パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

文字の大きさ
41 / 130

41.飴と鞭

しおりを挟む

 夜の刻になろうとする頃には夕食の時間も終わり、そのままみんなでベリテスの部屋へと向かう。リーダーはいつも夕方から夜にかけて起床しご飯を食べるということで、ミルウが意気揚々と手作りのお弁当を運んでいた。

「ミルウ、あんたちょっと太ったんじゃないの?」

「ええ!? 違うもん。数値上じゃ5ポイントしか増えてないし。セクトお兄ちゃんの前でそんなこと言うなんて、ルシアの意地悪……」

「はあ? あたしはあんたの心配してあげてるのよ。そんだけ体重が上がったら敏捷度が下がってまた足手まといになるじゃない。次は絶対登頂するんだから痩せなさいよね!」

「あふー……」

 ミルウが涙目だ。確かに腹は少し出てる感じだが、結構シビアなんだな。

「まあまあ。それだけミルウの料理が上手ということですねー」

「えへへ……」

 スピカに褒められて、しょげ返っていたミルウもニコニコだ。

「ど、どうせあたしの料理は下手よ!」

「ルシアったら。誰もそんなこと言ってないよ……」

「ふん! ちゃんと顔にそう書いてあるわよ!」

「もー」

 頬を膨らませて拗ねた様子のルシアを見て、バニルは呆れ気味に笑っていた。俺も多分、彼女と同じような顔をしてたと思う。

「それなら、今度はルシアさんにご飯を作ってもらいましょうねえ」

「「「反対!」」」

「……」

 スピカの提案に、バニル、ミルウだけじゃなくルシアまで反対しちゃってる。彼女もスピカほどじゃないが割と不思議ちゃんだし、怒ってるようで実は違うのかもな。

「――リーダー、入るねー」

「……ぐがー……」

 何度ノックしても開かなかったこともあり、バニルが鍵を開けて部屋に入ったので俺たちも続くと、ベリテスはベッド上で大の字になって豪快に寝ていた。さすが、惰眠を愛してるだけあって随分と気持ちよさそうに寝てるな。

「何よ、リーダーったら。これじゃまったく起きそうにないじゃない。えいっ!」

 ルシアが頬をビンタするもリーダーが起きる気配はまったくなかった。結構強く叩いてるように見えたのにぴくりとも反応しないし、このまま自然に目覚めるのを待ってたら朝になってしまいそうだ。

「私に任せて」

 バニルがそっとベリテスの元に近寄ると耳元に口をやった。シンプルに大声を出そうってことか?

「ベリーちゃん、授乳の時間でしゅよお」

「ぬあ!?」

 目を剥いて即座に起き上がるベリテス。なるほど、巨乳に弱いんだったな。てか今のバニルの声、凄く色っぽくてまるで別人みたいだった。

「……お、おっぱいどこ……」

 ベリテスがびっくりした顔で迷子のようにキョロキョロしてる。女性陣はどことなく肩身が狭そうだ。ミルウとスピカ以外はそこそこあると思うが。

「「「「リーダー……」」」」

「……な、なんだ、お前たちか……」

 今頃気付いたのか。リーダーはみんなが自分好みの乳じゃないせいか我に返ったらしい。こりゃ相当の巨乳好きだな。

「……コホン。今日はちょっと寝すぎたようだな。お前たち、これから大事な話をするからよく聞くように!」

 女性陣から冷ややかな視線を束にして送られたせいか、ベリテスが気まずそうに語り始めた。

「わかってると思うが、あと七日でダンジョンの第二層、さらに一日置いて第一層の入り口が開く。それを逃せばあと三か月はお預けだ。一層は中級者から上級者のパーティーまで幅広く人気があり、冒険者にとっては色んなことを経験できる貴重な機会だが、初心者にはちと荷が重い。そこでだ。セクトをそこに間に合わせるために、特別な訓練をしようと思う」

「……リ、リーダー、まさか……」

 なんだ? バニルがはっとした顔になってる。

「お前の想像通りだ、バニル。俺が師から受けた試練と同じことをセクトにやらせる」

「リーダー、無茶だよ。セクトはまだ基本スキルを覚えてないどころか、体だってあっちこっちボロボロでろくに動かせないのに……」

「だからこそだ。それに、あそこに何があるかは知ってるだろ、バニル」

「で、でも……」

「なあに、大丈夫だ。セクト、俺を信じろ」

「……」

 ベリテスがいつになく真剣な顔を向けてきた。一体俺にどんな訓練をさせようっていうんだ……?
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...