固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し

文字の大きさ
2 / 31

第二階 不遇ソーサラー、アンデッドから歓迎される

しおりを挟む

 ほかのパーティーとの余計ないざこざを避けるため、俺とソフィアは人目を避ける形で戦っている。

 みんな考えることは大体同じみたいで、昼食や夕食の後にダンジョンに潜るやつらが多い。深夜とか朝はさらに空いてる一方、廃人と呼ばれる桁外れのレベルの連中がボス狩りのために出現するから危険もあるのだが、浅い階層で狩りをするだけならライバルと見なされないので問題ない。

 ただ、連中が先を急ぎたいがために蝙蝠を相手にせず大量に引き連れてくるので、その結果モンスターが溜まり、なりたての冒険者が死ぬという痛ましい事件もたびたび起きている。それゆえ、地下二階層への階段前は注意が必要だ。

「ベナムウェーブ!」

 幾つもの牙と羽音が襲ってくる。これおそらく30匹はいるな。準備はしていたが、さすがにこれだけの蝙蝠を相手にしていたら毒霧があっても辛い。どんどんダメージが降り積もっていくのがわかる。これも囮の俺から離れて立つソフィアの詠唱が完成するまでの辛抱だ。

「マジックエナジーチェンジ!」

 MEPをLEPに変換。俺はまだ平気なんだと、ソフィアを焦らせないように耐えようとしたが、危なかった。油断するとすぐ意識が朦朧としてくる。

「コールドストーム!」

 あたり一面が雪景色になりそうなほどの吹雪が吹き荒れ、蝙蝠たちは氷漬けになり、次々に落ちて砕け散った。さすがはウィザード。すぐに魔法は解けたがこんなのを食らったらひとたまりもない。熟練したウィザードはこれを使用後に杖で割ってさらに氷結させてダメージを与えたり、凍った状態で風の魔法を使用したりしてとどめを刺すんだ。蝙蝠にはオーバーキルだからやっても意味がないが。

 階段付近を掃除したということもあり、他のパーティーに感謝されつつ地下二階層に下りることになった。女の子ばかりのパーティ―だがギルドに入っているのがわかる。『九尾の狐』とかいうギルドだ。こういう組織に入る者は体のいずれかの個所にギルドエンブレムを入れなきゃいけない仕組みで、それをしないとギルド会話を初めとした機能が不全になるらしい。

 ソフィアはそのうちの一人、活発な感じのアーチャーの子と仲良くなったようで、ぺちゃくちゃと楽しそうに喋っていた。勧誘されなきゃいいけど。ギルドに入れば俺とダンジョンに潜る時間だって減るかもしれないしな。

「――クアゼル、危ないっ!」
「あっ」

 眼前にスケルトンが出てきて口を開けたと思ったら、唸りを上げる音がしてバラバラに砕かれていた。一緒に階段を下りたパーティーの中から、棍棒を持った女ファイターの呆れた顔が代わりに出てくる。

「気をつけろ愚図。死にたいのか」
「あ、ああ、ごめん……」

 ぼんやりしてたせいかわからなかった。すぐ近くにいたのに気付けなかったなんて、俺どうかしてたのかな。

「クアゼル、あのスケルトン、通路の隅で倒れてたの。死んだ振りしてたみたい」
「そうか……」

 ソフィアは知っていたのか。俺はやつが倒れているということにすら気が付かなかった。あのスケルトン、ほんの一瞬ではあったが顎をカタカタと鳴らして何かを訴えているように見えた。気のせいとは思うが、何故かそう思った。とにかくここで考え事はやめよう。

 女の子だけのパーティーに別れを告げて地下二階層の探索を始める。薄暗いだけじゃなくてじめじめしてて苔で足が滑りそうだ。キノコも生えているのが見えるが毒々しくて食べられそうにない。

 ここには蝙蝠がいない分、ゾンビやスケルトンたちが暗い通路の奥から腐敗した不気味な体を覗かせていた。もしかしたらこの中に死んだ冒険者もいるのかもしれない。なんでこんなことを考えてしまうのかわからないが、それだけ気味の悪い場所ということだろう。

 やつらはフラフラとした足取りでこちらに向かってくるが、獲物が近くにいると判断すれば歩みを速めてくるのかもしれない。囲まれる前に対処したほうがよさそうだ。

「ソフィア、詠唱を始めてくれ」
「え、もう?」
「なんか嫌な予感がするんだ。早く」
「うん」

 この体全体がビリビリする感じの胸騒ぎに応えないといけない。

「ベナムウェーブ――」

 毒の霧を発生させ、壁際のソフィアを守るように立つ。

「――う……?」

 全身の毛が引き寄せられるような感覚がしたかと思うと、視界全体にゾンビやスケルトンたちの姿を発見する。こんなにいたのか。物欲しげに歩みを速めてきた。呻き声や骨の鳴る音がまるで俺たちを歓迎するかのように聞こえて、耳がどうかなってるんじゃないかと疑った。疲れているんだろうか……。

 だが大丈夫だ。もうすぐソフィアは詠唱を完了させるはず。そうすればアンデッド属性であるやつらは凍ることすら許されず、ダメージを受け続けて滅びることになる。

「はっ……」

 見たくないものを見てしまった。ゆっくりと俺たちに向けて弓を引くアーチャータイプのスケルトンがいたのだ。しかし一匹だけだ。しかもベナムウェーブ……は範囲外だったか。それでも、こうしてソフィアの体を隠しきれている。当たるはずがない。

「うぐっ!」

 やつが矢を放ち、俺の脇腹に突き刺さって消えた。痛いがこれで終わりだ。さあソフィア、モンスターハウスを一掃してくれ。

「……ソフィア?」
「ごめん、クアゼル」

 たまらず振り返ると、ソフィアが血を滲ませた肩を押さえていてそれですべてを悟った。脇腹を貫通した矢がソフィアの肩に命中して詠唱を妨害したんだ。見なくても俺の耳にはもう届いていた。大量のアンデッドたちの冷たい息吹が。ソフィアと一緒に死ねることだけが唯一の救いなのか。彼女の震える体を抱きしめたとき、微風が耳朶を撫でた。風? だがここはダンジョンなはず……。

「あれ……は……」

 風が吹いてきた方向に視線を合わせると答えはすぐに出た。外眼筋が凝りそうな速さで移動する男が通った後には、足跡であるかのようにアンデッドたちの欠片だけが散らばっていた。あの強さ、間違いない。ナイトのアルフォードだ。実際に戦ったところを見たわけではないが、その様子は聞かされている。まるで一筋の風のようだったと。

 あれだけいたのにもう片付いてしまったようだ。アルフォードは美麗な顔をこちらに一切向けることなく、地下一階層へと上っていった。

 本当に、溜息が勝手に飛び出すくらい強いな。ナイトには狂ったように加速し、一度に何度も連続攻撃できるバーサクなる上位スキルがあるが、それと【二刀流】を合わせると目にも止まらない攻撃速度になる。ただ単に両手で武器を扱うんじゃなくて、一方の手が攻撃、防御の両面で自動的に補正、追従をしてくれるんだ。ナイトを目指す冒険者はほぼこれに憧れているといっていい。俺もそうだった。

 でも、なんだか若干虚ろな目をしていたような。時間帯的にボス狩りから帰ってきて疲れているからなんだろうか。

「アルフォードさん、素敵……」

 感動のあまりかソフィアが涙ぐんでて正直嫉妬する。アルフォードからしてみたら俺は眼中にすらなかったようだ。助けてもらった格好だが、相手にしてみたらただ目障りだからモンスターを倒しただけに見えた。

 屈辱的だがこれが俺の現実だろう。あの人は現時点で最強と言われる固有スキル【二刀流】持ちだが、俺は【空欄】だからスタートラインにすら立てていない。それでも……無能でもソフィアとこうして相方同士でいられるならいいんだ。

「帰ろう、ソフィア」
「うん!」

 ん、誰だ? 今、それでいいのかって声がしたような。振り返るも、モンスターすらいない。

 そこにはただの屍があるだけだ。

 ただの屍が……。

「……」
「どうしたの、クアゼル」
「なんでもない」
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

異世界での異生活

なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

処理中です...