固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し

文字の大きさ
3 / 31

第三階 不遇ソーサラー、理不尽な目に遭う

しおりを挟む

 ソフィアと俺のレベルが20になり、キャパシティが4になったことで大分戦闘も楽になってきた。地下二階層では最早敵なしだ。赤字も解消し、互いに所持金も残り330、450ジェムと余裕が出てきた。

 ここまで来るともう彼女のMEPが尽きるということもなくなってきて、ライフエナジーチェンジは必要がなくなり、俺は大魔法が完成するまで囮になってベナムウェーブを使いつつ、マジックエナジーチェンジでLEPを回復するだけの存在になっていた。もうそろそろ地下三階層に行ってもよさそうだ。

「ソフィア、そろそろ下に行ってみる?」
「うん、ちょっと怖いけど……」

 マジックフォンを取り出し、三階層に下りる階段の前でスキルを変更する。

名前:クアゼル
年齢:37
性別:男
ジョブ:ソーサラー
レベル:20

LEP124/124
MEP250/250

ATK6
DEF5
MATK40
MDEF42
キャパシティ4

固有スキル

【?】

パッシブスキル

無し

アクティブスキル

マジックエナジーチェンジ3
ベナムウェーブ3
インビジブルボックス1
マジックエナジーロッド1

 登録所の案内地図にもあるように、そこにはヘルワードという高い攻撃力と素早さを持つ本型モンスターや、マミーというタフなミイラがいるということで、インビジブルボックスという拘束系のスキルと、マジックエナジーロッドという己の魔力を物理攻撃に変えるスキルを追加した。

 これで素早いモンスターを足止めし、なおかつ現状のレベルでは【効果2倍】の大魔法でも処理しきれないほどだというマミーの大量のライフ――LEP――を削りきることができるはずだ。

 三階層に下りると、早速血の滲んだ包帯をぐるぐる巻きにしたアンデッドたちが迫ってくる。やつらマミーはスケルトンやゾンビよりも少し早い程度だがそれでも迫力を感じた。

「ソフィア、大魔法を」
「うん」
「ベナムウェーブ!」

 ソフィアの前に立ち、スキルレベル3になったベナムウェーブを展開する。まだ敵との距離はあるが、範囲、濃度、保持率ともに上がっているので、既に毒霧の中に入ったミイラもいるほどだ。これなら、仮に奇襲を受けても充分対応できる。

「あっ……」

 ミイラたちのほとんどが毒霧の中に入ったとき、何かが猛然と迫ってきた。本の形をしている。ヘルワードだ。こんなに速いのかと思ったときにはミイラたちを追い越していた。

「インビジブルボックス!」

 本が開かれ、牙や赤い舌が覗くが俺は無傷だった。やつは透明な箱の中で歯軋りしている。もう手を伸ばせば届く距離だから本当に肝を冷やした。

「ふう……」

 毒霧の中だからそうそう当たらないはずだが、それでもこの速さで何度も噛みついてこられたらと思うとぞっとする。本に続いてミイラたちが異臭を漂わせながらやってきたが……もう遅い。

「コールドストーム!」

 ソフィアの魔法が完成し、すぐに凍結した本を除いて、アンデッド属性のミイラたちは凍ることも許されずに延々とダメージを重ねていく。スキルレベル3になった吹雪の中で本を何度も殴りつけるとあっさり沈んだが、ミイラたちは手を伸ばしてしぶとく歩み寄ってくる。だがこれも想定済みだ。

「ベナムウェーブ――」

 今も漂っている毒霧を重ねる……わけではない。ベナムウェーブにはわずか3秒だが固定詠唱がある。

「――マジックエナジーロッド!」

 魔法攻撃系のスキル詠唱中にこのスキルを使ってキャンセルすることで、魔力から変換した物理攻撃力を杖に充填できるのだ。スキルレベル1では【効果2倍】を加えてもたった6秒間。それでも残ったミイラたちを仕留めるには充分だった。ただのロッドが、屈強な戦士の振り下ろす棍棒にでもなったような威力を出し、ミイラの頭を次々と木っ端微塵にしていく。

「凄い、クアゼル。ファイターみたい」
「ソフィアの【効果2倍】のおかげだよ。ちょっとびびったけど」
「ね」

 ヘルワードのスピードは想定外だった。あいつが現れたと思ったらすぐにインビジブルボックスを使わないと。数は少ないみたいだけど一匹だけじゃなかったら危なかった。

「うっ」

 まだ毒霧が残る中、誰かがうずくまったのが見えた。そうだった、パーティー外の冒険者には毒が効いてしまうんだ。見た感じ、ソフィアと同年齢くらいの子だ。

「ご、ごめ――」
「――触らないでください。汚らわしい」

 歩み寄り、彼女の落とした本を拾おうとすると、振り払われた。なんか見覚えがあると思ったら、昨日見たギルド、『九尾の狐』の1人だ。いわゆるプリーストで、格好も司教冠(ミトラ)とか被ってるの見ればすぐわかるがいかにも聖職者っぽい。ソフィアと仲よさげに喋ってた子の後ろで黙々と歩いてたし、大人しそうな子に見えたがこんなに感じの悪いやつだったとは。

「ごめんなさい、ジュナさん」
「ソフィアさん、あなたがいるから強くは言いませんがね、冒険者がよく通る階段の前でこんなスキルを使うのはいただけませんよ。ほら、そこのクズも早く謝りなさい」
「……ごめん」

 一応最初に謝ったんだけどな。口の悪い女だ。

「こういう無礼な男は厳しく躾けないとダメです。そうでないとソフィアさん、あなたがバカを見ますよ」
「はい、本当にごめんなさい」
「ソフィアは謝らなくていい。俺が悪かった」
「……はあ、当たり前です。今度こんなことをしたら、私が承知しませんから」

 もっさりした前髪をかき分け、分厚い本を脇に抱えてジュナというプリーストが階段を上がっていく。

「……」

 それを眺めるように見るうち、俺は段々とむかついてきた。確かに階段の前で使ったのは悪かったかもしれないが、何故見えている毒霧の中にわざわざ突っ込んで来たのかがわからない。こっちが一方的に謝罪しなきゃいけないことだとは思えなかった。

 それにあいつ、俺たちが階段前に溜まっていた大量の蝙蝠を掃除したおかげで通れるようになったのを忘れたのか? それを聞く前に行ってしまわれたが。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

異世界での異生活

なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

処理中です...