A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

文字の大きさ
6 / 37

6話 規格外

しおりを挟む

『『『『『グガアアァッ……!』』』』』

 ウォルテム山の山腹へ向かう途中、俺たちに襲いかかってきたワーウルフの群れを、剣士グロリアが物凄い勢いでなぎ倒していく。

「凄いっ、凄いぞっ!」

 グロリアが感動した様子で叫ぶのを見てもわかるように、彼女の動きはそれまでとは別次元だった。

 俺のアドバイスのおかげもあるかもしれないが、ワドルの最適化された支援を受けた影響のほうが大きいはずだ。

『ガッ!?』

『ゴッ!』

『ゲッ!?』

「うぉおっ! やべえ、はかどるっ! はかどるぜえっ!」

 狩人のガムランの弓矢もテンポよく放たれ、そのたびにワーウルフの額に面白いように命中していった。

 正直、俺も驚いている。まさか、ここまで劇的に変化するとは……。前のパーティーでは渋々聞いてくれることはあったが、変化速度は緩やかだった。これは助言を積極的に求めてくる姿勢と決して無関係じゃないだろう。

「いやぁ、モンドさん、あなたのおかげで僕たちは最高の気分で戦えますよ!」

「い、いや、俺の助力なんて微細なもんだよ。ほとんどはグロリアたちの力だから……」

 興奮した様子で白魔導士のワドルが声を弾ませている。

 彼もそうだが、グロリアもガムランも凄く楽しそうに戦ってるので、見ていてつい口元が緩んでしまう。

 蓋を開けてみたら、怖いくらい良いパーティーだった……って、追放されたばかりだっていうのに俺も単純なやつだな。

 こんな優良パーティーがどうしてG級まで落ちたのかが不可解すぎるし、もう少し見極めないと。完全に信用するのはそれからでも遅くない……。

 お、モンスターが俺の近くに複数、同時に発生する気配がする。よーし、俺もはりきってやってみるか。

『『『オオンッ!』』』

 まもなく三匹のワーウルフが周囲に現れると、立て続けに飛び掛かってきた。凄い跳躍力だ。

「「「モンドッ!?」」」

「大丈夫だ」

 俺は地魔法で周囲の木々の枝を一斉に伸ばし始める。

『『『グゲッ!?』』』

 まもなく、三匹のワーウルフが魔法の枝で頭を強打し、仲良く落ちてきたところで、氷魔法で地面に作っておいた氷柱によって串刺しになった。

 ワドルのおかげで魔力が向上してるから、俺にしては少々派手な倒し方を披露することができたってわけだ。

 それにしても、なんかお腹が空いてきたな。串刺しを見たせいもあるだろうが、気付けば日が暮れ始めてるし、当然か……。

「「「「――ワハハッ!」」」」

 俺たちは木々を切り倒して開けた場所を作り、そこでテントを張ってからみんなと火を囲んで夕食を取ることにした。

 ちなみにこのテント、見た目は小さいが中は広いという魔道具だから、仮に外からモンスターに襲われてもワンテンポ間を置けるので安心なんだ。

「うぃー……モンド、貴様の戦い方はいくらなんでも凄すぎだ!」

「まったくだぜ……おえっぷ……モンドなら、ソロでも充分やれるんじゃねえの?」

「正直、モンドさんのような人が襲ってきたらと思うとゾッとしますよ……」

「いやいや、みんなも凄かったし……」

 周囲はすっかり暗くなったが、薪が照らし出すグロリアたちの顔は赤く染まっていて、機嫌が良さそうな表情も相俟って一際明るさを放っていた。

 酒が少々入ってるとはいえ、ソロでやれるだなんていくらなんでも褒めすぎだ。正直、考えたこともなかった。

 お前の魔力は最低だ、ゴミだ、カスだ――周りからそんなことばかり言われてきた黒魔導士が、たった一人でやろうなんて思うはずもない。

 今こうして褒められているのは、自分の魔力が極小な分、どうすればパーティーで役に立てるか極限まで考えてきた成果なのかもしれないな。

「なあ、グロリア……」

「ん、なんだ、ガムラン? 酒ならもうないぞ? 私がぜーんぶ飲んでしまったからな。ハハハッ!」

「いや、ちげーよ! この依頼が終わったらよ、モンドを正式なメンバーとしてパーティーに迎え入れるってのはどうだ?」

「え……」

 ガムランがとんでもないことを切り出した。正式なメンバーって……。いや、そりゃみんないい人だし嬉しいんだが、まだ心の準備が……。

「……そ、それは……ダ、ダメだ!」

「……」

 リーダーのグロリアは、若干間があったがしっかり否定してきた。まあそりゃそうだろう。俺みたいな素性のわからないやつをいきなり正式メンバーに加えるのはためらうはずだ。

「というわけだ、私はもう寝る! 貴様ら、おやすみ!」

 グロリアが地べたで大の字になったかと思うと、すぐにいびきをかき始めた。

 え、もう寝ちゃったのか。しかもテントにも入らずにこんな場所で。ヤバすぎるくらい豪快な人だな……。

「本当は、リーダーが一番モンドさんを加入させたいんだと思いますよ」

「え……?」

 ワドルが意外なことをさらっと言ってのける。

「俺もワドルに同意だ。グロリアのやつ、明らかにモンドを気に入ってるくせに、相変わらず素直じゃねえなあ」

「ガムランまで……。なんで二人とも、そんなことがわかる……?」

「ちらちらとモンドさんのほうに熱い視線を向けてたんですよ、リーダーは」

「そうそう。こいつは強いやつが大好きだからな。それでモンドに興味津々なんだ」

「……で、でも、正式なパーティーに加えるつもりはないみたいだし、ただの誤解じゃ……?」

 俺の言葉に対し、ガムランとワドルがいかにも意味ありげに神妙な顔を見合わせた。何か深い理由でもありそうだな。

「どうする? ワドル、、話してもいいよな……?」

「まあいいんじゃないかと思いますよ。モンドさんには今まで色んなことをアドバイスしてもらって、有意義な時間を過ごさせてもらっているわけですから」

 そのあと、俺はガムランとワドルの二人から例の件について聞くことになるのだった……。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

処理中です...