固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し

文字の大きさ
6 / 31

第六階 不遇ソーサラー、心臓がバクバクする

しおりを挟む

 あれから俺は1人でダンジョンから地上の休憩所へ行き、パーティーを抜けた後で肩に下げていた『九尾の狐』のエンブレムを外し、晴れて自由の身になった。登録所の隣にあるこの休憩所は文字通り憩いの場所になっていて、冒険者たちが外の景色を見ながら飲食したりお喋りしたりと思い思いの時間を過ごしている様子が窺えた。

 町中は強力な結界によってあらゆるスキルが無効化されているし、防具はともかく強力な武器は一切使えない仕様だと聞いた。冒険者だと威力のある武器はマジックフォンに強制収納されるんだ。外部の者が剣やナイフを持って暴れるくらいはできるだろうが、モンスター相手に鍛えた冒険者たちによってすぐ取り押さえられるだろう。

「……」

 俺はコーヒーを飲んで一息つく。本当に、ルーサの言う通り色んな意味で重いギルドだった。ソフィアには悪いが、これ以上自分に負担を掛けたくない。マジックフォンの魔法陣が輝き、連絡が入る。この発信番号はソフィアだ。

『クアゼル、ギルド抜けたんだね』
「ああ、もう耐えられないんだ。ごめん」
『あれだけ酷い扱いだったもん。しょうがないよ』

 ソフィア、完全に洗脳されていたわけじゃなかったんだな。その言葉で涙が出そうになった。

『でもね、マスターって根は悪い人じゃないと思う』
「どうして?」
『ギルドのことを大事に思うあまり、その……どうしても能力とか気になっちゃうのかなって』

【空欄】のことを言いたいんだろうが、俺にはどうしようもできないことだ。それを執拗に責めるやつのどこに根が悪くないと言える要素があるのかがわからない。

「ソフィアがそこにいたいというならそれでもいい。でも俺は嫌なんだ」
『そう。それならしょうがないね』

 なんだろう、なんだか今、言葉にまったく感情が籠もってなかったような。気のせいか。

『あのね、クアゼル。言いにくいんだけど。勝手に抜けたこと、一言謝ってほしいんだ。マスターに』
「ソフィア……」

 もしかしたら、俺が勝手に抜けたことについて彼女が責められているのかもしれない。それでも、あいつに謝るくらいなら俺は冒険者を辞める。

「ごめん。それはできない」
『わかった』
「狩りに行ってくる」
『うん。私も行くよ』
「いいの?」
『うん。みんなこの時間帯はそれぞれやることがあるみたいだし』
「そうか」

 久々にソフィアと狩りに行くような気がする。約束の時間に休憩所を出て登録所に入ると、少し経ってから彼女が到着し手を振ってきた。久々に見たソフィアの笑顔に胸が熱くなる。

 早速パーティーを組んで情報を確認すると、レベルがかなり離れていた。俺が27で彼女は36。9レベルの差か、随分上がったな。人数の多いパーティーだと新しい階層にも行きやすいし上がりも早いんだろう。10以上離れると経験値の公平分配が出来なくなるから差を詰めておきたいところだ。

 しかし何度見ても固有スキルの【空欄】が恨めしい。これさえなんとかなっていたら、ここまであいつらに見下されることもなかっただろう。ソフィアとも繋がりが深くなっていてギルドに入るような選択肢は生まれなかったかもしれない。

 さて、久々のペアだし、嫌なことは忘れてはりきっていこうかな。ソフィアと一緒に狩りができなくなってからソロで一度潜ったっきりだから、腕が鈍ってないか少し不安にもなるが。まずスキル欄を弄ろう。

名前:クアゼル
年齢:37
性別:男
ジョブ:ソーサラー
レベル:27

LEP344/344
MEP560/560

ATK15
DEF12
MATK72
MDEF68
キャパシティ5

固有スキル

【?】

パッシブスキル

ムービングキャスト1

アクティブスキル

マジックエナジーチェンジ5
ベナムウェーブ5
インビジブルボックス3
マジックエナジーロッド3

 ベナムウェーブ、マジックエナジーチェンジがともにレベル5になったことで、ムービングキャストがスキルツリーに発現し覚えられるようになった。移動しながら詠唱できるので、妨害を受けそうなときに使える。もちろんパーティーメンバーにも適用されるし、詠唱中はただでさえ隙だらけだから非常に有用なスキルだ。スキルレベルを上げれば上げるほど詠唱中に歩くスピードも上がるらしい。今回は地下四階層のミノタウロスを倒すということで絶対に不可欠だろう。下手をすれば一発で即死するらしいからな。

「うわ」
「凄い音でしょ、クアゼル」
「ああ」

 まず驚いたのが、地下四階に下りる階段の前で既に大きな音がしていることだ。ハンマーを振り下ろした影響か熱風まで伝わってくる。冒険者の中でも特に魔法使い系に人気の高い狩場だと聞いた。マミーが可愛いと思えるほどのタフなLEPを持つミノタウロスは、DEFは普通だがMDEFが低いのだ。それに攻撃速度も遅いため、よほど間違わなければハンマーに当たることもないという。

 ただ、その分当たれば即死するから、初めて行く冒険者にとってみれば緊張感は物凄いらしい。正直今の段階でも心臓がバクバクしているからなんとなくわかる。

「気を付けてね。私は何度か行ったから大丈夫だけど」
「そりゃ頼もしいな」
「すぐ慣れるよ」

 ソフィアはまったく緊張してる感じがない。なんだか随分遠くに行かれたような気分だ。装備だって、俺があげたものはもう処分してしまったのか、上等そうな艶のあるマントに、複雑な幾何学模様が施されたスーツ、小さなドクロが施されたおしゃれなキャップを身に着けている。武器に至っては支給されたロッドから高級品のアークワンドに変わっていた。寂しい気もするがそれだけ頑張ったんだろう。置いて行かれないように俺も努力しないとな。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

異世界での異生活

なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

処理中です...