83 / 87
83.扉
少し休ませたあと、俺はソムニアを【逆転】スキルで目覚めさせた。早く話を聞きたいというのもあったし、それ以上に村を襲撃した王国側に対してリベンジしたいという気持ちがあったからだ。利用された彼女も一緒に……。
「ふわあ……あ、目が覚めちゃったんだ。ずっと眠っていられたらよかったのに……」
「グルルァ……ソムニアとやら、お前は兄のためとはいえ、世界を救った英雄オルドを殺そうとしたのであるぞ? 悲しみに浸る前に自分の過ちについてはどう思うのであるか……?」
「ウミュァッ! そうですよ。そんなことしても、自分の命を犠牲にしてまで妹を救おうとした優しいお兄さんが喜ぶなんて思えません……」
「……ごめんなさい……」
『ソムニア、謝ルナ。コレガ狂戦士ノ宿命ナノダカラ……』
「もう、ブラックスったら……」
「……」
ブラックスっていうのか、この斧。生意気にも名前がついてるんだな。
あ、もしかして……これって、最初に狂戦士になった者が魂を宿らせるほど血を吸わせたっていう伝説の武器ブラッドアックスの略か? 確か、魂が宿った時点で狂戦士の中でも最も強い者を自ら選ぶそうで、代々狂戦士の一族の得物として受け継がれているらしい。
「グルルァ……失礼な斧だ」
「ウミュァ……失礼ですよ」
「まあまあ、フェリル、クオン。お前たちの気持ちはありがたいがな、こうして無事だったんだし許してやろうじゃないか。一番悪いのは王国側なんだ。ソムニアもそれはわかるよな?」
「うん……。許せないよ。でも、どうして今まで気付けなかったんだろう……」
「その件だが、多分記憶を消されたんじゃないかな。ダラスって子もそれでずっと記憶に穴が開いてた状態だったんだ。俺に塞いでもらうまではな」
「そうなんだ。オルドさんって、本当になんでもできちゃうんだね」
「グルルァ、そりゃオルドは最高の賢者であるからな」
「とんでもなく凄いんですよ、オルド様は。ウミュァ」
「へえー……」
うーむ、これだけ褒められるとどうにも調子が狂うな。嫌がらせに体が慣れ過ぎて対応できない……。
「照れ臭くて顔から火が出そうだから、誰か扇いでくれ」
『任セロ――』
「――いや、絶対殺す気だろ!」
『バレタカ……』
「ふふっ……それにしても、途中までオルドさんは孤立気味なのかなって思ってたけど、違ったんだね」
「ああ、あれは演技だからな」
「そうなんだ」
「うむ」
「ウミュッ」
他愛のない会話だが、これで少しはソムニアたちと打ち解けたような気がする。
「そういえば、兵士に捕まったときお兄ちゃんも言ってた。暴れたってことにされたけど、まったく覚えがないって」
「これで大体読めてきたな。記憶を消去して、やってないことまででっちあげたわけだ」
「うん。やっぱりお兄ちゃん、何も悪いことなんてしてなかったんだ。よかった……」
ソムニアは、それから自ら進んで今までのことを俺たちに話してくれた。
彼女の先祖は狂戦士として成り上がった貴族の男だったそうだ。元々王国側が魔族を殲滅するために強者を募集し、その中でも一瞬でライバルたちを全員倒してしまったというから異次元の強さだったことが窺える。しかし一度暴れ出すと周囲に及ぼす被害が大きいことに加え、勇者パーティーが誕生したことも重なって存在意義がなくなり、あっという間に没落してしまったとのこと。
それから狂戦士というだけで人々から恐れられ、隠れるように山の中で暮らし始めて、主に狩りで生計を立てていたのだそうだ。しかし平和も長くは続かず、父親が病で亡くなり兄妹で暮らしていたところを兵士たちに連行されたというわけだった。まさに王国に翻弄されてきた一族といっていいだろう。
「ソムニア、俺にいい考えがある」
「……ほぇ?」
「俺に協力してくれるなら、お前を生き返らせたように兄を蘇生してやってもいい」
「え……ええっ!?」
「今まで散々、俺やソムニアを都合のいいことに利用してきた王国にやり返してやるんだ」
「もちろん協力するけど、王様も殺しちゃうの?」
「それはあとからのお楽しみってことで」
「えー」
『ククク……早ク血ガ見タイモノダ……』
ブラックスは流血開城を望んでるらしい。
とにかくこれでやっとあの愚王にやり返せる。王家や貴族が全員悪いやつらだとは思わないが、人を理不尽に殺しても平民と比べて罪が軽いなんてのは日常茶飯事だった。それには飽き足らず、世界を救った俺でさえ平民として同じような仕打ちをすれば、どんなことになるのかそろそろ思い知らせてやらねばなるまい……。
あなたにおすすめの小説
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
無能はいらないと追放された俺、配信始めました。神の使徒に覚醒し最強になったのでダンジョン配信で超人気配信者に!王女様も信者になってるようです
やのもと しん
ファンタジー
「カイリ、今日からもう来なくていいから」
ある日突然パーティーから追放された俺――カイリは途方に暮れていた。日本から異世界に転移させられて一年。追放された回数はもう五回になる。
あてもなく歩いていると、追放してきたパーティーのメンバーだった女の子、アリシアが付いて行きたいと申し出てきた。
元々パーティーに不満を持っていたアリシアと共に宿に泊まるも、積極的に誘惑してきて……
更に宿から出ると姿を隠した少女と出会い、その子も一緒に行動することに。元王女様で今は国に追われる身になった、ナナを助けようとカイリ達は追手から逃げる。
追いつめられたところでカイリの中にある「神の使徒」の力が覚醒――無能力から世界最強に!
「――わたし、あなたに運命を感じました!」
ナナが再び王女の座に返り咲くため、カイリは冒険者として名を上げる。「厄災」と呼ばれる魔物も、王国の兵士も、カイリを追放したパーティーも全員相手になりません
※他サイトでも投稿しています
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。