ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し

文字の大きさ
24 / 50

24話 興奮状態

しおりを挟む

 次に俺たちが向かったのは、鬼面モイヤーや笑う女アイラと同じく、アッシュらの偽なんでも解決屋による被害者の家だ。

 マダランという名前の爺さんで、かつて王に謁見したこともある中級貴族なんだとか。

 体が怠いという悩みに対してハロウドに【大興奮】というスキルを掛けられ、それ以降興奮状態が一向に収まらなくなり、今や意識不明の重体らしい。

「「――うわっ……」」

 それからしばらくして到着した家は、まさに邸宅と呼ぶべきもので、モイヤーのものより二回りほど立派な佇まいだった。こんなところに住む貴族の爺さんをああいう目に遭わせたっていうのも、兵士たちが動いた理由としては大きいんだろうな。

「ど、どうする? フォード……あたし、なんだか怖くなってきたよ……」

 リリが不安がるのもよくわかる。ここは今までとは明らかに雰囲気が違っていて、万が一失敗するともう取り返しがつかない、そんな危険な臭いがプンプンと漂ってくるからだ。

 だが……今回は制限時間というリスクに備えて、ちゃんと事前にどうすればいいのか歩きながら対策を考えてきたし、ここまで来た以上、今更引き返すつもりなんてない。それに、ここをスルーするようだと、今までやってきたことが全部無駄になってしまうような、そんな気がすることも確かだった。

「行こう、リリ。大丈夫だから……」

「あ、あい……」

 リリの手を引っ張るとき、少しだけ抵抗を感じるとともに、若干震えているのがわかった。

 きっと自分以上に恐ろしさを感じてるはずだが、それでもついてきてくれるのは、それだけ俺のことをパートナーとして認めてくれてるってことなんだろう。彼女の存在は、多分俺にとって想像以上に大きい。いつも元気に客引きをしてくれるし、すぐ側で見守ってくれるから安心感があるんだ。

 彼女がいなかったら、俺はここまで来られなかった……って、妙だな。なんでこんなことを考えてしまうのか。まるでリリがいなくなってしまうみたいじゃないか……。それだけ今回の仕事は今までとは毛色が違ってて、危うさというものをひしひしと感じてるからなのかもしれない。

 城壁を思わせる荘厳な門を潜り抜け、大自然を凝縮したかのような庭園を歩き、その先にある玄関の狼型ノッカーを叩くと、やがて召使いらしきメイド服の吊り目の女が出てきた。

「なんのご用件でございましょう?」

「えっと、俺たちはなんでも解決屋のフォードとリリっていって――」

「――なっ……!?」

「「……」」

 な、なんだ? 召使いの女がこの上なく目を見開いて、明らかに動揺した顔つきになった。

「……しょ、少々お待ちくださいませ……!」

 彼女は酷く慌てた様子で、俺たちに背中を向けた際に転びかけたのち、小走りに奥のほうへと消えてしまった。うーむ……なんか凄く嫌な感じだったな。思わずここから逃げ出したくなるくらいには……。

「――不届き者はそこにいるのか……!?」

「「っ!?」」

 荒い足音と怒声が一足先にやってきたかと思うと、まもなく顔を紅潮させた痩身の男が、いかにも屈強そうな男たちとともに現れた。

「連れていけっ!」

「「「「「はっ!」」」」」

 俺たちはあっという間に男たちに取り囲まれ、押されるようにして奥へと進んでいく。

「ちょ、ちょっと、これは一体……!?」

「なっ、何すんのさ――!?」

「――いいからついてこいっ! 犯罪者どもめっ!」

「「なっ……?」」

 は、犯罪者どもって……なんて言われようだ。

「いいか、お前たち、絶対にそいつらを逃すな……。もし逃げたらその場で即刻殺しても構わんっ!」

「「「「「了解っ!」」」」」

「「……」」

 その場で殺すだと? おいおい……またとんでもないところへ飛び込んでしまった格好なんだな。覚悟はしていたが、まさかこれほど手荒く迎えられるとは思わなかった……。それでも、これだけの憤りを見せる中ですぐに殺さないってことは、猫の手も借りたい心境なんだろう。

「――これを見ろっ……!」

「「あっ……」」

 俺たちが急かされるようにして辿り着いた場所――そこはあちらこちらに煌びやかな装飾が施された、なんとも優雅な色彩の大部屋であり、片隅のベッド上には一人の老翁が横たわっていた。

 こ、これは酷い……。老人は白目を剥いたままで泡を吐き出し、その顔色は火傷をしているかのように真っ赤で、まさに息も絶え絶えの状態なのが見て取れる。

「これが……これが私の父上に対し、お前たちなんでも解決屋がやったことなのだ……!」

「で、でも、それは俺たちがやったことじゃなく、別のなんでも解決屋が勝手にしたことで……」

「そ、そうだよっ! あたしらが一体何をしたっていうのさっ……!」

「ええいっ、黙れ! おい、そのガキを人質に取れっ!」

「「えっ……!?」」

 男たちによってリリが羽交い絞めにされ、首筋にナイフをあてがわれる。

「リッ……リリを離せっ!」

「おい、動くな! そこのお前、父上にこんなことをしたやつらとは違うと言ったな? では治してみよっ! もし治療できたなら人質は解放する。だが、もし治せなかったら……父上の仇として、人質の首を掻っ切ってやる……」

「フォ、フォードォ……」

「……」

 この男の目……本気だ。やるしかない。リリ、お前をこんなところで死なせるわけにはいかない。見てろ、すぐにこの爺さんを回復させてお前を解放してやる……。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...