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Ⅰ 転移
三人
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「いや、なんとなく想像はついていたけども!けどもだよ!300年はやべーだろ!」
「何をしているの?さっきからごちゃごちゃと。静かにして頂戴。」
先程の衝撃から10分ほど。俺は衝撃のほとぼりが冷めぬまま、未だ謎の少女と並んで長い廊下を歩いていた。
……そう、なが~~い廊下……
「まてまて、つーかいくらなんでも長くね!?ずっと景色変わんないと地味につらいんだが?」
「……ん、どうやら無限回廊に捕まったらしいわね。……それもそうか。」
俺がたまらず叫ぶと、少女は頬に手を当て呟いた。
なんだその物騒なやつは。脱獄防止システム的ななんかだろうか。病院か何かじゃなかったの?ここ。
いやー、色々怖いよ。なにがあるか全くわっかんね。いやぁ、今頃右も左も分からぬまま一人さ迷ってたらどうなっていたことか……。う、考えただけで寒気が。
無意識に肩を震わす俺。それに気付いたのか、少女がこちらをちらりと一瞥する。
「なに?またそんな変な顔して。」
「変なって……ま、まあ、助けてくれてありがとなって。あのままいたら俺今頃どうなってたか分からないしな。」
苦笑しながら感謝の言葉を述べる。…すると途端少女の纏う空気がスっと冷え、心底軽蔑した様な瞳を向けられる。
「アナタを助ける?何を言ってるの、おぞましい。まさか自覚がないのかしら?……アナタは今立派な犯罪者なのよ?」
「──────。───────!?」
…………………………え、この女いまなんて?犯罪……?
あまりに突然なカミングアウトに硬直していると、付け加えるように少女が言った。
「その感じだと本当にわかっていないようね……。アナタ、公共の公園の中で野グソしてたわよね?しかもトイレの横で。トイレに喧嘩でも売っていたの?当然公然猥褻罪よ。それと、この世界では無断で空間転移することは法律上禁止されている。なんの遊びか知らないけれど、公園に転移してきたでしょう?……それで、アナタはここに転送されたの。変な勘違いはよしなさい。」
「うおおーーい!聞いてねぇっ!!聞いてねえぞ!つーかあれは不可抗力だっ!!ちゃんと家のトイレで……し、してたのに急にあそこに飛ばされたんだぞ!?」
あと軽率に女の子が野グソとか言うなよ!?
早口で捲し立てられ押されそうになるが、俺の必死の弁解に少女は珍しくちゃんと疑問に思ったらしく、少し声音を落として尋ねてきた。
「不可抗力?……アナタがやったわけでは……」
「ねーーよ!俺にあんな趣味はないっっ!!断じてない!」
「っ……なら、アナタは何者なの?」
「お、俺は2018年産まれの18才、東京の都会ど真ん中で育った田舎知らずの都会もん、天宮奏だ!」
どーん、と効果音が付きそうな自己紹介を済ませ一息。
こ、これで何か役立つ情報をくれたりしないか……?
そう思い少女のほうを見ると……
「あ、アナタが……」
少女の顔が驚愕の色に染まっていた。
少女の表情の急変に驚き、俺は問うた。
「……ん?ど、どうかしたか?」
すると、少女は冷静さを取り戻したように言った。
「……いえ、ごめんなさい、取り乱してしまったわね。……なんでも、ないわ。」
……なんだ?こいつが自ら非を認めるなんて。なんか変なことでも言ったかな?
「………そうか、…………彼が…………」
なんだこいつ。まだぶつぶつ言ってやがる。なんだ、そんなに俺の自己紹介が変だったの!?もしそうだったらショックだよ結構!?
「な、なぁ……俺、変なこと言った……?」
「──!……変なこと?強いて言うならば変なのはアナタの顔かしらね。」
ぐぁッッ!!い、今のはかなり効いたぞッ…………
しかし、辛辣な言葉からして、通常の彼女に戻ったようだった。
目にじんわり涙を滲ませた俺を横目に、少女はなにやらケータイのようなものを取り出した。
「なんだ?それ。」
すると少女はチラリとこちらを見て、「やっぱり彼は………」とかなんとか訳のわからんことを言い、サッとケータイのようなそれをこちらに向けてきた。
「うおっ、なん……」
なんだ、盗撮か───と言おうとして、俺は目の前の光景の変化に唖然とした。目の前に広がっていたのは、先程までいた所とはあまりにかけ離れた場所だった。だだっ広い空間に1つ巨大な木が立ち、地面は重々しいタイルから芝生に変わり、寝転ぶ人や座り込んで談笑する人が目に入る。段々と耳が馴れてきて、ざわざわと人の会話や環境音が微かに聞こえ始めた。
……あれ、俺たちこんな広場にいたっけ?たしか、さっきいたのは廊下……廊下……?
!!……無限回廊!!
「おい、む、無限……回廊?から抜け出したのか!?どうやったんだ!?」
「騒がないで頂戴。……いまのは……まあ、顔認証ってところかしらね。ループから抜け出すためには必要なの。……それで────」
「おぉーーい、咲ちゃーん!」
それでなんだ、と聞こうとしたところで、突然広場に柔らかい声が響いた。
「……想像以上に速かったわね……。」
「はぁ~~っ、疲れた~~。咲ちゃんが急用だとかなんとかいうから、急いで来ちゃったよ~~」
テヘペロ、と舌をだす少女。
な、なんだ、この人は…………!
「あ、そうだ、君が件の───。……?どうかしたの?」
頭に疑問符を浮かべたように首をかしげるこの少女……。
メチャメチャタイプだ!!!
「何をしているの?さっきからごちゃごちゃと。静かにして頂戴。」
先程の衝撃から10分ほど。俺は衝撃のほとぼりが冷めぬまま、未だ謎の少女と並んで長い廊下を歩いていた。
……そう、なが~~い廊下……
「まてまて、つーかいくらなんでも長くね!?ずっと景色変わんないと地味につらいんだが?」
「……ん、どうやら無限回廊に捕まったらしいわね。……それもそうか。」
俺がたまらず叫ぶと、少女は頬に手を当て呟いた。
なんだその物騒なやつは。脱獄防止システム的ななんかだろうか。病院か何かじゃなかったの?ここ。
いやー、色々怖いよ。なにがあるか全くわっかんね。いやぁ、今頃右も左も分からぬまま一人さ迷ってたらどうなっていたことか……。う、考えただけで寒気が。
無意識に肩を震わす俺。それに気付いたのか、少女がこちらをちらりと一瞥する。
「なに?またそんな変な顔して。」
「変なって……ま、まあ、助けてくれてありがとなって。あのままいたら俺今頃どうなってたか分からないしな。」
苦笑しながら感謝の言葉を述べる。…すると途端少女の纏う空気がスっと冷え、心底軽蔑した様な瞳を向けられる。
「アナタを助ける?何を言ってるの、おぞましい。まさか自覚がないのかしら?……アナタは今立派な犯罪者なのよ?」
「──────。───────!?」
…………………………え、この女いまなんて?犯罪……?
あまりに突然なカミングアウトに硬直していると、付け加えるように少女が言った。
「その感じだと本当にわかっていないようね……。アナタ、公共の公園の中で野グソしてたわよね?しかもトイレの横で。トイレに喧嘩でも売っていたの?当然公然猥褻罪よ。それと、この世界では無断で空間転移することは法律上禁止されている。なんの遊びか知らないけれど、公園に転移してきたでしょう?……それで、アナタはここに転送されたの。変な勘違いはよしなさい。」
「うおおーーい!聞いてねぇっ!!聞いてねえぞ!つーかあれは不可抗力だっ!!ちゃんと家のトイレで……し、してたのに急にあそこに飛ばされたんだぞ!?」
あと軽率に女の子が野グソとか言うなよ!?
早口で捲し立てられ押されそうになるが、俺の必死の弁解に少女は珍しくちゃんと疑問に思ったらしく、少し声音を落として尋ねてきた。
「不可抗力?……アナタがやったわけでは……」
「ねーーよ!俺にあんな趣味はないっっ!!断じてない!」
「っ……なら、アナタは何者なの?」
「お、俺は2018年産まれの18才、東京の都会ど真ん中で育った田舎知らずの都会もん、天宮奏だ!」
どーん、と効果音が付きそうな自己紹介を済ませ一息。
こ、これで何か役立つ情報をくれたりしないか……?
そう思い少女のほうを見ると……
「あ、アナタが……」
少女の顔が驚愕の色に染まっていた。
少女の表情の急変に驚き、俺は問うた。
「……ん?ど、どうかしたか?」
すると、少女は冷静さを取り戻したように言った。
「……いえ、ごめんなさい、取り乱してしまったわね。……なんでも、ないわ。」
……なんだ?こいつが自ら非を認めるなんて。なんか変なことでも言ったかな?
「………そうか、…………彼が…………」
なんだこいつ。まだぶつぶつ言ってやがる。なんだ、そんなに俺の自己紹介が変だったの!?もしそうだったらショックだよ結構!?
「な、なぁ……俺、変なこと言った……?」
「──!……変なこと?強いて言うならば変なのはアナタの顔かしらね。」
ぐぁッッ!!い、今のはかなり効いたぞッ…………
しかし、辛辣な言葉からして、通常の彼女に戻ったようだった。
目にじんわり涙を滲ませた俺を横目に、少女はなにやらケータイのようなものを取り出した。
「なんだ?それ。」
すると少女はチラリとこちらを見て、「やっぱり彼は………」とかなんとか訳のわからんことを言い、サッとケータイのようなそれをこちらに向けてきた。
「うおっ、なん……」
なんだ、盗撮か───と言おうとして、俺は目の前の光景の変化に唖然とした。目の前に広がっていたのは、先程までいた所とはあまりにかけ離れた場所だった。だだっ広い空間に1つ巨大な木が立ち、地面は重々しいタイルから芝生に変わり、寝転ぶ人や座り込んで談笑する人が目に入る。段々と耳が馴れてきて、ざわざわと人の会話や環境音が微かに聞こえ始めた。
……あれ、俺たちこんな広場にいたっけ?たしか、さっきいたのは廊下……廊下……?
!!……無限回廊!!
「おい、む、無限……回廊?から抜け出したのか!?どうやったんだ!?」
「騒がないで頂戴。……いまのは……まあ、顔認証ってところかしらね。ループから抜け出すためには必要なの。……それで────」
「おぉーーい、咲ちゃーん!」
それでなんだ、と聞こうとしたところで、突然広場に柔らかい声が響いた。
「……想像以上に速かったわね……。」
「はぁ~~っ、疲れた~~。咲ちゃんが急用だとかなんとかいうから、急いで来ちゃったよ~~」
テヘペロ、と舌をだす少女。
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