A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

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35話 心

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「本当に、ごめんなさい、モンド様……」

「イ、イリス、急にどうした? なんで謝るんだ」

 俺はイリスと対面したと思ったら、いきなり頭を下げられてしまった。

 いつものように、彼女のところで自分を拾ってくれるパーティーを募集しようとしたところだ。

「モンド様に【時の回廊】パーティーを紹介する際、私はとんでもないミスを犯してしまったんです……」

「ミスだって……?」

「はい……。自分の担当ではなかったとはいえ、私の情報収集能力が足りなかったために、そのパーティーを苦しめているという呪いの存在について最近まで知らなかったからです。本当に、御迷惑をおかけしました……」

「イリス……」

 なるほど、それで【時の回廊】パーティーを紹介したことの責任を感じちゃってたわけか。

「呪いの件なら別に気にしなくていい。実際には呪いのように見られてただけでちゃんと解決したし、俺もこうして無事に帰ってきたわけだから」

「ぐすっ……モンド様は、本当にお優しいんですね……」

「……」

 今度は泣き出してしまった。反応に困るが、それだけ俺のことを心配してくれてたんだろうな。

「いや、俺が優しくするのはほんの一部の人間だけにだよ。たとえばイリスとかね」

「……お、お上手なんですね……。でも嬉しいです。ここからは自虐注意ですけど、私は冒険者様には人気がないようなので、お世辞すらあまり言われたことがないんですよ……」

「あれ、イリスは普通に可愛いのに、不思議だな……」

「あ……ありがとうございます! モンド様のそのお言葉はですね、たとえお世辞であってもほかの冒険者様の褒め言葉より100倍嬉しいです……」

「ははっ……」

 冒険者から人気があるのはわかりやすい美女だからな。そういう連中にイリスの魅力は伝わらないのかもしれない。

 飾り気がないっていうのかな。思いやりがあるのは前提として、彼女はありのままの裸のような心を持っていて、言葉や仕草にいちいち温度を感じるので心地いいんだ。

「あ、そうだ。イリス、パーティーを新たに募集したいんだけど……」

「はっ! い、いけません、私ったら、また役目を忘れておりました……。えっとですね、ご覧の通り、モンド様に沢山依頼が入ってきてますよ。今や有名人のような扱いでして、これがそのリストです……!」

「おぉっ……」

 イリスが俺に見せつけてきた書類は想像以上に分厚いものだった。俺一人にこんなに要請が来てるっていうのか……。

「中にはB級やA級パーティーもいまして、しかもその中にはモンド様を正式に迎え入れてみたいというパーティーもいます!」

「上級パーティーがいきなり俺を正式なメンバーに加えようっていうのか、そりゃとんでもないな……」

 自分がそこに入るかどうかはともかく、もし期待に応えられないと雰囲気が物凄いことになりそうだ。

「はい、普通ならありえないことですが、現在ではモンド様の取り合いみたいになってますからねえ……」

「なるほど……」

 ゴートたちに追放されたときはどうなるかと思ったが、今じゃこの変わり様。それだけ低級パーティーを成功に導いたことのインパクトが大きかったんだろう。

 そのあと、俺はイリスから色んなパーティーについて説明を受けることになった。

「――と、こんな具合です! はぁ、はぁ……お、多すぎて疲れてしまいましたっ……」

「ははっ……」

 彼女の説明を全部聞き終わったばかりだが、俺は早くも有力候補を二つに絞っていた。

 平均年齢60歳オーバーという、E級のシニアパーティー【古の刻印】と、黒魔導士のジョブだけで構成されたF級の特殊パーティー【暗黒師団】。

 一体どんなパーティーなのか、どっちも興味をそそられる内容だし入ってみたいが、一組だけ成功させたらこの都を発つ予定でいるので、迷っていることも確かなんだ。

 うーん……中々決められそうにないな。こうなったら、あのやり方でいくか。

「イリス、【古の刻印】か【暗黒師団】、どっちがいいか選んでくれ」

「はい……って、ええっ!?」

「イリスは人を見る目に自信があるんだろ? だから頼むよ……」

「わ、わかりました……!」

 今までずっとイリスに選んでもらってきてそれで成功してるし、彼女は見る目があるだけでなく強い運も持ってると感じたんだ。きっと現時点で俺が入るべき最適なパーティーを選んでくれるだろう。
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