固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し

文字の大きさ
5 / 31

第五階 不遇ソーサラー、吐き気を催す

しおりを挟む

 俺とソフィアは、早速ギルド狩りとかいうくだらないものに呼び出された。

 内容は簡単だ。まずギルドマスターのルーサがプリーストとしてのお手本を示し、周りがいちいち褒め称えるんだ。ヒール砲はアンデッドに効くんだとか当たり前すぎることを物凄く偉そうに語ってて噴き出しそうになってしまった。

「エクソシスム!」

 地下三階層、魔眼の帽子を被ったルーサが唱えたプリーストの上位スキル、エクソシスムが完成し光輝く円が地面に現れると、そこまで誘い出されていたミイラたちが次々と浄化されていった。

 タフなLEPを持つマミーがあっさり沈むのだからかなり強力だが、同パーティーにいるソフィアの【効果2倍】も加算されていると考えると多分実際のスキルレベルは4くらいだろうか。

 悪魔系やアンデッド系の敵には絶大な威力を発揮するというのはわかるけど、今や俺とソフィアだけでも普通に倒せるモンスターだらけの三階でやられてもしらけるだけだ。これも新人の俺たちに自分をより強くみせるための計算ずくの行動だろう。

「――ヒール!」

 何を思ったのか、ルーサがミイラの足や腕をヒールで壊してその頭を踏みつける。悪趣味な男だ。

「んー、これは誰かに似てるね。何もできない、無能、醜悪と来れば……誰だろう?」

「誰でしょうねえ」
「誰だろー? アハハ!」
「誰だろうな?」

 ジュナ、エルミス、ローザの三馬鹿から下品な笑い声が上がる。さすがにソフィアは青い顔で黙ってたが。

「こんな風に生まれたら悲劇だろうね。まさか、そんなのが僕のギルドにいるなんて思いたくないけど……」

 はっきり言えばいいのに。この男の固有スキルは【いじめ】か? 実際は【レア運上昇】というスキルで、敵を倒したときに珍しいものが出やすいらしい。大したレベルでもないのにやたらと高価な物を持っているのはおそらくこれのおかげだろうな。

 このスキルのおかげでやつはボス討伐の際によく中級層のパーティーに誘われ、しかも優先的に守られていると聞いた。三馬鹿がやたらと慕うのには宗教的なもの以外にも何か理由があるとは思っていたがこれだったわけだ。

 ちなみに固有スキルはそれ自体が独立しているので【効果2倍】が【レア運上昇】を2倍にさせることはないらしい。やつをこれ以上儲けさせたくないし少し安心した。

「僕の言ってることは非情かもしれない……。でも、このギルドに入るということは『九尾の狐』の看板を背負うということ。そのことを深く重んじてほしいのだ。『九尾の狐』には確かに輝かしい歴史がある。だがそこには、数々の栄光だけでなく悲しみが幾つも刻まれているのだ……」
「「「ひんっ……」」」

 ルーサがミイラにとどめを刺し、涙ながらに語り始めると、三馬鹿が寄りそうようにして泣き崩れた。心底くだらない。

「ルーサさん……」

 ソフィアまでもが感動した様子で見つめている。教祖の洗脳は進んでいるようで胸糞悪い。そこでタイミングよく、本――ヘルワード――が2匹、背後からルーサを襲おうとしているのが見えたが俺は当然無視した。もう間に合うまい。

「――アローレイン!」

 だが、先に攻撃したのはエルミスだった。【効果2倍】の影響もあるのか大量の矢が降り注ぎ、ことごとく本に命中した。

「びっくりした……」

 一歩後退した俺や座り込んだソフィアを除き、誰もが平然と立っている。まるで相手にしていなかったかのように。

 今の、どう考えても本のほうが速かったように見えたのに、挙動が遅れていたエルミスが先に攻撃していて、本は口を開けた状態で自分から止まったように見えた。それだけじゃない。ルーサは当たっても平気だと言わんばかりに悠然と突っ立っていたのだ。

 俺はマジックフォンを取り出し、パーティー情報からやつらの固有スキルを確認する。

 ジュナ 【鉄壁】
 極めて高い物理防御力を維持できる。パーティーでも有効。

 エルミス【必中】
 どんな攻撃でも100%命中させることができる。パーティーでも有効。

 ローザ 【先制攻撃】
 攻撃の意志を持った時点で相手より先に先制攻撃できる。パーティーでも有効。

 何故このギルドが4人しかいなかったのかよくわかった気がする。4人でも充分だからだ。そこに【効果2倍】を持つソフィアが加わればもうほかのメンバーはいらないというのもわかる。【空欄】とはいえ、俺をこれだけ弄り回す理由も……。

「さすがは僕のメンバーたち。本当に頼りがいがある。それに加えて無能も受け入れてやる慈悲深さ。優しすぎるというのは罪なのかもしれない……うっ? こほっ、こほっ……」
「「「マスター!」」」
「ルーサさん……?」

 胸を押さえてわざとらしく咳き込み出すルーサだが、三馬鹿は悲鳴のような声を上げて駆け寄り、ソフィアも続いた。

「お体は大丈夫でしょうか、マスター」
「無理したらダメですよー、マスター……」
「無理だけは禁物だ、マスター」
「本当に、お体にだけは気を付けてください、ルーサさん……いや、マスター」

 こっちまで吐き気がしてきて胸を押さえる。おえっ。ルーサのように明らかな仮病ではなく本物だが、誰一人視線すら俺にくれることはなかった。

「ふう……みんなが心配してくれたおかげか、もう大丈夫みたいだ……」
「「「「マスター……」」」」
「……」

 案の定、ルーサのやつは何事もなかったかのようにキザな笑みを浮かべてみせた。

 ここまで不快な気持ちにさせられた以上、もうこんなところに俺の居場所はないと感じる。このままじゃ自分の心身が持たない。ある意味追放されたってところか。ソフィアと一緒にいられる時間は減っても、ここから抜けるべきなのかもしれない。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

異世界での異生活

なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

処理中です...