A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

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30話 拠り所

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「それじゃ、話すね……」

「あぁ……」

 黒幕――パーティーの依頼を妨害していた犯人――の白魔導士メルルが、ゆっくりと語り始める。

 これでいよいよ知りたかった事の真相がすべて明らかになるってわけだ。

「私にはね……血の繋がりがある本当のお兄ちゃんがいたんだ……」

「そうか……って、その言い方だと、もうメルルの実の兄はこの世にいないってことかな」

「うん……。私のお兄ちゃんはね、五つも年が離れてるくせに弱腰て頼りない人で、いつも私が守ってあげてたんだけど、ある日唐突に終わっちゃったの……」

「唐突に……?」

「そう。町中でね、冒険者が狂ったように何か叫びながら弓矢を無差別に放つ事件が起きて、そのときに巻き込まれて死んじゃったんだ……」

「……」

「未だにあのときのこと、鮮明に思い出しちゃうの。嫌だ、僕はまだ死にたくない、メルル……頼むから僕を置いていかないでくれって、泣きながら言ったあと息絶えちゃった。最後の最後まで情けないお兄ちゃんだったけど、死んだあとに気付いたの。私も知らないうちにお兄ちゃんに依存してたんだって……」

「つまり、共依存の関係だったってわけか……」

「多分、そんな感じだったと思う。私たちは両親を早く失くして、二人でいることが多かったから……。お兄ちゃんが死んだあと、心の中にぽっかりと穴が開いちゃって、私は心の隙間を埋めるために、パーティーを募集したんだ。色んなところから誘いがあったけど、一番頼りなさそうなパーティーを選んだの」

「それが今のパーティー【時の回廊】か?」

「うん。私だけじゃなくてラダンもバルダーもキールも当時はみんな凄く未熟でね、一匹のF級モンスターを倒すのに1時間もかかるくらい弱かったんだよ。でも、苦労はしたけどとっても楽しかったぁ。お互いに深く依存し合ってるみたいで、私には理想的すぎる関係だったんだあ……」

 メルルは口元は笑っていたが目の焦点がまったく合っていなくて、まるで楽しい夢でも見ながら話しているかのようだった。

「それから、みんなどんどん強くなって……短期間で見違えるようになったの。嬉しさもあったけど、寂しさのほうが大きかった……」

「……」

「強くなった分、みんなほかのパーティーと競うように効率を求めることが増えて、居心地が悪くなってきちゃって……。私は頼るだけじゃなく、頼られながらのんびりやりたいのに……このままじゃ全員、いつかお兄ちゃんみたいに私の前からいなくなっちゃうんじゃないかって思って……」

「怖くなったのか」

「うん……それでね、私思ったの。密かに妨害しちゃえば、この関係がずーっと続くかもしれないって。低いランクのままなら、ずっとお互いに依存し合うような関係でいられるんじゃないかなって……」

「なるほど、な……」

 なんとも病的な理由だし、完全に納得することができたわけじゃないが、メルルの気持ちはわからんでもない。

 強くなればなるほど上を目指すのは当たり前だし、そうなれば個人でできることが多くなり、彼女の理想とする依存し合うような関係ではなくなっていくだろう。

 彼女がこうなってしまったすべての原因は、依存し合っていた兄が突然亡くなったことによるトラウマであり、それこそが呪いの根源だったってわけか……。

「そういうわけだから……モンドおにーちゃん、これ以上邪魔しないで……」

「え……?」

 俺を見上げるメルルの目に光はなく、あたかも人形の瞳であるかのようだった。

「私……モンドおにーちゃんのこと、好きだから殺したくないの……。だから……お願いだから邪魔しないでっ!」

「メルルッ……!?」

 メルルが短剣で自身の首を斬ろうとしたので、俺はただちに小さな氷塊を放ち、手首に当てて寸前のところで止める。

「うぅっ……」

 短剣がその辺に転がるとともに、ポタポタと彼女の首や手から血が伝って地面に滴るが、傷は全然深くない。大丈夫だ。

「バカなことはやめるんだ、メルル……」

「ふふっ……」

「メルル……?」

「うふふふふっ……! 殺したくないから私が死のうとしたのに、邪魔なんかしちゃってぇ。つまり、モンドおにーちゃんも死にたいんだね。じゃあ、私より先にあの世に逝ってもらうからね……!」

「ぐっ……!?」

 俺は体に強烈な負担がかかるのがわかった。これがデバフか……。身体能力と魔力を大幅に下げられているのがわかる。

 これは、デバフとしては相当なレベルのものだ。そうか、彼女自身も仲間たちに依存するために本当の力を隠していたってわけか……。
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