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第十七階 不遇ソーサラー、レア装備をプレゼントする
しおりを挟む四度目の転生を祝うかのような光に包まれる。
「おかえりー!」
エリナはやっぱりそこにいて、マジックフォンから出した魔眼の帽子、アークワンド、天使の髪飾りを手渡してきた。今や彼女が倉庫代わりになっている。
「これやるよ」
「え?」
「俺は魔眼あるしな」
天使の髪飾りを呆然と見るエリナ。
「いいの?」
「いいよ。何度も手伝ってもらってるしな」
「嬉しいけど……ちょっと怖いよ、こんな高いの……」
なんだ、いつものエリナらしくないな。俺がミトラの代わりにつけてやると、女子トイレに引っ張ってやった。俺は今とても筋肉質だがこれでも一応女子だ。
「ほら、似合ってる」
「うん。ありがとう、クアゼ――」
はっとした顔のエリナだが、小声で会話するなら大丈夫と呟いてやると、涙目で胸をなでおろしていた。俺に怒られると思ったんだろうが、そんなに怖いか、俺。まあ残虐ショーを近くで見てるしな。
エリナは回りながら鏡に映る自分の姿をうっとりと見ている。そうそう手に入らないものだからなこれは。つけてるやつをルーサ以外で見たことがないほどだ。
さて、ステータスを確認するか。
名前:ローザ
年齢:18
性別:女
ジョブ:ファイター
レベル:46
LEP1022/1022
MEP541/541
ATK91
DEF63
MATK124
MDEF51
キャパシティ9
固有スキル
【転生】【先行入力】【効果2倍】
【レア運上昇】【先制攻撃】
パッシブスキル
LEP回復力上昇6
鈍器錬成7
アクティブスキル
ダブルスマッシュ7
ヴァイオレンス6
プロボカーレ4
エンジュア6
ファイティングスピリッツ3
クリティカルブレイド5
オーラウェポン2
これがローザのステータスか。
ファイターについてはよく知らないがナイトに近いスキル構成らしい。そこはソーサラーとウィザードの関係に近くて色々被っているところもあるということだ。明確な違いといえば、ナイトが俊敏性に秀でているのに対してファイターは耐久性が非常にあるということ。この1000を超えたLEPを見てもそれがよくわかる。
今回はレベルを上げなくていいから楽だな。次は47レベルのエルミスを誘い出す番だがどうやろうか。
ん? なんか音がするなと思ったらマジックフォンからだった。誰だろう?
『あ、ローザ!? なんでギルド抜けたの?』
この声、エルミスか。ちょうどいいタイミングだ。
「ちょっと、問題が起こって……」
『問題!?』
どうしようか。上手くエルミスをダンジョンに誘い出せる方法はないか。ギルドを抜けるにはそれなりに理由があるはず。
『ローザ!? どうしたの?』
そうだ。ダンジョンでいざこざが起きてってことにしようか。
「喧嘩してしまって。ギルドのみんなに迷惑を掛けないために抜けた」
『ええっ!?』
大声出されてマジックフォンを遠ざけてしまった。唾でも飛んできそうな勢いだったな。
『そんなにやばい相手なの?』
「やばい。ピンチだ。もう、ダメかもしれない……」
わざと弱々しく言ってやる。
『ジュナが買い物行ってるから、帰ってきてから一緒に行っていい?』
こいつ、仲間がピンチだって言ってんのに。こういうところでやっぱり屑だとわかる。
「ダメだ。急いでいる。もう危ない。愚図にやられる。三階層……」
『――わかった! 今行く!』
少しはローザっぽく言えたと思う。それでもエルミスのやつ、ちょっと迷ってたな。地下三階層にしたのにはそれなりに理由がある。復讐方法についてはとにかく色んなパターンを考えてて、エルミスにはこれしかないっていうやり方があった。
名前:ローザ
年齢:18
性別:女
ジョブ:ソーサラー
レベル:46
LEP536/536
MEP883/883
ATK27
DEF25
MATK153
MDEF121
キャパシティ9
固有スキル
【転生】【先行入力】【効果2倍】
【レア運上昇】【先制攻撃】
パッシブスキル
ムービングキャスト6
アクティブスキル
マジックエナジーロッド6
エレメンタルプロテクター2
サモンシルフィード4
インビジブルボックス4
ベナムウェーブ6
マジックエナジーストライク7
エレメンタルブレス1
フレイムホルダー1
やっぱ筋肉ウーマンになってステもちょっと変わったのがわかる。まあどうせすぐ潰す体だからいいや。今回、フレイムウォールの代わりにフレイムホルダーを入れた。もちろん3にして火の精霊を使うためだが、これを入れるのにはほかにも理由がある。あとはあそこでまれに手に入るアイテムをゲットするだけだ。
「――何よ!」
「なんだよ!」
地下三階層で俺はエリナと睨み合っていた。もちろん芝居だが。ただ、俺は座り込んでいる。明らかな劣勢だと思わせるためだ。
「プロテクト忘れるなよ」
「わかってる」
「一応だが、俺が言ったら距離を取れ。アローレインをまともに食らえば、【反射】で相手も死ぬだろうがエリナも死ぬ」
「うん」
おそらくあいつは射程の長いメテオアローを使ってくるはずだ。アーチャーの主力スキルの一つで威力があるが、レベルも大して変わらないしプロテクトがあればLEPが半減する程度で死にはしない。
ただ、アローレインは遠距離ではなく中距離だからそこそこ距離を縮める必要がある。普通のやつなら矢がばらけるから単体相手には向かないスキルだが、エルミスには【必中】がある。大量の矢を浴びることになるわけだ。【鉄壁】があるか、あるいは高レベルのファイターならスキルレベル7以上のリザレクションを貰うことで耐えられるかもしれない。一発で全部体力を持っていかれたら終了だが。
こっちの様子がよく見えるようにミイラや本は掃除してある。ついでにレアもゲットして残虐ショーの準備万端だ。まあこれは後のお楽しみだ。
「とどめを刺してあげるわ!」
「やめてくれ……」
エリナに頭を踏まれる。なんか腹立つけどあくまで芝居だからな。普通なら筋肉少女の俺のほうが強く見えるだろうが、エリナは高級レア装備の天使の髪飾りなんかつけてるわけだから威圧感は充分なはず。
「メテオアロー!」
やはりそう来たか。声だけで姿すら見えないがおそらく階段付近からだろう。
「――うっ……ヒール!」
エリナの胸に刺さった矢が消滅する。マジックフォンでLEP凝視してたんだが、400くらい減ってて驚いた。プロテクトがなかったら即死だ。
「サモンシルフィード!」
「ヘイスト!」
一気に超加速してエルミスを探す。いた。さすがにおかしいと思ったのか、俺に対して弓を引こうとしている。もう気付いたか。俺も、戦士の格好なのに杖掲げてて明らかに変だけど。ま、【反射】した時点で怪しいと思ったんだろうがもう遅い。さあ攻撃してみろ。できないだろう。なんせ俺には【先制攻撃】があるんだからな。
「ベナムウェーブ――マジックエナジーロッド!」
「ぎっ――!?」
やつの手首を吹き飛ばす。これでもう弓は使えないねえ。
「おらっ!」
「うぎ! ごえっ!」
あえて杖じゃなくローザ自慢の筋肉でエルミスを凌駕する。前歯が何本も折れるまで顔を殴り、ゲロを吐くまで腹を殴り、意識を失ったら透かさずエリナにヒールさせた。
「ひゅう……なんぜ……ごんなこと……」
「俺の名前、なんだと思う?」
「ローザ……?」
「違うんだよな。ほら、これ見ろよ間抜け」
腫れ上がったエルミスの顔に埋め込むようにして固有スキルのコレクションを見せつけてやる。
「ほら、クアゼルってやつがいただろ。お前らがリンチした男だよ」
「うぞ……」
「嘘じゃねえよ。この【転生】がいい証拠だろうが」
「だずげで……」
「助けて? お前本当に助かるって思ってる?」
「おにぇがいだから……」
泣いてる。泣いたからって俺が助けるとでも思ってんのかね。指先でそっと涙を拭ってやる。
「安心して……」
「あんじん?」
「うん……。これからじっくり痛めつけたあと無残に殺してあげるから泣かないで……」
エルミスが大きく空気を吸い込む。それが俺にとっては、もっと吸っていたい、生きていたいっていう魂の悲鳴のように聞こえて本当に心地よかった。てかいつの間にか失禁してるのな。失禁率高すぎだろ。『失禁』っていうギルド名にしたほうがいいんじゃないか。
「なんでもする……奴隷でもいいから……」
「奴隷?」
「うん……お願い、お願いだから……」
「奴隷になるなら、刻印をつけなきゃいけないな」
ちょうどいい。ここに来てこいつと馬が合うとは思わなかった。
「フレイムホルダー!」
杖に火付与をするとエルミスが目を剥いた。察しがいいじゃないか。っと、その前に全部脱いでもらおう。んー、胸ちっちゃいな。アソコも薄く毛が生えてる程度だ。
「さー、どこがいい?」
「嫌、嫌だよ……だずげて……誰か、誰か……」
「おいおい……俺の奴隷になるって言ったばかりだろうが。お仕置きとして全身に刻印してやる」
「嫌、嫌あああああああぁぁっ!」
「うるせえ! フレイムホルダー!」
畜生の癖に被害者振りやがって。火付与したばかりの熱々の杖を食わせてやったら喋らなくなったが。
――ふー。大分仕上がってきたな。全身に奴隷の刻印を押してやった。だが、このままじゃあまりに可哀想だからマミーの包帯っていうレア装備をプレゼントしてやる。
喜べ、ただの包帯じゃないぞ。まれにドロップするピッカピカの包帯。これでグルグル巻きにしてやる。どうだ、嬉しいだろう。本当のミイラみたいだ。掲示板じゃ一週間ずっと狩りして出るか出ないかのレア装備って言われてるんだが、大した値段じゃ売れないらしい。しかしこんなにあっさり出るとは思わなかった。さすがは【レア運上昇】だ。
さて、ぐったりしててつまらないからもう殺そう。
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