怪訝な顔でこちらを見ていた。
「さて、僕も好意に預かろうっと」
わざと元気な声を出してルトの正面にある椅子を引いて座った。リアンを助けたお礼で、こんなにまでしてもらうのはそろそろ気が引ける。ひと晩泊めてもらうだけでもありがたいのに、食事や湯桶まで準備してくれるのだ。さらには「いつまででもいてくださいね」とキャリンが言う。ルトもその言葉に素直に甘える気はなさそうだ。
「ここを出て、どこに向かうの?」
「昨日、トラジのところで見つけたルサンド高原を目指して、まずはその手間にあるハーザンドの街に向かう。ここで有効な情報を得られたし、もうこの村に長居は無用だからな」
「そっか、ハーザンドの街、か」
ミスティの記憶にそれはなかった。抜けている記憶の中に入っていたようだ。聞いたことがあるようなないような感覚は、もやもやした感じで気持ちが悪い。
(今までは覚えていないことが普通だったから、部分的に覚えていないことの不快さを知らなかったんだ。もっとちゃんと覚えておきたいと思うのに、忘れてしまうのが悔しい……)
ミスティはキャリンが持ってきてくれたパンを齧りながら、中途半端な物覚えにストレスを感じていた。しかしそれもしかたがない。少しでも覚えていられることがあるのだから。それをありがたいと思うしかない。
ミスティとルトは朝食を済ませると出発の準備を整えた。トラジの家に行き、昼くらいまで調べ物をしてそのまま村を出る予定だ。
「そんな、ひと晩だけだなんて寂しいわ」
村を出ることをキャリンやロドリゲスに伝えると、残念そうな顔でそう言われた。もちろん言ったのはキャリンだが、彼女はずっとルトだけを見つめていて、ミスティのことは目に入っていないようだ。
(なんか僕はいないも同然、みたいな感じなのかな。別にいいけどさ……)
世話になったのだから文句は言うまいと唇を真一文字に結ぶ。よく考えたらキャリンはミスティにほとんど話しかけていないことに気づく。ロドリゲスという夫が隣に立っているのに、なんてあからさまなのだろうと少し呆れてしまう。
(ロドリゲスさんはいやな気分になったりしないのかな?)
そんなことを考えていると、目の前に手が差し出される。ロドリゲスだ。
「また立ち寄ってくださいね。母もミスティさんと話したいって言ってましたから」
思わぬ言葉をもらい、ミスティは喉の奥から迫り上がるうれしさをグッと我慢した。ロドリゲスの手を掴んで握手をし、人のやさしさに触れて心を和ませる。
「ありがとうございます。食事もお湯もお世話してもらって助かりました。今日はトラジさんのところでもう少し調べたら出発します」
「旅の道中、十分に気をつけてください」
ロドリゲスから心のこもった言葉をもらい、ミスティは温かい気持ちになる。さらに旅に必要な水や食料なども準備してくれて、彼らの心遣いに感謝するのだった。
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