外れスキル【転送】が最強だった件

名無し

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第四十話 適役

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「わーん! 狭いし暗いし怖いのだー!」

 とある実験のためにエリンを鍵付きの箱に閉じ込めたわけだが、やたらと暴れてうるさいしこのままだと箱が壊れかねない。彼女の心は子供でも体は大人な上、最高の戦闘民族なせいか力が強いんだ。

「ひっく……早くここからエリンを出すのだ!」
「エリン、頼むよ。大事な実験なんだからもう少しの間我慢してくれ」
「い、嫌なのだっ。たとえマスターのお願いでも、無理なものは無理なのだ。エリンは……エリンは辛いのだあぁぁっ! 早くここからエリンを出さないと恨むのだっ……! 呪呪呪ッ……邪邪邪ッ……」

 ったく……。エリンが妙な呪文まで唱え始めたので俺はルザークに目配せした。ニヤリと笑われたのでもちろん目を背ける。不本意ながら、こういうときはやつが一番頼りになるからな。

「おい、我慢しろエリン! じゃなきゃよ……ここに短剣をぶっ刺して悲劇のマジックショーやっちまうぞオイコラッ!」
「ひっ……」

 箱を揺らして威嚇するルザーク。さすが、根っからの悪党なだけあって凄い迫力だ……。

「ぐすっ……許してなのだ。エリンがぜーんぶ悪かったのだっ……」

 ふう。ようやく大人しくなってくれた。たまに俺もルザークの真似をしてエリンを虐待……いや、威嚇してみることがあるんだがあんまり効かないんだよな。なんでだろ? 俺がマゾ体質なのが影響してるのかもな。とにかくこれで実験の続きができる。

「よし、エリン。次は【空気】スキルを使ってくれ」
「わ、わかったのだっ」

 このままだと持ち上げるのが困難だからな。箱だけでもかなりの重さなんだ。まもなく箱から魔法陣の光が漏れだすのがわかる。

「さあ、みんなで持ち上げよう」

 ギルドメンバーはみんな不思議そうな顔だったものの、何も聞かないで持ち上げてくれた。エリン以外は大体空気を読んでくれる傾向にあるからありがたい。こういうのは口で説明するより実際にやって示したほうがよく理解できるはずなんだ。

「これでよし。箱を下ろして解散!」

 俺の言葉でみんな呆然としてる。まあこれじゃ一体なんの実験だったのか意味不明だろうしな。

「……お、終わったのだ……?」
「ああ。誰か蓋を開けてやってくれ」
「はーい、私が開けますね!」

 ミケが鍵を外して蓋を開けると、エリンがすっかりやつれた表情で箱から顔を出してきた。普段生意気なことばかり言うとはいえ、正直見ていて気の毒になるレベルだ。

「ププッ……」

 エリンの顔を見てカトリーヌが噴き出している。

「笑うな、カトリーヌ! プンスカッ」
「ご、ごめんなさい……ププッ……」
「……失礼なのだ! アホッ、バカッ、マヌケッ……に、睨まないでほしいのだ。今の台詞はジョークなのだあ。ところでケイス、エリンに何か言うことがあるはずだぞっ」
「……ん? なんの実験かはまだ言えな――」
「――それも知りたいのだが、その前にエリンにやることがあるはずだぞ?」
「へ?」

 俺がエリンにやることなんてほかにあったっけ?

「まず、ありがとうという言葉と謝礼金、慰めの愛の言葉が最低限必要なのだっ」
「……」

 あー、イラッときた。ホムニ族って本当に現金な種族なんだなあ。

「おいおい、うちのマスターに向かってなんてこと言うんだ、エリン。いらねーんだよ、そんなのよ!」
「ひっ!」

 ルザークがエリンの頬を短剣の腹でビンタしている。

「やめてとめてやめてとめてぇっ! エリンが悪かったのだ! 怖いのだああぁ!」

 泣き叫んでるが、彼女はどんなお仕置きをされてもすぐ忘れて調子に乗る鳥頭だし別にいいだろう。戦闘向きの民族でもあるしな。

「とにかくエリン、もう終わったんだしそこから出ていいぞ?」
「……な、なんか嫌な予感がするのだ。しばらくここにいるのだ……」
「エリン、お前なあ……」

 そうか、勘も鋭いらしい。

「おい、マスターが出ろって言ってんだからとっとと出ろや! 死にてえのか!」
「わ、わかったのだぁっ!」

 笑顔で箱から飛び出すエリン。我儘なこの子を操縦するためにも、もうルザークは手放せないな。もちろん距離は置かせてもらうが。

「よし、それじゃ一つに集まってくれ」
「おう」
「はい」
「はーい!」
「わかったのだ!」
「いや、エリンは来なくていい」
「うぇっ?」

 指を咥えてぽつんと一人で立つエリン。可哀想だが割と可愛いと思ってしまった。

「ルザーク、アレを頼む」
「あ……そういうことかよ」

 ルザークは気付いたようだがそれ以上何も言わなかった。それでいいんだ。ラストが近いっていうのにここでネタバレはしたくないからな。

「エリン、もう一度【空気】を使ってくれ」
「……むむっ? わ、わかったのだ!」

 これで実験は終わる。エリンの姿が消えたかと思うとルザークの【回収】スキルが発動し、さっきの箱が俺たちの目前に移動してそれをみんなで持つ格好になる。

「よし、箱を床に置いてくれ!」

 ……もうそろそろいいだろう。再度箱を持ち上げようとすると、明らかに重さが変わっていた。

 これは【回収】スキルによって、箱だけじゃなくて中身までルザークの手元に戻されたことを意味している。このスキルでは人間を直接回収できないが、箱を通じればそれができるため、ダンジョンに一人で行く予定の囮役のエリンをいつでもルザークの元へ戻せるってことなんだ。

 しかも彼女は事前に【空気】スキルが使えるので重量も軽減できて都合がいい……って、あれ? 反応がないと思ってみんなで箱を開けてみたら、エリンは白目を剥いて気絶していた。どうやら暗くて狭い場所は相当に苦手らしい。

「あのっ……ケイスさん、よければ私がやります!」
「……」

 ミケ、何かずっと言いたそうにしてると思ったら自分がエリンの代わりにやりたかったんだな。そういや、押し入れで寝るのが好きだったか……。
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