パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

文字の大きさ
74 / 130

74.導かれる悪意

しおりを挟む

 蒼の古城第一層、列柱に囲まれたアーチ型回廊にて、延々と月明かりに照らされながら歩く男たちがいた。カルバネをリーダーとする四人パーティー『ソルジャーボーンズ』である。

「ピエール……本当にこっちで間違いないのか?」

 疲れた表情で溜息を吐き出すカルバネ。

 彼らは中庭を見下ろせるこの回廊からスタートしたわけだが、途中でモンスターを二匹倒しただけであとはひたすら真っすぐ歩くのみであり、一向に同じような景色が続いていたため、次第に疲労感とともに不安も色濃くなっていたのだ。

「はい。僕の派生スキル《方位》は目指したい方向へと着実に導いてくれますから」

「んなこというけどよ、サボリ魔ピエール、おめーのスキルなんてどうせ熟練度低いんだろ?」

「バ、バカ言わないでくださいよアデロさん。スキルのランク自体は上がってませんが、熟練度なら一つだけ上げてあるので、少しは……」

「……無能……」

「ザッハの言う通りだ! もし変な方向に行ったらその場で死んで詫びろクソボケ――えひゃっ!?」

 通路のひび割れに靴先が引っ掛かって派手に転ぶアデロ。

「い、いてて……ピ、ピエール! おめー、今絶対《呪言》でおいらを転ばせたろ!」

「は? そんなの使ってませんけど? 実際、僕の悪口を言ったザッハさんには何も起きてませんよね?」

「ぐっ……」

「はー……。あなたのしょうもない不注意による事故をいちいち僕のせいにしないでほしいんですがねぇ……」

「ど、どうせそんなのよ、事故に見せかけるためにあえてザッハには何もしなかっただけだろうが!」

「アデロさんは実に想像がたくましいことですねぇ」

「……クククッ……」

「おい、今笑いやがったなクソデク! サボリ魔ピエールと一緒に今すぐ死ね!」

「……クソチビ……」

「「「あ?」」」

「お前ら、いい加減にしないか!」

「「「はいっ!」」」

 カルバネの一言で縮み上がる三人だったが、まもなくアデロがはっとした顔になった。

「そういやカルバネさん、なんで『ウェイカーズ』のほうじゃなくて『インフィニティブルー』のほうを探すんで?」

「そんなの決まっている。『ウェイカーズ』はオランドを除いて危険すぎるメンバーが揃っているからだ。グレス、ルベック、ラキル、カチュア……実際に会ってみてわかった。特にあのグレスとかいうリーダーの男が漂わせる殺気は尋常ではない……」

「た、確かに!」

「あれはヤバスギですよねぇ。なんか目が違うっていうか……」

「……えぐい……」

「とはいえ、やつらの狙いはあくまでも『インフィニティブルー』だ。だからそれをワンクッションにする形で見物したほうが安全だろうと思ってな」

「さすがカルバネさんっす!」

「策士ですねえ」

「……偉人……」

「おいおい、そんなに褒めても俺は何も出さんよ……っと、客だ」

「「「あっ……」」」

 彼らの前方に突如出現したのは、甲羅全体に棘を生やした人の頭部ほどの大きさの一匹の亀だった。頭を隠したまま、パーティーの先頭にいるカルバネに向かってのそのそと歩み寄ると、ある程度近付いたところで一気に跳躍して頭部に生やした鋭い角を煌めかせた。

 これはコルヌタートルといって、特に跳躍力と防御力に秀でた亀のモンスターであり、緩急の差が凄いために迂闊に近寄った者が気が付いたときにはやられていたといったケースも多い。

 角を出したコルヌタートルは一直線にカルバネの頭部へと向かっていったが、既に【骸化】していた彼は身軽に避けると同時に長剣を一閃させた。

「「「おおっ……」」」

 アデロたちが驚くのも無理はなかった。とにかく硬いことで知られるコルヌタートルが縦に真っ二つになって消滅したからだ。

 磨き上げられた剣術に加え、カルバネの派生スキル《形骸》は基本スキル《変身》同等のCランクであり、接近してきた相手の防御力を著しく減少させる効果があるのだ。しかも、より引きつけることでさらに威力が増す。

(待っていろ、セクト。いずれ必ずお前はこの亀よりも惨めな思いをすることになる……)

「おい、その石はおいらのだ!」

「僕のですよ?」

「……自分の……」

 一方でアデロたちによるドロップアイテムの争奪戦が行われていた。

「三人とも、セクトたちと一緒に無様に死にたいのか?」

「「「ひっ……!」」」

 カルバネに凄まれ、アデロたちは身を寄せ合って震えた。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

処理中です...