A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

文字の大きさ
8 / 37

8話 石化状態

しおりを挟む

「ガムラン、ワドル、モンド、貴様らあぁ……おはようだっ!」

「おう、おはよう」

「おはようございます」

「おはよう」

 こうして、俺と【深紅の絆】パーティーは、軽く朝食を取ってからウォルテム山の中腹へ向けて歩き始めた。

 眠るのは交代制で、たまに発生するモンスターと交戦してたからあまり眠れなかったが、これは仕方ないことだ。

 前のパーティーだと、こういう野宿をする際はみんなが熟睡する中で決まって俺だけ見張り役を命じられてたから、それに比べたら天国とさえ感じた。

 徐々に周囲が明るくなってきた頃、視界も大分開けてきて中腹へ近くなったと感じるとともに、冒険者らしき者たちがいるのに気付いて俺たちは立ち止まる。

「うぬ……先客がいるとは」

「あーあ、先を越されちまったか……?」

「残念ですが、そうみたいですねえ」

「いや、待ってくれ、何か様子がおかしい」

「「「え……?」」」

「あいつらをよく見てくれ。まったく動いてない」

「「「あ……!」」」

 グロリアたちも俺の言葉を理解したらしい。彼らは一向に動く気配がないし、それが意味するのは麻痺か石化で、石化の息吹ペトロブレスを得意とするコカトリスが討伐対象だと考えたら自ずと答えは出る。

「――少々お待ちを……」

 白魔導士のワドルが、石になった冒険者たちの状態を確認している。石化といっても石像になるわけではなく、見た感じは普通なので遠くからだと止まってるだけに見えるんだ。

「石化してからそう時間は経ってないようです……」

「「「……」」」

 ワドルの発言によって緊張感が一気に高まっていく。どうやら、コカトリスはここからそう遠くない場所にいるようだ。

 そんなに時間は経ってないってことで、彼が石化した者たちにリカバリーをかけてみたら、次々と息を吹き返した。もうちょっと遅かったら息絶えてもおかしくなかったらしい。

 それでもかなり弱っていたが、ワドルがバフもかけておたのでそこら辺のモンスターから身を守りつつ帰還することは可能だろう。

「「「「「おかげで助かりましたっ!」」」」」

 彼らから大いに感謝されつつ、俺たちは慎重に進んでいくことに。ここまで来たらいつ現れてもおかしくない状況だから。

「――来る」

「「「え……!?」」」

 早速来た。みんなが驚くのも当然で、敵の姿も見えなければ気配だって感じないからだが、俺の戦闘勘が敵の襲来を知らせている。

「グロリア、ガムラン、ワドル、今すぐ臨戦態勢を!」

「よ、よし、わかった!」

「任せろ!」

「了解です!」

 グロリア、ガムランがそれぞれ剣と弓を構え、ワドルが杖を掲げて全体に補助魔法をかけたときだった。

『ピギャアアアアァァァッ!』

 けたたましい咆哮とともに、異様な風貌をした怪鳥が姿を現わす。あの巨大な鶏のような見た目はコカトリスで間違いない。

 やつはリーダーのグロリア目がけて急降下していく。こっちまで風が吹くほど物凄いスピードだ。

「はあああぁぁっ!」

『ピギイイイィィィッ!』

 グロリアが一歩も引かずに剣を振り下ろし、コカトリスの片翼が根本から断ち切られていく。とんでもない勇気と威力だが、翼はすぐに再生するとともに上空へ舞い上がっていった。

 さすがコカトリスだ。C級モンスターの中でもトップの強さを誇ると言われるだけある。しかもやつは固い上に魔法耐性もそこそこあるんだ。

「き、効かねえだと!?」

 ガムランが弓矢を次々と命中させるが、いずれも怪鳥が旋回中に浅く刺さった状態で、まもなく体内から押し出される格好で弾かれてしまった。

 コカトリスの体で唯一再生しない場所、それは固い鱗と筋肉と骨に守られた心臓であり、そこを狙って攻撃するには尋常じゃない正確さに加えてパワーが要求される。

 このパーティーではまだ荷が重いかもしれないし、俺がやるか。

「来い、鳥頭。お前の相手はこっちだ!」

『ギッ? ピッ……ピギイイイィィッ!』

 俺は掌状に生み出した氷の破片をコカトリスの眼球に命中させ、誘導する。その思惑通り、やつは甲高い叫び声を発しながら猛然と急降下してきた。

 わかる、わかるぞ、次にやつが取る行動は――

『――コオオォォォッ……』

 やはり、そうだ。空中で停止した怪鳥は、俺に向かってくちばしを大きく開け放った。ペトロブレスだ。

『ガッ……?』

 不気味な灰色の息を吐き出してからまもなく、コカトリスは地面に横たわり、そのまま動かなくなった。

「な、何が起こったのだ!?」

「ま、マジかよ! なんだ今の!?」

「い、一体、何がどうなったんですか……?」

 グロリアたちが、いずれも驚愕した様子で俺の元へ駆け寄ってきた。

「ああ、自爆したんだ」

「「「自爆……?」」」

「そうだ。光魔法によって生み出した光線をコカトリスの心臓に命中させてやったんだが、俺の魔力は低いからそれだけじゃ倒せない。でもやつは光線を石化させたから物理でも心臓にダメージを受けて致命傷になった」

 魔法によって発生した光は普通の光とは違うため、石化が適用される。なのでコカトリスは自分で自分の首を絞める格好になったわけだ。

「「「……」」」

 みんな唖然とした顔で、まるで石化したかのように微動だにしなくなったが、こういうことは普段からよくやっていたことだ。前のパーティーじゃ当たり前すぎたのか、空気のように扱われてたが……。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」  長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。  だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。  困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。  長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。  それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。  その活躍は、まさに万能!  死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。  一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。  大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。  その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。  かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。 目次 連載中 全21話 2021年2月17日 23:39 更新

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

処理中です...