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第10話
しおりを挟む「どうも!」
僕とユイはオルトン村へ帰還し、冒険者ギルドで受付嬢のスティアさんから報酬を受け取ったところだった。
「どういたしまして。今日もお疲れ様です、クルス様、それに恋人のユイ様」
「だから、スティアさん、違うって……」
「ふふっ。冗談ですよ……」
「……」
スティアさん、冗談って言う割りに目つきが笑ってなかったような……。ユイはユイで、報酬を受け取ったあと興味深そうにギルド内をうろうろと散策中。子供みたいだから誘拐されやしないかってハラハラする。
さて、気を取り直してお金の計算をするか。ゴブリン5匹の討伐報酬は銅貨20枚で、ゴブリンの魔石は1つ銅貨7枚だったので、所持金の銅貨25枚+34枚で合計59枚だ。
随分貯まったなあ。所持金はモーラさんの宿で食事代込みで一日銅貨10枚ずつ減るとしても、それを感じさせないくらい順調に増えてるのでいい感じだ。
「クルスさん、ただいまです!」
「あ、ユイ、おかえり。よかったらギルドカード見せてくれる?」
「ふぇ? はい、どうぞ!」
名前:来栖 海翔
冒険者ランク:E(0/3)
受けている依頼:無し
名前:赤理 結
冒険者ランク:E(0/3)
受けている依頼:無し
一応確認のために僕とユイのギルドカードを見比べてみると、お互いにFからEまで上がっているのがわかった。
「これで次から二人でEランクの依頼を受けられるね」
「は、はい。ほとんど何もしてないのにEランクになっちゃいました。嬉しいです……」
ユイもスライムと大ネズミの討伐依頼を僕と一緒にこなしたので、晴れてEランクってわけだ。
そういえば、右列のやつらが絡んでこなくなったので、どうしてるのかと思って探してみる。
すると酒場のエリアですぐに見つかった。合計5人でテーブルを囲んでる。あいつら、いつ見てもここで右列同士でだべりつつお酒を飲んでるような。狩りしなくても大丈夫なのかなと心配になってくる。
お、あいつらのほうも気になるのかこっちを見てきたけど、いかにも苦々しそうに目を背けた。
仲間同士で何かこそこそ言い合ったのち、意味深に目配せしてたのが少し気になる。レベル5が最高であとはレベル2や3ばっかりな連中とはいえ、なんか悪いことを企んでそうだから気をつけないと。
もしかしたら、あいつらは左列の人たちを狙っていて、ユイのようにこき使って荒稼ぎしようとしてるのかもね。そういえば、人柄のランクが高い人が混ざってたような。
ただ、そういう人も彼らから逃げたのか最近見かけないし、お金もいずれは尽きるだろうけど。
日が暮れてきたので、僕たちはいつもの宿で夕食を取る。チーズを乗せたトマトソースのパスタの大盛りが美味しい。一食分でもここの食事はボリュームがあるんだ。しかもモーラさんの手作りらしい。
『モーラ亭』にはお手伝いさんも何人かいるみたいだけど、宿主のモーラさんも精力的に動き回ってる。なんか別室で雨漏りがするって言ってた記憶があるから大変そうだ
「クルスさん、モーラさんの宿って、なんだかほっとしますねえ」
「だよね。ユイもそう感じるんだ?」
「はい! それにしても、まさか一日のうちに二つも依頼をこなせるなんて思いませんでした。これも全部クルスさんのおかげです。私一人じゃ絶対無理でしたよ……」
「いやいや、ユイの【糸】だって凄い効果でこっちは助かってるんだから、そんな風に思わなくていいよ」
「そ、そう言ってもらえると嬉しいです。私、これからも一生懸命頑張りますね!」
「うんうん、その意気だよ」
あ、そうだ。レベルが10になったあとのステータスがどうなってるのかまだ見てなかった。
「ユイ、レベル見た?」
「いえ、まだ見てないです」
「じゃあお互いにステータスオープンしつつ、鑑定スキルで覗き合おうか?」
「の、覗き合いって……なんだかえっちな響きですねっ」
「そ、そうだね」
少しだけ妙な空気になりつつ、早速お互いに覗き合うことに。
変動ステータス
名前:来栖 海翔
性別:男
レベル:10
HP:100/100
SP:10/10
腕力:1
俊敏:1
器用:6
知力:1
魔力:1
固定ステータス
才能:B
人柄:A
容姿:C
運勢:B
因果:C
スキル:【互換】【HP100】
装備:皮の服 皮の靴 弓 魔法の矢筒(∞)
変動ステータス
名前:赤理 結
性別:女
レベル:10
HP:15/15
SP:10/10
腕力:6
俊敏:1
器用:1
知力:1
魔力:1
固定ステータス
才能:B
人柄:A
容姿:A
運勢:C
因果:A
スキル:【糸】【観察眼】
装備:皮の服 皮の靴 棍棒
おお……なんとお互いにレベル10まで上がっていた。僕のほうが11レベルには近いと思うけど、まさかレベルまでお揃いとは。これって、レベル10からは相当に上がりにくくなるってことを意味しているのかも?
僕とユイのステータスをざっと見た感じ、どっちも5ポイントずつHPやSPに入っているのがわかる。
僕のHPが100以上にならないのは、【HP+100】じゃなくて【HP100】だからなんだろうね。なんとなくだけど、このスキルもいずれは違うことに使えるんじゃないかって予感がする。
あと、器用値のみが上がってるのは、そういう風に弓でモンスターを狩ってきたからかもしれない。戦い方がステータスポイントに影響するわけだ。
ユイの場合にしても、スライムに対して棍棒で近接攻撃していたから腕力値が上がっていると解釈すれば納得できるしね。
なんで5ポイントなのかっていうのはわからないので、おそらく才能次第じゃないかと思って【互換】で才能を調べてみたら、やっぱりそうだった。
才能Fだと1ポイントで、才能Sなら7ポイント上がるようになってるんだとか。つまり、Bなら5上がるってこと。あと、レベルの上がりやすさにも関係してるってさ。
そう考えると、やっぱりステータスを上げるのはかなり厳しい世界だ。それだけに、ステータス値+100っていうのがどれだけチートなのかがわかる。
普通に考えたら、レベルなんて上がれば上がるほどどんどん上がりにくくなるはずだから。
「クルスさんって……やっぱりおっきいですね」
「え……? お、大きいって、何が⁉」
「何がって、HPのことに決まってますよぉー。しらばくれっちゃって」
「……」
「あれぇ? なんでそんなに青ざめてるんですか?」
「……あ、い、いや、なんでもない……!」
「怪しぃ……」
「……」
【観察眼】スキルでユイに裸を見られちゃったのかと思ったのは内緒だ。
ってことは、灯台下暗しってやつで、ユイはまだそのことを知らないのかもね……。
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