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一話
「おい、優斗、おいらがお前の鞄をチェックしてやるぜえ」
「いきなり検査かよ……」
「なんか言ったかあ?」
「な、なんでもない」
2年1組の教室に着いて早々、不良グループの一人、金髪の近藤孝彦に鞄の中身を探られる。クソ、最近そういうのはなかったから油断してた。力こそ正義だし、逆らっても無駄なのはわかってる。
俺の名前は如月優斗。17歳の高校生だが、昔から癖が強いせいかクラスじゃ浮いてしまい、いじめられている。
「お、なんだよ、これってもしかして小説の原稿かあ? 未だに紙に直接書いてるとか、昭和かよおっ!」
「う……」
俺の書いた小説を取り出した近藤が、ウキウキで声を張り上げたもんだから、周りからなんだなんだと人が集まってくる。
「これは一体、どういうことでしょうか、如月君」
インタビュー形式にしたいのか、生徒の一人がペンをマイクに見立てて近付けてきた。
「…………」
どうしよう。どうせ暴力で白状させられるし、ここは堂々と言ってのけるのはどうだろうか? そうすれば、陽キャ扱いされて俺はいじめられなくなるかもしれない。そうだ、心のうちではよく漫才師のように突っ込んでいたし、それを体現してみせればいいんだ。
「……ハッハッハ。今の時代には合わないかもだがなあ、やっぱり小説は紙だと俺は思うんだよ。そうだろう? 見た目も手触りも最高だしなっ……」
「「「「「……」」」」」
なんともジメッとした嫌な視線を感じた。誰もが俺の処刑を期待するような目をしている。だが、中途半端はいけない。もっと攻めろ、俺。
「あとなあ、不良っていうのは、俺が思うに、もっとこう、工夫したほうがいいんじゃないか? 絡んでくるタイミングとか、目線とか。今のままだと、なんともイモっぽいというか、全然洗練されていないし……」
ん、失笑が上がっているし、面白いやつだと思われたかもしれない。いいぞ、この調子だ――
「――わー、凄いじゃない。如月君って小説書けるんだあ」
「…………」
その一言で流れが変わってしまった。
暗澹とした気持ちになるのも当然で、声をかけてきたのは不良グループの一人、浅井六花だったからだ。顔はいいほうだし、表向きはいつも笑顔の優等生だが、その本性はとても残虐な女子高生なんだ。
「ねえ、これって陰キャさんが好むラノベっていうんでしょ。ざっと見た感じ、超くだらないし燃やしてもいい?」
「え、そんな。それだけはやめてほしいんだが」
「いいなあ! 浅井、いいこと言うじゃねえかあ。早速やろうぜえっ!」
「ぐっ!?」
俺は近藤に羽交い絞めにされ、浅井が目の前でライターを取り出し小説に火をつける。
「ファイヤー!」
「あ……ああああああぁぁぁっ!」
「「「「「ギャハハッ!」」」」」
も、燃えている……俺の夢が詰まった小説が……笑い声の中でどんどん灰になっていく。中学1年生のときから、コツコツと休み時間に書き溜めていたもので、もうすぐ公募に出す予定だったのに……。
「う、うう……」
ほとんど灰と化した原稿を拾う俺の肩を、近藤が笑いながらポンポンと叩く。
「ププッ……いいじゃねえか、泣くなよ、優斗。お前のクソくだらねえ小説なんて、燃えたほうがむしろ環境にいいんだって」
「ちく、しょう……」
「あぁ? おいらになんか文句あんのかよお!?」
「い、いえ……」
近藤が自慢のナイフを見せつけてきたのでたじろぐ。こいつにはよく教科書や靴を盗まれ、このナイフでズタズタにされたもんだ。
「こら、お前たち、やかましいぞ、静まれ」
「「「「「ハーイ」」」」」
まもなく担任の教師が教室に入ってきた。反田憲明っていう、俺だけフルネーム呼びしていじめに加担するクソ教師だ。
「なんだ、如月優斗、またいじめくらいで泣いているのかね。まったく、湿っぽくてかなわんな。私の授業を通夜にするつもりか。んじゃ、授業を始める前に、こいつの葬式を済ませておくとしよう。合掌!」
「南無阿弥陀仏」
「くたばっちまえ」
「アーメン!」
「「「「「どっ……!」」」」」
「…………」
いつもの葬式ごっこが始まった。この程度のいじめ、いつもなら耐えられるのに、今日だけは途轍もなく苦しかった。小説を書くのは俺の生き甲斐だったんだ。なのに、全部燃やされた。
「……燃やし尽くして……やる……お前らを……いつの日……か……」
落書きまみれの机に突っ伏した俺が、呪いの言葉を呟いた直後だった。周囲が光ってざわめきが起こったかと思うと、どこからともなく少女の声が響いてきた。
『この学校の内部におられる人たちに重大なお話があります。私はあなた方を異世界へ召喚いたしました』
……な、なんだって……!? それってつまり、異世界転移ってことだよな? まるで俺の小説の内容みたいじゃないか……。
「いきなり検査かよ……」
「なんか言ったかあ?」
「な、なんでもない」
2年1組の教室に着いて早々、不良グループの一人、金髪の近藤孝彦に鞄の中身を探られる。クソ、最近そういうのはなかったから油断してた。力こそ正義だし、逆らっても無駄なのはわかってる。
俺の名前は如月優斗。17歳の高校生だが、昔から癖が強いせいかクラスじゃ浮いてしまい、いじめられている。
「お、なんだよ、これってもしかして小説の原稿かあ? 未だに紙に直接書いてるとか、昭和かよおっ!」
「う……」
俺の書いた小説を取り出した近藤が、ウキウキで声を張り上げたもんだから、周りからなんだなんだと人が集まってくる。
「これは一体、どういうことでしょうか、如月君」
インタビュー形式にしたいのか、生徒の一人がペンをマイクに見立てて近付けてきた。
「…………」
どうしよう。どうせ暴力で白状させられるし、ここは堂々と言ってのけるのはどうだろうか? そうすれば、陽キャ扱いされて俺はいじめられなくなるかもしれない。そうだ、心のうちではよく漫才師のように突っ込んでいたし、それを体現してみせればいいんだ。
「……ハッハッハ。今の時代には合わないかもだがなあ、やっぱり小説は紙だと俺は思うんだよ。そうだろう? 見た目も手触りも最高だしなっ……」
「「「「「……」」」」」
なんともジメッとした嫌な視線を感じた。誰もが俺の処刑を期待するような目をしている。だが、中途半端はいけない。もっと攻めろ、俺。
「あとなあ、不良っていうのは、俺が思うに、もっとこう、工夫したほうがいいんじゃないか? 絡んでくるタイミングとか、目線とか。今のままだと、なんともイモっぽいというか、全然洗練されていないし……」
ん、失笑が上がっているし、面白いやつだと思われたかもしれない。いいぞ、この調子だ――
「――わー、凄いじゃない。如月君って小説書けるんだあ」
「…………」
その一言で流れが変わってしまった。
暗澹とした気持ちになるのも当然で、声をかけてきたのは不良グループの一人、浅井六花だったからだ。顔はいいほうだし、表向きはいつも笑顔の優等生だが、その本性はとても残虐な女子高生なんだ。
「ねえ、これって陰キャさんが好むラノベっていうんでしょ。ざっと見た感じ、超くだらないし燃やしてもいい?」
「え、そんな。それだけはやめてほしいんだが」
「いいなあ! 浅井、いいこと言うじゃねえかあ。早速やろうぜえっ!」
「ぐっ!?」
俺は近藤に羽交い絞めにされ、浅井が目の前でライターを取り出し小説に火をつける。
「ファイヤー!」
「あ……ああああああぁぁぁっ!」
「「「「「ギャハハッ!」」」」」
も、燃えている……俺の夢が詰まった小説が……笑い声の中でどんどん灰になっていく。中学1年生のときから、コツコツと休み時間に書き溜めていたもので、もうすぐ公募に出す予定だったのに……。
「う、うう……」
ほとんど灰と化した原稿を拾う俺の肩を、近藤が笑いながらポンポンと叩く。
「ププッ……いいじゃねえか、泣くなよ、優斗。お前のクソくだらねえ小説なんて、燃えたほうがむしろ環境にいいんだって」
「ちく、しょう……」
「あぁ? おいらになんか文句あんのかよお!?」
「い、いえ……」
近藤が自慢のナイフを見せつけてきたのでたじろぐ。こいつにはよく教科書や靴を盗まれ、このナイフでズタズタにされたもんだ。
「こら、お前たち、やかましいぞ、静まれ」
「「「「「ハーイ」」」」」
まもなく担任の教師が教室に入ってきた。反田憲明っていう、俺だけフルネーム呼びしていじめに加担するクソ教師だ。
「なんだ、如月優斗、またいじめくらいで泣いているのかね。まったく、湿っぽくてかなわんな。私の授業を通夜にするつもりか。んじゃ、授業を始める前に、こいつの葬式を済ませておくとしよう。合掌!」
「南無阿弥陀仏」
「くたばっちまえ」
「アーメン!」
「「「「「どっ……!」」」」」
「…………」
いつもの葬式ごっこが始まった。この程度のいじめ、いつもなら耐えられるのに、今日だけは途轍もなく苦しかった。小説を書くのは俺の生き甲斐だったんだ。なのに、全部燃やされた。
「……燃やし尽くして……やる……お前らを……いつの日……か……」
落書きまみれの机に突っ伏した俺が、呪いの言葉を呟いた直後だった。周囲が光ってざわめきが起こったかと思うと、どこからともなく少女の声が響いてきた。
『この学校の内部におられる人たちに重大なお話があります。私はあなた方を異世界へ召喚いたしました』
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