あらゆる属性の精霊と契約できない無能だからと追放された精霊術師、実は最高の無の精霊と契約できたので無双します

名無し

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62.精霊術師、合点が行く

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「余は、幼い頃から冒険者に憧れていたのだ……」

 第二王女のマリアンが神妙な顔つきで過去を話し出したわけだが、意外な一言から始まった。冒険者なんていかにも見下してそうなだけに。

「幼少の頃より、余は滅多に怒らない父上から叱責されるほどお転婆でな。たまに王宮を飛び出して会っていた幼馴染の少年には、余がただの村娘だと嘘をつき、将来は一緒に冒険者になろうと誓い合ったものだ……」

 思い出を手繰り寄せるかのように遠い目をするマリアン。

「だが、第二王女という立場上、余は冒険者になることを許されなかった。もう、こんな窮屈な王宮ところは嫌だと、一緒に冒険者になろうと誓い合った少年に思い切って立場を打ち明け、ここから連れ去ってほしいと伝えたら、こう返されたのだよ。『マジかよ……き、消えろ、ふざけんな。そんなことさせて、俺を殺す気なのかよ、この畜生が』って……」

「「「ありゃ……」」」

 俺たちの声が被る。ちょっとだけ可哀想になってきたが、相手の立場からしてみたらしょうがない気もする。

「てっきり、余が憧れていた冒険者ならば、キリッとした顔で『マリアン、辛かったんだな。わかった、俺と一緒に逃げよう!』という台詞とともに、手を引っ張ってくれるとばかり思っていたのに……」

「「「……」」」

 俺はエリスたちと呆れた顔を見合わせていた。それは確かに理想かもしれないが、相手も背負うものが重過ぎるし、そう都合よくはいかないだろうな。何よりも命が大事なわけで。

「確か、その男はファゼル、とかいったか。今はどうしているだろうか――」

「「「――あっ……」」」

「ん? どうしたのだ?」

「い、いや、なんでもない。な、エリス、ティータ?」

「う、うん」

「なんでもないわ……」

 まさか、第二王女の幼馴染がファゼルだったとは……。でもあいつならいかにも言いそうな台詞ではある。

「あれ以降、余は冒険者を激しく憎むようになった。すぐにでも冒険者ギルドを撤廃するように、父に頼み込んだこともあったほどだ……」

「ちょっ……」

 大人しい顔をして滅茶苦茶なことを要求するもんだな。

「もちろん、あっさりと却下されてしまったが、余の中にはどうしても冒険者を苦しめたいという願望がくすぶっていた。そこで、冒険者の中でもパーティーから追い出されはみ出し者たちを集め、パーティーを作った。その名も、【堕天使の宴】だ。これで、あらゆる冒険者どもの上に立つべく……」

「あらゆる冒険者どもの上に立つ……?」

「うむ。あぶれ者たちでパーティーを作った理由は、ダンジョンの記録をことごとく塗り替え、冒険者どもに対してマウントを取るためだ。余は、冒険者のことは大嫌いだが、その根底にあるのは憧れだとわかったからな……」

「「「なるほど……」」」

 これには、俺だけでなくエリスとティータも納得できた様子。腑に落ちるとはこのことだ。

「だから、汗臭い冒険者どもを見下しつつも、たまに信頼して依頼したこともあった。たとえば、、とか。あれだけ謙虚にお願いしたというのに結局誰も取ってきてくれなかったから、余の冒険者への憎しみはさらに深いものになったが……」

「そ、それって……」

「その花って、これー?」

「あ。何それ、エリス、いいわね」

 エリスが何もないところからファレリアの花を出してみせた。なんだ、最近見ないと思ったら無効化していたのか。そういえばあの依頼主、やたらと傲慢な言い回しをするなと思ったら、その正体は第二王女だったんだな。合点が行く……。

「お、おおぉっ、それだっ、余が欲しているものを既に持っているではないかっ! では、早速こっちへ寄越すのだ、早くしろ――」

「「「――じー……」」」

 物欲しげに目を血走らせてきた王女に対し、俺たちがこれでもかと見返すと、彼女はまもなくはっとした顔になった。

「あ、い、いや、そういうことが言える立場ではなかったな、も、申し訳ない、ぐぬぬっ……」

「「「……」」」

 全然反省してないな、この様子だと……。それなら、冒険者の苦労を少しでもいいからわからせてやるか。

「王女マリアン、あなたにカードを返すのはしばらくやめにします」

「え、えぇっ!?」

「延期するってことです。反省が見られないので」

「ど、どうすれば返してもらえるのだっ……? ぜ、全裸要求とかはダメだぞっ。ちょこっと肩を出す程度ならばよいがっ……」

「そんなんじゃないです。あとでパーティーを解散させたら、俺たちについてきてください。冒険者になりたかったんでしょう?」

「えっ……余に直接戦えと……? で、でもぉ、それは嫌ですうぅ……」

「今更猫を被っても無駄です、マリアン。てかもう、これからは敬語も使わないし、無理矢理にでもついてきてもらうよ。バラされたくないなら」

「マリアン、ついてきてもらうよー」

「ついてきなさい、マリアン」

「ぬ、ぬぐぐうっ……」

 すっかり立場が入れ替わっているってことですんごく悔しそうな王女。猫じゃなくて泥を被るくらいじゃないと、冒険者の気持ちなんて到底理解できないだろう。

 ――お、従者らしき者が帰ってきたかと思うと、すかさずマリアンに耳打ちした。何か異変が起きたらしく、二人とも表情が深刻だから心配になる。

「……ゆ、、だと……?」

「はっ……」

「「「……」」」

 それってつまり、解散に追い込まれることを察した【堕天使の宴】が、罰を受けるのを恐れて逃げたってことか? なんだろう、今まで感じたことのないがするな……。
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