嘘つきな君と、本当の僕

柚槙ゆみ

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 春樹の気持ちがわからない。どうしてそんな嘘をついたのか。こういうとき、なんと言えばいいのかわからない直人は黙ってしまった。

「本当に好きだったのは、直人だった」

 春樹の声は穏やかだったが、その瞳は真剣だった。真っ直ぐに直人を見つめたあとすぐに視線を逸らされた。やはりなんと言っていいのかわからず直人は黙ってしまった。
 あのとき、同窓会で会ったとき、直人も春樹も思い合っていたということになる。いや、今でも直人は春樹を思っている。なのにその気持ちを言い出せない。

(あのときはって言ったから、今は違うかもしれない)

 臆病な性格は今も昔も変わらない。春樹はこうして打ち明けてくれたのに自分は言えないままなのか。でも今、春樹を好きな気持ちを打ち明けても、都合よく合わせなくていいと思われるのではないか。いろいろなことがぐるぐると頭の中を回って、最終的に黙るしかなかった。

「でも直人がずっと『友達』として接してくれるのがわかってたから……この気持ちは伝えない方がいいって思ってた。だから嘘をついたんだ。でも結局は苦しくなって、逃げるように引っ越して……バカみたいだよな」

 直人は言葉を失った。春樹の失踪の原因はまさかの自分だった。転職だと言っていた仕事も辞めて街を離れてしまうほど思い詰めていたのか。それを知らないで、直人はしつこく「心配だから返事して」と何度も無神経にメッセージを送ってしまった。

「でも、あの、それならなんで……今さら……?」
「ずっと考えてたんだ。嘘をついたまま、春樹と疎遠になるのが一番楽なのかもしれないって。でもやっぱりそれはいやだった。だから……今日は本当のことを伝えたくて、戻ってきた」

 春樹はテーブルに置かれた直人の手をぎゅっと握りしめてきた。その手は力強く熱く、真剣な想いを伝えてくる。周りには他のお客さんがいるし、店員さんもすぐ近くを通っていた。しかしそんなことはお構いなしで、春樹はずっと直人の手を握っている。

「そ、それ、俺はなんて言えばいいんだよ。……本当に、バカだな」
「困らせてごめん。気持ちを伝えたいだけだったんだ。直人は俺のことを友達だと思ってるんだから、これからも……」
「あのさ、俺も嘘をついてた」

 春樹の言葉を遮って、直人は口を開いた。
「え?」
 春樹が心底驚いた顔で直人を見つめている。その瞳は動揺に揺れていて、それが手に取るようにわかった。
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