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86.馴染み
「あ、オルドしゃま、フェリルしゃま、クオンしゃま、ご注文をどうぞぉー」
「おう、マチ。コーヒーといつものアレ、頼むよ」
「我もアレを頼むである」
「クオンもアレにします」
「はぁーい! いつものアレー!」
俺たちは席について一息つく。今日もいい天気だなあ。最近、起きたらこうして被追放者村のカフェに入ることが多い。というのも、特製のアレが凄く美味な上、独特な味わいで癖になるからだ。
「――どうぞ」
お、来た来た。エプロンを着た店員のティアルテがトレイに載せて運んできた料理は、ここでしか味わえない絶品のオムレツだった。見た目は髑髏の形で不気味だが、味は……って、あれ? 赤いソースで描かれた目の部分がハートマークになってる……。
「で、ではごゆっくりっ……!」
「……」
ティアルテが猛然と店の奥まで走っていく。どうしちゃったんだ、ありゃ……。
「うふふ……オルドしゃま、モテモテー!」
「え? な、何言ってるんだよ、マチ」
「ティアルテしゃんはね、ここで働き始めた頃は頬杖ついて溜息ばかりで、目は虚ろで遠くを見てる感じで……心はここにあらずって感じったのに、最近はウキウキで鼻歌交じりなにょー」
「なるほど、ティアルテは誰かに惚れたんだろうな?」
「もぉー、オルドしゃまはすぐそうやってはぐらかすんだからぁ……」
「……」
さすがに、惚れられるようなことは何もしてないわけだしなあ。彼女をここで働かせるように頼みはしたが。まさか、あいつが慕ってたジルベルトってやつに性格が似てるとか? まあ王に対して反逆するところなんかは似てるかもしれないけどな……。
「オルドしゃまが困ってりゅなら、もう言い寄られないようにマチと結婚しゅるぅ?」
「おいおい――」
「――ちょっと待ったあっ!」
「お待ちを、ベイベー!」
そこに慌ただしくやってきたのは、ライレルとその付き人のようにセット化してるガリクだった。
「オルド様のお嫁さんになるのは僕だからっ!」
「ライレル様はあるじの愛人じゃ?」
「ガリクは黙ってて!」
「あひっ……!」
ライレルにぶたれてくるくると回転するガリクに、カフェの客から笑い声が上がる。
「ねえ、オルド様。いいでしょ? 僕、精一杯尽くすから……」
「そ、そう言われてもな……」
「男の喜びそうなことは、僕ならなーんでもできちゃうし……」
「なるほど……」
そこが強みってわけだな……って、俺何納得しちゃってるんだか。
「私も参加しますっ……!」
「あ……」
誰かと思ったらメアリーだった。てか客の中に紛れてたんだな。彼女は存在感が普通すぎて気が付かなかった。そこが彼女のいいところでもあるんだが。
「私のお婿さんになれば、道具がいつでも使い放題ですよ……!」
「そりゃいいな」
「もちろん夜の道具屋にだって入れます。私を道具として使ってもいいわけなんです……」
「あはは……」
そういやメアリーは俺の奴隷になるとか言ってたっけ。そんなのすっかり忘れてたな。
「グルルァ……オルドよ、モテモテであるな」
「モテモテですね、オルド様。ウミュァアッ」
「……そ、それより、俺のオムレツ分けてあげようか?」
「「わあっ!」」
フェリルとクオンは嫉妬深いが割と扱いやすいから楽ではある。
「やれやれ、若いもんはいいのぉ……」
「ユ、ユリウス様まで……」
まさか大司教までカフェにいるなんてな。まさに神出鬼没だ。その前の席は誰も座ってないのにやたらと存在感があるのは、おそらく気のせいではないんだろう。なるほど、例の亡くなったシスターとデートってわけか。
「美味しい! お兄ちゃんも見てないで食べればいいのにー」
「俺はいいよ。こうしてソムニアが元気なところを眺めてるだけで幸せだ」
「もぉっ……」
弾けるような声がした方向には、美味しそうにオムレツを食べるソムニアとそれを優しい眼差しで見守る兄、ヴァイドの姿があった。当然のようにあの喋る斧も一緒にいて近くの客から注目を浴びている。
「ブラックス、このソース美味しいから少し食べてみてっ」
『ムムッ……? アマリ美味シクナイナ……』
「そう言いつつ食べちゃってるし―」
『食ワズ嫌イハイカン……』
「……」
そういや、このオムレツにかかってる赤いソースって、若干鉄臭い感じの独特な味も混じってるんだが……まさかな。
「父さん、母さん、どう!?」
「……う、旨い」
「あら、美味しいわねぇ……」
ダラスが両親と仲睦まじく会話しながら食事している。あれから、捜しに来た両親と一緒にこの村で暮らし始めたらしい。よかったよかった……。
それにしても魔界にいるあいつらが懐かしくなる。元気にやってるだろうか? とはいえ、別々の道を歩むと向こうが決めた以上、いい加減こっちも割り切らないとな。
「――さあっ、今から人生の【逆転】クジを始めるぞっ!」
食事のあと、村人で溢れ返った広場でそう宣言した俺に対し、大歓声が沸き起こった……。
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