パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

文字の大きさ
50 / 130

50.はじまりの刻

しおりを挟む

「……」

 俺は宿舎の広間で目を強く瞑り、座った状態でバニルたちに背を向けていた。

 今から、Bランクまで磨かれた俺の気配察知能力がどれだけの威力を発揮するか実験するところだった。

 普通の察知レベル――Dランク――だと、自分の近くにいる生き物が人間かどうかとか、大雑把な距離や数くらいしかわからないが、これがCランクになると具体的に誰がどの辺にいるのか実際に見ることなく判断でき、さらにBランクまで到達すると、誰がどんな行動をしているかまで朧気だが理解できるようになるのだ。

 さすがに表情だとか、どんな服であるとかまでは判別が難しいが。もしそれができるようになればAランク以上になるだろうし、リーダーのベリテスの気配もすぐ近くならほんの少しは感じられるようになるかもしれない。

 あの人の場合、気配隠蔽能力がSSSランクで、しかも数値が異常に高くてランクじゃ計り知れないレベルらしいから化け物だ。

「――今後ろにいるのは……ミルウ?」

「せいかーい! じゃあ、どんな恰好してる?」

「……うっ……」

 なんかのっぺりしてて体の輪郭がやたらとはっきりしてるな。これは、まさか……。

「……は、裸?」

「そうだよぉ。セクトお兄ちゃん、すごーい……」

「ミルウ……実験のためとはいっても、そこまでしなくても……」

「えへへぇ。直にミルウのお尻撫でてみるぅ?」

「おい……」

 やっぱり俺はまだまだ弄られ役らしい。

「はいはい、変態のお子様は強制撤去するわよ!」

「あふっ……」

 ルシアの怒鳴り声とともにミルウが背後からいなくなるのがわかる……って、今ミルウの裸が脳裏にかなり鮮明に浮かぶとともに、がっかりしたような表情までわかった。

 つまりこれは、ついさっき気配察知能力のランクが上昇してAになったということなんだろうか。

「くすくすっ……セクトさんはそこまではっきりとは見えないみたいですから大丈夫ですよー」

「じゃあ、私も脱いじゃおうかな……」

「まあ。バニルさんったら。では……わたくしもお供しますっ」

「うっ……」

 なんでそうなるかなあ。

「そ、それならあたしだって脱ぐわよ!」

「あふぅ。負けないもん。脱ぐのはミルウの専売特許だもん!」

 いや、勝つとか負けるとかそういう問題じゃ……。

「「「「あはんっ……」」」」

 おいおい、おいおい。みんなが脱いでるところがはっきり見えてるんだが。これはあれか、拷問か。って、何集中しまくってるんだ俺。どれだけ心を鍛えようが本能には逆らえないっていうのか……。

「「「「見てぇっ……」」」」

「お……おいいいっ! いい加減にしろって!」

 堪らず広間から逃げ出してしまったわけだが、その際にみんながきょとんとした表情を浮かべるところまでわかった。色んな意味で集中しすぎて頭に血が上ったせいか鼻血が出そうだ。冷静になれ、俺。

 ……そうだ。石板でランクが上がってるかどうか確認しよう。

「お……」

 薬指を窪みに当てると、やっぱり気配察知能力がBからAランクに上がっているのがわかった。

 この短期間でFランクからここまで熟練度が上がったわけだから素直に自分を褒めてやりたいところだ。冒険者ランクも狼峠の薬草採取イベントのクリアでCになったし、あとは基本スキルを習得することだけだな。明後日には湖のダンジョン――蒼の古城――が解放されるみたいだし、早く覚えたい。

 それに直結する心身の総合能力は、昨日確認したときDだった。俺たちが潜る予定の第一層は明々後日に開くとはいえ、準備も大事だろうしなんとかこれを明後日までに上げてCにしないと。

 俺は中指を窪みに当ててもう一度見てみることにした。全体の指標で足りないのは多分心の部分だ。これを上げていけば……って、あれ? 心はほかの数値と並んでるし、総合能力もCになってる。

 これはあれか。一晩ゆっくり休んで体力がそれなりに回復したのと、みんなが裸になったことで俺の心が癒され……いや、鍛えられたことが原因だろうか。

「あっ……」

 ……ってことは……?

 俺ははっとなって窪みに親指を置いたわけだが……あった。

 固有能力【変換】の下に、基本スキル《スキルチェンジ》の文字が……。まばたきしつつ何度も見返したが、幻なんかじゃなかった。本当に、今まで長かった。これでようやく俺もスタートラインに立てたんだ……。

「おーい――」

「「「「――おめでとー!」」」」

「……えっ……」

 習得したことを伝えに行こうとしたときだ。既にみんなが周囲にいて、しかもまだ裸だったことに気付いてしまった。

「うはあっ!?」

 してやられた。気配察知能力についてはもちろん、俺は男としての立場もまだまだらしい。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...