没落貴族に転生した俺、外れ職【吟遊詩人】が規格外のジョブだったので無双しながら領地開拓を目指す

名無し

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戦闘向き

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「シオン様、そろそろ床に就くお時間ですよ」

「えっ……」

 あれから屋敷に戻って夕食後、自室でエリュネシアに就寝を促されてしまった。時間はまだ9時前だっていうのに、もう寝ろっていうのか……。

「確かに疲れてるけど、そんなに眠くないしまだ起きてるよ」

「シオン様……僕は寝るのだけは得意なんだって、いつも自慢なさってたじゃないですかぁ……」

「……」

 旧シオンはそんなどうでもいいことをひけらかしてたのか、呆れたやつだ……。

「折角ジョブレベルが2になったわけだし、何か覚えてからでも遅くはないと思ってな」

「シ、シオン様、本当にご立派になられて……」

「エリュは本当に立派のハードルが低いな……」

「はい?」

「あ、いや、なんでもない……」

 よく考えたら、俺は旧シオンなんて呼んでるけど、エリュネシアにとってみたらシオンはシオンなわけだからな。あまり不自然なところは見せられない。

「エリュたんには、僕のもっと違うところも褒めてもらおうと思って、眠いけど頑張ろうと……」

「シオン様……あのならず者たちを蹴散らした剣術といい、勉強熱心なところといい、普段からゴロゴロしてるだけのように見えて、実は思うところがあったのですね……」

「あ、うん……」

 怠惰なだけの旧シオンが褒められるのは癪だがしょうがない。

「それで、シオン様は次にどんな音を覚えられるのでしょう? 最初は確か風の音でしたよね」

「あぁ、ちょっと素早くなるやつね。上書きもできないし、使えるのを最初に覚えてよかったよ」

「ですねえ」

 そう考えると今は音を増やすためにジョブレベルを上げたいわけだから、戦闘に役立ちそうな音はなんなのか、慎重に考えてから覚えたほうがよさそうだ。

 うーむ……戦闘っていうくらいだから、それに関係する音といえば……って、声でもいいなら、怒声とか? よし、これでいこう。

「エリュ、頼みがあるんだけど」

「は、はい、なんなりと仰ってください……」

「……」

 なんで赤面するかな。

「俺を怒ってほしいんだけど……」

「えっ……? わ、わたくしめがシオン様を怒るなんて、そんな……」

「いや、ちょっと怒るだけでもいいから――」

「――ダメですダメです、シオン様にそんな畏れ多いこと、できません……!」

「……」

 殺そうとしたくせになあ。

 とにかくこの様子だと、いつまで経っても怒ってくれそうにない。こうなったら、少々強引にいったほうがよさそうだな……。

「エリュたん、もみもみ……」

 俺は嫌らしい顔を浮かべつつ、エリュネシアの胸を揉んでやった。これならさすがに怒るだろう。

「……んっ、シオン様、そんなにお揉みしたいなら、あらかじめ言ってくだされば……」

「……」

 ダメだ……怒るどころか照れたように微笑んでる。普通は怒るはずだが……そういえばご褒美で下着を見せるようになってたし、そういう行為は慣れてるっぽい。そうだな、今度はストレートに行くか。

「エリュたんのブス、アホ、バカ」

「……シオン様、いつもの言葉責めですねっ。はい、わたくしめはブスでアホでバカでございます……」

「……」

 なんで嬉しそうなんだよ、ドMかよ。ダメだこりゃ。何をしても怒りそうにないぞ……って、そうだ。自分の怒声を覚えればいいだけなんじゃ?

《不可。自身の出す音や声を覚えることはできません》

 心の声によって即座に否定されてしまった。

「シオン様……わたくしめの怒った声を覚えたい気持ちはよくわかりました。なので、頑張って怒ります……!」

「おおっ、やってくれるか」

「はいっ。では、参ります!」

「……」

 真剣な顔のエリュネシアとにらめっこする格好になるが、彼女の口からは一向に怒声が出てこない。

「……シ、シオン様……めっ、です……」

 ダメだ、目元も潤んでるし、これじゃ涙声だ……。

 俺を怒るということは、ずっと側で世話をしてきたエリュネシアにとって相当にハードルが高いんだろう。

 こうなったらほかの人に頼むかな……って、待てよ? その手があった……。

「もういいよ、エリュたん」

「え……?」

「ほかの人に頼むよ。ルチアードとかロゼリアとか……」

「な、な、な――」

 お、エリュネシアの顔が見る見る赤らんできた。これはいけそうだ……。

「――なりません!」

 よしよし、エリュネシアの怒声、確かにこの耳に届いた。

 早速心に刻み込むと、《怒声を習得しました》と心の声が。これで俺の習得技が二つになったわけだ。

 名前:シオン=ギルバート
 性別:男
 年齢:15
 職業:吟遊詩人
 ジョブレベル:2
 習得技:風の音 怒声

「エリュ、ありがとう。おかげで習得できたよ」

「え……? あっ……」

 彼女もようやく気付いたようだ。

「迫力満点の怒鳴り声だったよ」

「うー……。シオン様が遠くへ行ってしまわれるような気がして、つい……」

 さて、エリュネシアが照れ臭そうにもじもじしてる間に、怒声がどんな効果なのか確認するとしよう。

《怒声の情報を開示します》

 名称:怒声
 習得可能レベル:1
 効果:攻撃力・小
 副作用:気力の消耗・微小
 調和:可能

 お、思った通りだ。攻撃力も常時上がるし風の音とセットで使えそうだな。

 これも調和が可能ってことで、風の音と組み合わせてみたいんだが、それは新しい音を覚えることになるわけでジョブレベル2じゃできないし、あとのお楽しみにするとしよう。
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