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最終階 不遇ソーサラー、幸せになりたいと願う
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あれから登録所のトイレでエリナと復讐の打ち合わせを済ませた俺は、念のために変装して別人に成りすましてからダンジョンの一階層へと潜った。犯人が見つかったら彼女も呼ぶつもりだ。
「ふわあ……」
通り魔を誘き寄せるべく眠そうに欠伸しながら歩く際、ウンディーネを隠すように連れて足元に水場(小)を仕掛けるのも忘れない。目撃証言がなかったことから犯人のジョブは必ずローグで、透明になれるスキルのトンネルチェイスを使って追いかけてくるはず。
エリナは犯人の顔を見てないどころか、いつの間にかやられていたと言っていた。つまり一発で殺されている可能性が高いことから、通り魔は相当な攻撃力を持っているということで、しかも【反射】までもなんらかの方法で回避しているということが推測できる。
これは与ダメージが上がるローグのパッシブスキル急所突きの効果もあるかもしれないが、ダメージが上がれば上がるほど【反射】の影響を受けるわけで、やはり根本的にはなんらかの固有スキルに頼っているとしか思えなかった。
「――……」
しかし、来ない……。単独行動でそれも変装しているのに。囮かもしれないと思って警戒しているのか、それとも通り魔自体がまだ来てないのか。俺は五階層まで潜ったあと、また一階層まで戻ってきた。うーん……日を改めようかな。
……って、待てよ? 俺はあることに気付いてはっとなった。エリナはなんらかの手段で通り魔に殺されているわけだが、その際に触れられているはず。殺すための手段はどうであれ、被害者は全て目玉を刳り抜かれているからだ。
ってことは、俺の体もかつては通り魔にやられているわけで、やつに対して【呼び戻し】が使えるってことじゃ? もしダンジョンに犯人がいれば、だが。
――来た。
【呼び戻し】を使用した直後、水場に波紋が広がるのがわかった。
「ディスペル!」
透かさず覚えたてのディスペルをかけて姿を暴いてやる。
「なっ、何――」
「――エレメンタルプロテクター、インビジブルボックス! さあ観念しろ……えっ……お、お前は……」
無力化し拘束した通り魔の正体……それは髪をオールバックにした軽装の男で、なんとかつてあのパン屋で同僚として俺の陰口を叩いていたレビーノだった。
「レ……レビーノ……」
「な、なんなんだ、この状況は……一体……。それにお前は、なんで俺の名前を……?」
俺も面食らったんだがレビーノのやつはもっと混乱した様子で、連絡を受けたエリナが合流して俺が変装を解いてマジックフォンを見せつつネタバラシしてやると、目を丸くしながらも徐々に落ち着きを取り戻したらしく、話の途中で時折小さくうなずくようになった。
「――は、ははっ……まさかあのカビパンが【転生】した姿だったとは……。しかもそれがこの前殺した女の兄として、さらに一緒にだと……こりゃ愉快だ……」
「おい、笑ってる場合か? なあエリナ」
「そうよ! あんた、よくも私のお兄さんを……!」
「ふ……ふふ……これが笑わずにいられるか。こんな形で再会とは……クププッ……」
不思議なことに、やつはここまで絶望的な状況にもかかわらずどんどん陽気になっていた。
「何故笑う? レビーノ」
「ホント、あんた自分がどういう立場なのかわかってるの……!?」
「ん、拷問でもして殺すのか? ククッ……やればいい。ただ、遅かったな」
「「え?」」
「俺の固有能力【デッドコピー】は、殺した相手の固有スキルを文字通りコピーすることができるんだが、今持っているのは【デスタッチ】という相手に触れるだけでダメージを与えることなく殺せるスキルだ……」
「……」
殺すことで相手の固有スキルをコピーする【デッドコピー】だと。これがレビーノの固有スキルなのか……。
「だ……だからどうしたっていうのよ! あんたの固有スキルなんて聞いてないのに!」
「続きがあるからよく聞け。それまでは【サクリファイス】という、耐久力がなくなり痛みにも弱くなるが、マックスLEPの二倍分のダメージをそのまま相手に与える固有スキルだったから、最高に弄り甲斐があって満足できただろうにってことだ」
「……なるほど、そりゃ確かに残念だ」
残念ではあるが拷問されて死ぬことには違いないし、この男の主張はただの強がりに近いな。
「それにしても、よくそんな都合よく強いスキルを得られるもんだな。無差別に殺す途中で弱いスキルも得られそうだが」
「この【デッドコピー】はな、相手を殺したときに選べるのさ。その能力をコピーするか、あるいはそれまでの能力を維持するのか……。それで俺に選ばれずに無駄死にしたやつも多い……ククッ……」
「へえ……」
効果は俺の【転生】に似てるんだな。ただ、これは殺したときに選べるもののその下位互換で、【デッドコピー】とそれでコピーした固有スキルの二つしか持てないっぽい。こいつはそうした選別の過程で得た【デスタッチ】なら、エリナの【反射】の影響を受けないと思って凶行に走ったってわけか。
「レビーノ、お前には当然たっぷりと苦しんで死んでもらう。その前に動機を教えてもらうが」
「ククッ……どうせ助からないのに、簡単に吐くと思うのか? 弱虫おじさん」
「そこまで言った以上、覚悟しなさいよね! クアゼルの拷問は世界一なんだからっ!」
「ふん……できるものならやってみろ……」
エリナの言う世界一が伊達じゃないことを証明してやらないとな。レビーノにも例外なく想像を絶するような痛みを味わいながら死んでもらう。
「――さあ、動機を教えろ! 言えば、ほんの少しだけ楽に死なせてやる……」
「……う、うごぉぉ……!」
「ヒール!」
眩いリザレクションの光の中、四肢を何度も砕かれたやつの呻き声がこだますが、さすがは凶悪犯。それでも心は折れなかった。だが、これも想定内だ。
「次は、切断面に火付与した杖を押し付けてやる。フレイムホルダー!」
「むぎゅあぁぁあああっ!? あがああぁぁぁぁっ! ごえええっ、え、えぐおぉぉぉおっ……」
「ヒールッ!」
レビーノが泡を吹いて失神したが、エリナのヒールで素早く目覚めさせる。
「ひゅ、ひゅうぅ……」
「まだ吐かないつもりなら、今度は飢えた蝙蝠たちに生きたままじっくり食わせてやる」
「もちろんヒールだってしてあげるから、意識はしっかり保ったままなんだからねっ!」
「……ひゅぅぅ……つ、強くなったなぁ、クアゼルおじさん……」
「さ、蝙蝠を集めてくるか――」
「――い、言うぜぇ。動機、をな……」
「言います、だろ?」
「ごっ、ごごぁ……! い、言いましゅうぅ……」
実際にあっつあつの杖を眼球に押し付けてやったらこの通りだ。やはり凶悪な通り魔もこの地獄のような拷問には耐えられないと思ったらしい。
「……俺は、憎かった……」
「「憎い……?」」
「……そうだ。憎悪こそが犯行の原動力だった。俺の狙いは、初めからライムフィールドの血筋を絶やすことだったんだ……。それ以外のやつらを殺した理由は、快楽のためでもあるが……主にその女の【反射】に耐えられるような能力を得るためだ……」
「どっ、どういうこと? なんで私が顔も知らないあんたなんかに恨まれなきゃならないのよ!」
「……ク、ククッ……。俺はな、おふくろから捨てられたんだ」
「そ、それが私たちになんの関係があるっていうの!?」
「……おおあり、だ。俺のおふくろは、かつてお前の親父に捨てられたんだ……」
「え……それって異母兄妹ってこと……?」
「ククッ……その通りだ。俺はヒステリーを起こしたおふくろに虐待されながら育ち、物心ついた頃にその事実を知って、実の親父がどんな面をしているのかわざわざ見に行ったよ。そしたら、お前たちは本当に幸せそうな面して、毎日を楽しんでやがった。心の底から痛感したよ。幸福な人間と不幸な人間は、生まれたときから既に決まっているのだとな……」
「……」
なるほど。だからレビーノはここまで性格が悪く育ったってわけか。
「……だっ、だからって殺すなんてやりすぎよ! それも多くの人を、無差別にっ! そんなことする権利があんたにあるの!? それであんたは幸せになれたっていうの!?」
「……ククッ……幸福かどうかは知らんが、殺しをやるたびに優越感は覚えたよ。死んだ瞬間、俺より下になるわけだからな」
「最低……」
「ああ、俺もそう思うよ。あんな性悪のおふくろを捨てた親父の選択は正しかった。こんな最低な俺を作って捨てたこともな。ま、そういうのもいるってことだ。俺は、必要っていうか必ずそういう不良品が世の中には生まれるもんだと思ってる。何度生まれ変わろうと、俺は必ずそういうのを繰り返してやるさ。なあ、ある意味優しいだろ。損な役回りをわざわざ引き受けてやろうってんだから……」
レビーノはいつの間にか息絶えていた。それも満足げな笑みを湛えて。まさかこんなにも不幸な境遇の男だったとはな。俺は不遇だと思っていたが、実際は恵まれていたほうなのかもしれない。
「――なんか、すっきりしない終わり方だったわね……」
「そうか? 俺はそうは思わないな」
登録所横の休憩所で、俺とエリナは向かい合っていた。冒険者たちは、例の通り魔が返り討ちにされたということでいつものテレビ番組『ダンジョンステーション』に夢中な様子。画面の前でも向こうでもレビーノについての荒唐無稽な憶測が飛び交っている。
「そ、そりゃクアゼルはあいつとは無関係なんだからそうでしょ! 私は、あんなやつと異母兄妹だったのよ。確かに可哀想な面もあったけど……救いようがないっていうか、理解しがたい異常思考よ……!」
「……」
話しながら涙目になるエリナは、本当に思いやりがあるんだろう。あいつが腹違いの兄だったこと以上に、絶望的に拗れてしまったあいつの不幸な思考を心底憐れんでいるんだ。
「俺は今、最高に幸せだけどな」
「な、何よっ、人がこんなに悲しんでるのにっ!」
「だって、俺はこんなにも優しいエリナと一緒にいられるんだから」
「……ク、クアゼル、人前で恥ずかしいわよ……!」
「俺は平気だけどな? エリナのことが好きだから」
「……わ、私だって好きよ! ……あ……」
「「「ヒューヒュー!」」」
いつの間にやら、一部のやつらの関心は早くも俺たちのほうへと移ってる様子だった。
レビーノは不幸な人間と幸福な人間は最初から決まってると言ってたが、一歩間違えていたら俺もあいつみたいになっていた可能性だってあるように感じる。そんな世の中で本当に幸せと思える瞬間なんてほんの僅かな間なのかもしれない。
でも、ずっと自分が不遇だと思っていた俺だからこそわかる。不幸だと感じるのは、幸せになりたいからなんだと。その気持ちを捻じ曲げずに大事にしていけば、きっと道には迷わないはずだ……。
「ふわあ……」
通り魔を誘き寄せるべく眠そうに欠伸しながら歩く際、ウンディーネを隠すように連れて足元に水場(小)を仕掛けるのも忘れない。目撃証言がなかったことから犯人のジョブは必ずローグで、透明になれるスキルのトンネルチェイスを使って追いかけてくるはず。
エリナは犯人の顔を見てないどころか、いつの間にかやられていたと言っていた。つまり一発で殺されている可能性が高いことから、通り魔は相当な攻撃力を持っているということで、しかも【反射】までもなんらかの方法で回避しているということが推測できる。
これは与ダメージが上がるローグのパッシブスキル急所突きの効果もあるかもしれないが、ダメージが上がれば上がるほど【反射】の影響を受けるわけで、やはり根本的にはなんらかの固有スキルに頼っているとしか思えなかった。
「――……」
しかし、来ない……。単独行動でそれも変装しているのに。囮かもしれないと思って警戒しているのか、それとも通り魔自体がまだ来てないのか。俺は五階層まで潜ったあと、また一階層まで戻ってきた。うーん……日を改めようかな。
……って、待てよ? 俺はあることに気付いてはっとなった。エリナはなんらかの手段で通り魔に殺されているわけだが、その際に触れられているはず。殺すための手段はどうであれ、被害者は全て目玉を刳り抜かれているからだ。
ってことは、俺の体もかつては通り魔にやられているわけで、やつに対して【呼び戻し】が使えるってことじゃ? もしダンジョンに犯人がいれば、だが。
――来た。
【呼び戻し】を使用した直後、水場に波紋が広がるのがわかった。
「ディスペル!」
透かさず覚えたてのディスペルをかけて姿を暴いてやる。
「なっ、何――」
「――エレメンタルプロテクター、インビジブルボックス! さあ観念しろ……えっ……お、お前は……」
無力化し拘束した通り魔の正体……それは髪をオールバックにした軽装の男で、なんとかつてあのパン屋で同僚として俺の陰口を叩いていたレビーノだった。
「レ……レビーノ……」
「な、なんなんだ、この状況は……一体……。それにお前は、なんで俺の名前を……?」
俺も面食らったんだがレビーノのやつはもっと混乱した様子で、連絡を受けたエリナが合流して俺が変装を解いてマジックフォンを見せつつネタバラシしてやると、目を丸くしながらも徐々に落ち着きを取り戻したらしく、話の途中で時折小さくうなずくようになった。
「――は、ははっ……まさかあのカビパンが【転生】した姿だったとは……。しかもそれがこの前殺した女の兄として、さらに一緒にだと……こりゃ愉快だ……」
「おい、笑ってる場合か? なあエリナ」
「そうよ! あんた、よくも私のお兄さんを……!」
「ふ……ふふ……これが笑わずにいられるか。こんな形で再会とは……クププッ……」
不思議なことに、やつはここまで絶望的な状況にもかかわらずどんどん陽気になっていた。
「何故笑う? レビーノ」
「ホント、あんた自分がどういう立場なのかわかってるの……!?」
「ん、拷問でもして殺すのか? ククッ……やればいい。ただ、遅かったな」
「「え?」」
「俺の固有能力【デッドコピー】は、殺した相手の固有スキルを文字通りコピーすることができるんだが、今持っているのは【デスタッチ】という相手に触れるだけでダメージを与えることなく殺せるスキルだ……」
「……」
殺すことで相手の固有スキルをコピーする【デッドコピー】だと。これがレビーノの固有スキルなのか……。
「だ……だからどうしたっていうのよ! あんたの固有スキルなんて聞いてないのに!」
「続きがあるからよく聞け。それまでは【サクリファイス】という、耐久力がなくなり痛みにも弱くなるが、マックスLEPの二倍分のダメージをそのまま相手に与える固有スキルだったから、最高に弄り甲斐があって満足できただろうにってことだ」
「……なるほど、そりゃ確かに残念だ」
残念ではあるが拷問されて死ぬことには違いないし、この男の主張はただの強がりに近いな。
「それにしても、よくそんな都合よく強いスキルを得られるもんだな。無差別に殺す途中で弱いスキルも得られそうだが」
「この【デッドコピー】はな、相手を殺したときに選べるのさ。その能力をコピーするか、あるいはそれまでの能力を維持するのか……。それで俺に選ばれずに無駄死にしたやつも多い……ククッ……」
「へえ……」
効果は俺の【転生】に似てるんだな。ただ、これは殺したときに選べるもののその下位互換で、【デッドコピー】とそれでコピーした固有スキルの二つしか持てないっぽい。こいつはそうした選別の過程で得た【デスタッチ】なら、エリナの【反射】の影響を受けないと思って凶行に走ったってわけか。
「レビーノ、お前には当然たっぷりと苦しんで死んでもらう。その前に動機を教えてもらうが」
「ククッ……どうせ助からないのに、簡単に吐くと思うのか? 弱虫おじさん」
「そこまで言った以上、覚悟しなさいよね! クアゼルの拷問は世界一なんだからっ!」
「ふん……できるものならやってみろ……」
エリナの言う世界一が伊達じゃないことを証明してやらないとな。レビーノにも例外なく想像を絶するような痛みを味わいながら死んでもらう。
「――さあ、動機を教えろ! 言えば、ほんの少しだけ楽に死なせてやる……」
「……う、うごぉぉ……!」
「ヒール!」
眩いリザレクションの光の中、四肢を何度も砕かれたやつの呻き声がこだますが、さすがは凶悪犯。それでも心は折れなかった。だが、これも想定内だ。
「次は、切断面に火付与した杖を押し付けてやる。フレイムホルダー!」
「むぎゅあぁぁあああっ!? あがああぁぁぁぁっ! ごえええっ、え、えぐおぉぉぉおっ……」
「ヒールッ!」
レビーノが泡を吹いて失神したが、エリナのヒールで素早く目覚めさせる。
「ひゅ、ひゅうぅ……」
「まだ吐かないつもりなら、今度は飢えた蝙蝠たちに生きたままじっくり食わせてやる」
「もちろんヒールだってしてあげるから、意識はしっかり保ったままなんだからねっ!」
「……ひゅぅぅ……つ、強くなったなぁ、クアゼルおじさん……」
「さ、蝙蝠を集めてくるか――」
「――い、言うぜぇ。動機、をな……」
「言います、だろ?」
「ごっ、ごごぁ……! い、言いましゅうぅ……」
実際にあっつあつの杖を眼球に押し付けてやったらこの通りだ。やはり凶悪な通り魔もこの地獄のような拷問には耐えられないと思ったらしい。
「……俺は、憎かった……」
「「憎い……?」」
「……そうだ。憎悪こそが犯行の原動力だった。俺の狙いは、初めからライムフィールドの血筋を絶やすことだったんだ……。それ以外のやつらを殺した理由は、快楽のためでもあるが……主にその女の【反射】に耐えられるような能力を得るためだ……」
「どっ、どういうこと? なんで私が顔も知らないあんたなんかに恨まれなきゃならないのよ!」
「……ク、ククッ……。俺はな、おふくろから捨てられたんだ」
「そ、それが私たちになんの関係があるっていうの!?」
「……おおあり、だ。俺のおふくろは、かつてお前の親父に捨てられたんだ……」
「え……それって異母兄妹ってこと……?」
「ククッ……その通りだ。俺はヒステリーを起こしたおふくろに虐待されながら育ち、物心ついた頃にその事実を知って、実の親父がどんな面をしているのかわざわざ見に行ったよ。そしたら、お前たちは本当に幸せそうな面して、毎日を楽しんでやがった。心の底から痛感したよ。幸福な人間と不幸な人間は、生まれたときから既に決まっているのだとな……」
「……」
なるほど。だからレビーノはここまで性格が悪く育ったってわけか。
「……だっ、だからって殺すなんてやりすぎよ! それも多くの人を、無差別にっ! そんなことする権利があんたにあるの!? それであんたは幸せになれたっていうの!?」
「……ククッ……幸福かどうかは知らんが、殺しをやるたびに優越感は覚えたよ。死んだ瞬間、俺より下になるわけだからな」
「最低……」
「ああ、俺もそう思うよ。あんな性悪のおふくろを捨てた親父の選択は正しかった。こんな最低な俺を作って捨てたこともな。ま、そういうのもいるってことだ。俺は、必要っていうか必ずそういう不良品が世の中には生まれるもんだと思ってる。何度生まれ変わろうと、俺は必ずそういうのを繰り返してやるさ。なあ、ある意味優しいだろ。損な役回りをわざわざ引き受けてやろうってんだから……」
レビーノはいつの間にか息絶えていた。それも満足げな笑みを湛えて。まさかこんなにも不幸な境遇の男だったとはな。俺は不遇だと思っていたが、実際は恵まれていたほうなのかもしれない。
「――なんか、すっきりしない終わり方だったわね……」
「そうか? 俺はそうは思わないな」
登録所横の休憩所で、俺とエリナは向かい合っていた。冒険者たちは、例の通り魔が返り討ちにされたということでいつものテレビ番組『ダンジョンステーション』に夢中な様子。画面の前でも向こうでもレビーノについての荒唐無稽な憶測が飛び交っている。
「そ、そりゃクアゼルはあいつとは無関係なんだからそうでしょ! 私は、あんなやつと異母兄妹だったのよ。確かに可哀想な面もあったけど……救いようがないっていうか、理解しがたい異常思考よ……!」
「……」
話しながら涙目になるエリナは、本当に思いやりがあるんだろう。あいつが腹違いの兄だったこと以上に、絶望的に拗れてしまったあいつの不幸な思考を心底憐れんでいるんだ。
「俺は今、最高に幸せだけどな」
「な、何よっ、人がこんなに悲しんでるのにっ!」
「だって、俺はこんなにも優しいエリナと一緒にいられるんだから」
「……ク、クアゼル、人前で恥ずかしいわよ……!」
「俺は平気だけどな? エリナのことが好きだから」
「……わ、私だって好きよ! ……あ……」
「「「ヒューヒュー!」」」
いつの間にやら、一部のやつらの関心は早くも俺たちのほうへと移ってる様子だった。
レビーノは不幸な人間と幸福な人間は最初から決まってると言ってたが、一歩間違えていたら俺もあいつみたいになっていた可能性だってあるように感じる。そんな世の中で本当に幸せと思える瞬間なんてほんの僅かな間なのかもしれない。
でも、ずっと自分が不遇だと思っていた俺だからこそわかる。不幸だと感じるのは、幸せになりたいからなんだと。その気持ちを捻じ曲げずに大事にしていけば、きっと道には迷わないはずだ……。
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めっちゃ読むのが早くないですか?w
作者はなるべくエタらないように設定を覚えてるうちに完結させたいタイプなんですけど
続きが読みたいっていう方もいるようですから完結するのも善し悪しかなって思うときもありますね
どんどん増えていく系チート主人公とか
もう好きですはい
お気に入り登録しておきますね
もう結構です、って続くかと思ってドキドキしましたw
お気に入り登録ありがとうございます!