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37話
しおりを挟むお、ようやく注文するのが決まったらしく、仮面の人――カエデちゃんがボタンを押した! いよいよ何かのモンスターが登場するはずだ。んで、それを【死神】っていうレアスキルで倒して料理をいただくつもりなんだろうね。
……まさかの放置で自爆テロっていう可能性もあるけど、それは考えたくない。
ちなみに例の人影はというと、未だに動く気配がなかった。モンスターが来たあとでなんらかの行動に出るのかもしれない。
もうそろそろ、リサとミリルが来ないかなと思ってたら、タイミングよくやって来た。リサがミリルの背中に乗ってて可愛さ倍増だ。
「シー……静かにね、リサ、ミリル。これからテロ事件が起きるかもだから、僕が何か指示するまで大人しくしててね」
「う、うん。坊や」
「クーン……」
僕が小声でそう発すると、リサもミリルも同じように囁くような声で返してきた。本当に物分かりがいい。役者も揃ったってことでセーブしておく。
イベントボードに流れたコメントを見ると、『犬相手にかくれんぼは無謀すぎ』だの『リサたんも偉い!』だの『ボキュだけの天使ウルフヘア―ちゃんはいずこ!?』だの、なんとも平和なコメントばかりで、異変にはまだ気づいてない様子。ここまでは僕の思う通りだ。
「――あっ……」
遂に来た! あ、あれは……本物のミノタウロスだ……と思ったら、人影が颯爽とカエデちゃんに接近して、すぐに元居た場所に戻っていく。一体何をしたんだ……?
『ブモオオオオオオォォッ!』
4メートル近くある巨体のモンスターが、それと同じくらい大きなハンマーを振り上げたっていうのに、すぐ傍にいるカエデちゃんは座ったままだった。
そうか……この時点で既に何かされてたんだね。僕はそのあとの惨劇を見たくないのでロードすることに。
ってか、ミノタウロスが出た瞬間、イベントボードに『現在、SSRスキルが獲得できる状態です――』って表示されてたような? 今はそれどころじゃないからあとで確認してみるか。
とにかく、これで誰が悪いのかはっきりした。仮面の人――カエデちゃんはシロで、人影がクロだったんだ。
「ミリル。これから何かモンスターが出現した時点で、あの人影のほうに行って《咆哮》を使って」
「きゃうん!」
「リサはミリルが吠えたら、あの人影に抱き付いて、見えなくなる系のスキルを吸い取るんだ」
「うん!」
まもなく、ミノタウロスが出現したのでミリルが人影に駆け寄って《咆哮》すると、リサが間髪入れず抱き付いた。これでミリルから2メートル以内の味方以外は身動きが取れなくなる。
「ぬぁっ……!?」
人影のほうから素っ頓狂な声がしたかと思ったら、その姿がはっきり見えてきた。よし、狙い通り隠れる系のスキルを吸い取ったんだ。って、あいつは……支部で何度か見かけた挙動不審な男だ。
ミノタウロスのほうは、Aランクハンターのカエデちゃんに任せておけばいいだろうってことで、僕は元人影のスキルボードを改めて調べるために【開眼】スキルを使用する。
名前:板城十史郎《いたきとおしろう》
ハンターランク:D★★
所持スキル:(1)
SRスキル【催眠】
称号《テロリスト》
やっぱりこの男か……。称号っていうのは、自身が普段どういう風に他人に思われているかだけでなく、自分の行動によっても変化するんだ。《仕置き人》のサツキや《ストーカー》の百々山三郎なんかもその類だろうね。
さて、この男からどんなスキルを《吸収》したのか、リサのほうも調べてみよう。もちろん、【フェイク】で弄ってない本物のステータスを。
名前:リトルサキュバス
モンスターランク:B
特殊能力:(2)
《吸収》《透明》
なるほど……。この【透明】スキルで、テロ犯は体も情報も透明化してたってわけか……って、また大事な何かを忘れてると思ったら、そうだ。スキルのことだ。
ログを辿っていくと、『――獲得条件は、ミノタウロスを自滅させることです』というメッセージが残されていた。モンスターが墓穴を掘るような格好にすればいいのかな。どうやればいいんだろう?
『ブモオオオオオォォッ!』
「ちょ、ちょっと! ミノタウロス氏っ! どどっ、どうかやめてくださいであります! 怖いのでありますぅうう!」
「ありゃ……」
気が付くと、カエデちゃんがミノタウロスから逃げ回っていた。あれれ? 彼女って確か、Aランクハンター……なんだよね?
でもよく考えるとダブルスーパーレアの【死神】スキル持ちとはいえ、いつ発動するかは運次第だし、それに頼り切ってあとは逃げ回るスタイルなのか。
「こっち!」
「ふわっ!?」
受付嬢が本来カウンターにいるべきであろう時間帯に別の仕事をしてることが判明した場合、なんらかの厳しい罰則があるはず。
このままじゃカエデちゃん=仮面の人って視聴者にバレちゃいそうなので、《テロリスト》の板城はリサとミリルに任せるとして、僕はカエデちゃんを素早くテーブルの下に隠すと、獲物を見失って困惑してる様子のミノタウロスの前に躍り出た。
「……うあ……」
で、でかい……。さすが、A級モンスター。こうして実際に近くで正対するとその大きさもそうなんだけど、それ自体が持っているオーラのようなものに圧倒されそうになる。
とはいえ、元小ボスのリサとユニークモンスターのミリルを味方にしている僕にとっては、すぐにその威圧感に馴染むことができた。
『ブモオオオオオォッ!』
「くっ……!?」
【神速】スキルがあるんだから、ハンマーなんて当たるわけがない――って思うんだけど、これが意外とバカにならない。
なんせ、図体がでかいだけじゃなくてスピードもかなりあって、さらにハンマーが振り下ろされるたびに物凄い振動が起こるのでバランスを崩しそうになり、それがなんとも厄介すぎた。
あと、倒すだけなら範囲も1メートルから2メートルに伸びた【殲滅】スキルがあるから楽なんだけど、SSRスキルを獲得したいからそういうわけにもいかない。
自滅させるにはどうしたら……って、そうだ! もうこっちはかわすだけでそれ以外は何もしなくていいんだ。何故なら、カエデちゃんによって【死神】スキルが既に使用されているはずだから。
というわけで、僕はそれから5秒ほどミノタウロスの猛攻から逃げ続けた結果、予期せぬことが起きた。やつがハンマーを振り上げた際、すっぽ抜けたのか手放してしまったんだ。まもなく落下してきた大きな鉄の塊が、ぽかんとするミノタウロスの脳天に直撃した。
お……倒れてピクリとも動かなくなったかと思うと、跡形もなく消滅していき、勝手に自滅したってことでスキルボックスが落ちた! よし、きたーっ! この瞬間、癖になりそうだけど、周囲の人に見られないようにすぐ拾って開封する。
『SSRスキル【大食漢】を獲得しました』
ははっ、いかにも『死霊のレストラン』ダンジョンっぽいスキルだ。効果はどうなんだろう?
『もっと食べたいと願う分だけ消化能力が高くなり、いくらでも食べられる。胃もたれや胸やけすることも太りやすくなることも絶対にない。また、SRスキル【体力上昇・大】と同等の効果があり、さらにスキル枠が一つ上昇する』
おおぉ、こりゃいい。大好物の唐揚げとかステーキとか食べると結構胃もたれするほうだったし、苦い上に割りと高価な胃薬を飲まなくてもよくなるのは助かる。
おまけにスタミナまで格段に上がって、獲得できるスキル枠も一つ上昇とか、地味な効果だけど大助かりだし、さすがSSRなだけあるね。この勢いでスキルを取っていけばいずれ二十個超えちゃいそうだし、これは地味に大きいと思う。
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