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第三階 不遇ソーサラー、理不尽な目に遭う
しおりを挟むソフィアと俺のレベルが20になり、キャパシティが4になったことで大分戦闘も楽になってきた。地下二階層では最早敵なしだ。赤字も解消し、互いに所持金も残り330、450ジェムと余裕が出てきた。
ここまで来るともう彼女のMEPが尽きるということもなくなってきて、ライフエナジーチェンジは必要がなくなり、俺は大魔法が完成するまで囮になってベナムウェーブを使いつつ、マジックエナジーチェンジでLEPを回復するだけの存在になっていた。もうそろそろ地下三階層に行ってもよさそうだ。
「ソフィア、そろそろ下に行ってみる?」
「うん、ちょっと怖いけど……」
マジックフォンを取り出し、三階層に下りる階段の前でスキルを変更する。
名前:クアゼル
年齢:37
性別:男
ジョブ:ソーサラー
レベル:20
LEP124/124
MEP250/250
ATK6
DEF5
MATK40
MDEF42
キャパシティ4
固有スキル
【?】
パッシブスキル
無し
アクティブスキル
マジックエナジーチェンジ3
ベナムウェーブ3
インビジブルボックス1
マジックエナジーロッド1
登録所の案内地図にもあるように、そこにはヘルワードという高い攻撃力と素早さを持つ本型モンスターや、マミーというタフなミイラがいるということで、インビジブルボックスという拘束系のスキルと、マジックエナジーロッドという己の魔力を物理攻撃に変えるスキルを追加した。
これで素早いモンスターを足止めし、なおかつ現状のレベルでは【効果2倍】の大魔法でも処理しきれないほどだというマミーの大量のライフ――LEP――を削りきることができるはずだ。
三階層に下りると、早速血の滲んだ包帯をぐるぐる巻きにしたアンデッドたちが迫ってくる。やつらマミーはスケルトンやゾンビよりも少し早い程度だがそれでも迫力を感じた。
「ソフィア、大魔法を」
「うん」
「ベナムウェーブ!」
ソフィアの前に立ち、スキルレベル3になったベナムウェーブを展開する。まだ敵との距離はあるが、範囲、濃度、保持率ともに上がっているので、既に毒霧の中に入ったミイラもいるほどだ。これなら、仮に奇襲を受けても充分対応できる。
「あっ……」
ミイラたちのほとんどが毒霧の中に入ったとき、何かが猛然と迫ってきた。本の形をしている。ヘルワードだ。こんなに速いのかと思ったときにはミイラたちを追い越していた。
「インビジブルボックス!」
本が開かれ、牙や赤い舌が覗くが俺は無傷だった。やつは透明な箱の中で歯軋りしている。もう手を伸ばせば届く距離だから本当に肝を冷やした。
「ふう……」
毒霧の中だからそうそう当たらないはずだが、それでもこの速さで何度も噛みついてこられたらと思うとぞっとする。本に続いてミイラたちが異臭を漂わせながらやってきたが……もう遅い。
「コールドストーム!」
ソフィアの魔法が完成し、すぐに凍結した本を除いて、アンデッド属性のミイラたちは凍ることも許されずに延々とダメージを重ねていく。スキルレベル3になった吹雪の中で本を何度も殴りつけるとあっさり沈んだが、ミイラたちは手を伸ばしてしぶとく歩み寄ってくる。だがこれも想定済みだ。
「ベナムウェーブ――」
今も漂っている毒霧を重ねる……わけではない。ベナムウェーブにはわずか3秒だが固定詠唱がある。
「――マジックエナジーロッド!」
魔法攻撃系のスキル詠唱中にこのスキルを使ってキャンセルすることで、魔力から変換した物理攻撃力を杖に充填できるのだ。スキルレベル1では【効果2倍】を加えてもたった6秒間。それでも残ったミイラたちを仕留めるには充分だった。ただのロッドが、屈強な戦士の振り下ろす棍棒にでもなったような威力を出し、ミイラの頭を次々と木っ端微塵にしていく。
「凄い、クアゼル。ファイターみたい」
「ソフィアの【効果2倍】のおかげだよ。ちょっとびびったけど」
「ね」
ヘルワードのスピードは想定外だった。あいつが現れたと思ったらすぐにインビジブルボックスを使わないと。数は少ないみたいだけど一匹だけじゃなかったら危なかった。
「うっ」
まだ毒霧が残る中、誰かがうずくまったのが見えた。そうだった、パーティー外の冒険者には毒が効いてしまうんだ。見た感じ、ソフィアと同年齢くらいの子だ。
「ご、ごめ――」
「――触らないでください。汚らわしい」
歩み寄り、彼女の落とした本を拾おうとすると、振り払われた。なんか見覚えがあると思ったら、昨日見たギルド、『九尾の狐』の1人だ。いわゆるプリーストで、格好も司教冠(ミトラ)とか被ってるの見ればすぐわかるがいかにも聖職者っぽい。ソフィアと仲よさげに喋ってた子の後ろで黙々と歩いてたし、大人しそうな子に見えたがこんなに感じの悪いやつだったとは。
「ごめんなさい、ジュナさん」
「ソフィアさん、あなたがいるから強くは言いませんがね、冒険者がよく通る階段の前でこんなスキルを使うのはいただけませんよ。ほら、そこのクズも早く謝りなさい」
「……ごめん」
一応最初に謝ったんだけどな。口の悪い女だ。
「こういう無礼な男は厳しく躾けないとダメです。そうでないとソフィアさん、あなたがバカを見ますよ」
「はい、本当にごめんなさい」
「ソフィアは謝らなくていい。俺が悪かった」
「……はあ、当たり前です。今度こんなことをしたら、私が承知しませんから」
もっさりした前髪をかき分け、分厚い本を脇に抱えてジュナというプリーストが階段を上がっていく。
「……」
それを眺めるように見るうち、俺は段々とむかついてきた。確かに階段の前で使ったのは悪かったかもしれないが、何故見えている毒霧の中にわざわざ突っ込んで来たのかがわからない。こっちが一方的に謝罪しなきゃいけないことだとは思えなかった。
それにあいつ、俺たちが階段前に溜まっていた大量の蝙蝠を掃除したおかげで通れるようになったのを忘れたのか? それを聞く前に行ってしまわれたが。
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