固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し

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第二階 不遇ソーサラー、アンデッドから歓迎される

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 ほかのパーティーとの余計ないざこざを避けるため、俺とソフィアは人目を避ける形で戦っている。

 みんな考えることは大体同じみたいで、昼食や夕食の後にダンジョンに潜るやつらが多い。深夜とか朝はさらに空いてる一方、廃人と呼ばれる桁外れのレベルの連中がボス狩りのために出現するから危険もあるのだが、浅い階層で狩りをするだけならライバルと見なされないので問題ない。

 ただ、連中が先を急ぎたいがために蝙蝠を相手にせず大量に引き連れてくるので、その結果モンスターが溜まり、なりたての冒険者が死ぬという痛ましい事件もたびたび起きている。それゆえ、地下二階層への階段前は注意が必要だ。

「ベナムウェーブ!」

 幾つもの牙と羽音が襲ってくる。これおそらく30匹はいるな。準備はしていたが、さすがにこれだけの蝙蝠を相手にしていたら毒霧があっても辛い。どんどんダメージが降り積もっていくのがわかる。これも囮の俺から離れて立つソフィアの詠唱が完成するまでの辛抱だ。

「マジックエナジーチェンジ!」

 MEPをLEPに変換。俺はまだ平気なんだと、ソフィアを焦らせないように耐えようとしたが、危なかった。油断するとすぐ意識が朦朧としてくる。

「コールドストーム!」

 あたり一面が雪景色になりそうなほどの吹雪が吹き荒れ、蝙蝠たちは氷漬けになり、次々に落ちて砕け散った。さすがはウィザード。すぐに魔法は解けたがこんなのを食らったらひとたまりもない。熟練したウィザードはこれを使用後に杖で割ってさらに氷結させてダメージを与えたり、凍った状態で風の魔法を使用したりしてとどめを刺すんだ。蝙蝠にはオーバーキルだからやっても意味がないが。

 階段付近を掃除したということもあり、他のパーティーに感謝されつつ地下二階層に下りることになった。女の子ばかりのパーティ―だがギルドに入っているのがわかる。『九尾の狐』とかいうギルドだ。こういう組織に入る者は体のいずれかの個所にギルドエンブレムを入れなきゃいけない仕組みで、それをしないとギルド会話を初めとした機能が不全になるらしい。

 ソフィアはそのうちの一人、活発な感じのアーチャーの子と仲良くなったようで、ぺちゃくちゃと楽しそうに喋っていた。勧誘されなきゃいいけど。ギルドに入れば俺とダンジョンに潜る時間だって減るかもしれないしな。

「――クアゼル、危ないっ!」
「あっ」

 眼前にスケルトンが出てきて口を開けたと思ったら、唸りを上げる音がしてバラバラに砕かれていた。一緒に階段を下りたパーティーの中から、棍棒を持った女ファイターの呆れた顔が代わりに出てくる。

「気をつけろ愚図。死にたいのか」
「あ、ああ、ごめん……」

 ぼんやりしてたせいかわからなかった。すぐ近くにいたのに気付けなかったなんて、俺どうかしてたのかな。

「クアゼル、あのスケルトン、通路の隅で倒れてたの。死んだ振りしてたみたい」
「そうか……」

 ソフィアは知っていたのか。俺はやつが倒れているということにすら気が付かなかった。あのスケルトン、ほんの一瞬ではあったが顎をカタカタと鳴らして何かを訴えているように見えた。気のせいとは思うが、何故かそう思った。とにかくここで考え事はやめよう。

 女の子だけのパーティーに別れを告げて地下二階層の探索を始める。薄暗いだけじゃなくてじめじめしてて苔で足が滑りそうだ。キノコも生えているのが見えるが毒々しくて食べられそうにない。

 ここには蝙蝠がいない分、ゾンビやスケルトンたちが暗い通路の奥から腐敗した不気味な体を覗かせていた。もしかしたらこの中に死んだ冒険者もいるのかもしれない。なんでこんなことを考えてしまうのかわからないが、それだけ気味の悪い場所ということだろう。

 やつらはフラフラとした足取りでこちらに向かってくるが、獲物が近くにいると判断すれば歩みを速めてくるのかもしれない。囲まれる前に対処したほうがよさそうだ。

「ソフィア、詠唱を始めてくれ」
「え、もう?」
「なんか嫌な予感がするんだ。早く」
「うん」

 この体全体がビリビリする感じの胸騒ぎに応えないといけない。

「ベナムウェーブ――」

 毒の霧を発生させ、壁際のソフィアを守るように立つ。

「――う……?」

 全身の毛が引き寄せられるような感覚がしたかと思うと、視界全体にゾンビやスケルトンたちの姿を発見する。こんなにいたのか。物欲しげに歩みを速めてきた。呻き声や骨の鳴る音がまるで俺たちを歓迎するかのように聞こえて、耳がどうかなってるんじゃないかと疑った。疲れているんだろうか……。

 だが大丈夫だ。もうすぐソフィアは詠唱を完了させるはず。そうすればアンデッド属性であるやつらは凍ることすら許されず、ダメージを受け続けて滅びることになる。

「はっ……」

 見たくないものを見てしまった。ゆっくりと俺たちに向けて弓を引くアーチャータイプのスケルトンがいたのだ。しかし一匹だけだ。しかもベナムウェーブ……は範囲外だったか。それでも、こうしてソフィアの体を隠しきれている。当たるはずがない。

「うぐっ!」

 やつが矢を放ち、俺の脇腹に突き刺さって消えた。痛いがこれで終わりだ。さあソフィア、モンスターハウスを一掃してくれ。

「……ソフィア?」
「ごめん、クアゼル」

 たまらず振り返ると、ソフィアが血を滲ませた肩を押さえていてそれですべてを悟った。脇腹を貫通した矢がソフィアの肩に命中して詠唱を妨害したんだ。見なくても俺の耳にはもう届いていた。大量のアンデッドたちの冷たい息吹が。ソフィアと一緒に死ねることだけが唯一の救いなのか。彼女の震える体を抱きしめたとき、微風が耳朶を撫でた。風? だがここはダンジョンなはず……。

「あれ……は……」

 風が吹いてきた方向に視線を合わせると答えはすぐに出た。外眼筋が凝りそうな速さで移動する男が通った後には、足跡であるかのようにアンデッドたちの欠片だけが散らばっていた。あの強さ、間違いない。ナイトのアルフォードだ。実際に戦ったところを見たわけではないが、その様子は聞かされている。まるで一筋の風のようだったと。

 あれだけいたのにもう片付いてしまったようだ。アルフォードは美麗な顔をこちらに一切向けることなく、地下一階層へと上っていった。

 本当に、溜息が勝手に飛び出すくらい強いな。ナイトには狂ったように加速し、一度に何度も連続攻撃できるバーサクなる上位スキルがあるが、それと【二刀流】を合わせると目にも止まらない攻撃速度になる。ただ単に両手で武器を扱うんじゃなくて、一方の手が攻撃、防御の両面で自動的に補正、追従をしてくれるんだ。ナイトを目指す冒険者はほぼこれに憧れているといっていい。俺もそうだった。

 でも、なんだか若干虚ろな目をしていたような。時間帯的にボス狩りから帰ってきて疲れているからなんだろうか。

「アルフォードさん、素敵……」

 感動のあまりかソフィアが涙ぐんでて正直嫉妬する。アルフォードからしてみたら俺は眼中にすらなかったようだ。助けてもらった格好だが、相手にしてみたらただ目障りだからモンスターを倒しただけに見えた。

 屈辱的だがこれが俺の現実だろう。あの人は現時点で最強と言われる固有スキル【二刀流】持ちだが、俺は【空欄】だからスタートラインにすら立てていない。それでも……無能でもソフィアとこうして相方同士でいられるならいいんだ。

「帰ろう、ソフィア」
「うん!」

 ん、誰だ? 今、それでいいのかって声がしたような。振り返るも、モンスターすらいない。

 そこにはただの屍があるだけだ。

 ただの屍が……。

「……」
「どうしたの、クアゼル」
「なんでもない」
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