ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し

文字の大きさ
28 / 50

28話 語り草

しおりを挟む

「――へえぇ……じゃあその男の人って、本物の鬼さんみたいだったんだ? こわぁい!」

 ボロ宿『桃源郷』の一室にて、俺とリリは今日あった出来事を、一日の仕事が終わってやってきたばかりのモモに話し始めたところだった。話すのはリリが上手いので、大体は彼女に任せて俺は酒をちびちびと飲むばかりだったが。

「鬼よりも鬼らしいっていうかさ……危うくチビりそうだったよ……」

「ひえぇっ……」

 リリが手を使って鬼のような顔を作り出したので、モモが怖がって俺の背後に隠れた。今の表情、俺まで思い出してビクッとなったし、割りと的確に表現できてたな、リリのやつ……。まあ女の心には鬼が棲むっていうしなあ。

「お次に出てきたのが、笑う女さ。これがもう、笑ってるくせに短気な女で、フォードの話も聞こうとせずに10分で直せっていうんだよ……」

「ええぇっ!? フォードお兄ちゃん、可哀想……」

「あははっ……」

 まあそれを言い出したのは俺のほうなんだけどな。でもそれくらい短い時間で直すって宣言しなかったら、あのアイラっていう女は短気な性格だっていうし、多分あのまま追い出されてたんじゃないかと思う。リリの話し方は本当に上手で、モモもすっかり聞き入ってる様子だった。

「――本日、三番目に出てきたやつがでねえ……」

「ゴクリッ……」

「中級貴族の立派なお屋敷でさ、興奮の余り危篤状態になった爺さんを治せなきゃ、あたしを殺すからって人質にされたんだよ……」

「う、うわあぁ……」

「……うっぷ」

 いい感じにほろ酔い状態になっていた俺も、その話になるとさすがに気分が悪くなりそうだった。もうあんなヒヤヒヤするようなことは二度とごめんだからな……。ま、こんな荒廃した世界じゃそれも望めそうにないが、目の前で家族やパートナーが殺されること以上に悲惨なことなんてそうそうないだろう。

「――ってな具合で、フォードが解決してくれたんだけどねえ……」

「うー……いいなあ、いいなあぁ……。私もリリみたいに人質になりたいよぉ……」

「おいおい、モモ……冗談はやめてくれ。俺の心臓が幾つあっても足りなくなるだろ……?」

「でも……私だってお姫様みたいに守られたいもん。フォードお兄ちゃんに助けてもらうために、誰かに誘拐されちゃおっかなあ……?」

「……」

 うーん……もちろん悪気はないんだろうが、ここはちゃんと叱らないといけないところだな。

「モモ……こっちにお尻を向けなさい」

「えっ、ええぇっ……?」

「いいから。そんなことを言った罰だ」

「ううぅ……」

「へへっ、やっちゃったねえ、モモ……。フォード、あたしが代わりに叩いてあげるよっ。それっ!」

「やぁっ……! いったぁーいっ!」

 パンパンと痛そうな鋭い音が響き渡るが、仕方ない。モモは仕事ができるといってもまだ10歳だし、言っちゃいけないこともあるんだとしっかり教えないとな。

「――痛いよぉ……」

「モモ、ちゃんと反省したか?」

「は、はあいっ。フォードお兄ちゃん、ごめんなさい……」

「よしよし……」

「えへへっ」

 そのあと、モモの頭を撫でてやってフォローするのも忘れなかった。なんせ彼女は両親を目の前で殺されてるわけだから。

「んー……あたしもいけないこと言っちゃおうかなあ……ひいっ」

「リリ、お前なあ……」

 物欲しそうに指を咥えるリリの頭を、かなり荒っぽくだが撫でてやる。この子も親に捨てられた不幸な境遇だしな。

 それからもリリによって話は進み、いよいよ最後の話題に突入した。

「――んでさ、この宿に来る途中、に追われてるのがわかって……」

「えぇっ……!? だ、誰だったの……?」

「それが、何人もいてさ……絶対敵だと思って、必死になって逃げてたら、挟み撃ちに遭っちゃってねえ……」

「ひええぇっ……」

「……」

 そうそう、そのときは本当に、今度こそもうダメなんじゃないかって覚悟したもんだ。

「フォードと一緒に、相手を引き付けるだけ引き付けてさ、それからスキルを使って逃げようって話になって……」

「う、うん……。そ、それで、どうなったの……?」

「それがさ、敵じゃなかったんだよ。そいつら……」

「えぇっ!?」

「みんな、なんでも解決屋の客だったんだ。それで、あたしたちが客が来なくて困ってるのを知って、励ますつもりで集まって追いかけてきたんだってさ」

「ほえぇっ……二人とも、すっかり有名人なんだあぁ……」

「まあねっ。ここまで来るのに、偽なんでも屋のせいで随分苦労しちゃったけど。ね、フォード?」

「ああ……でも、結果的にはそういう人たちに励まされてさらにやる気が出てきたから、遠回りにはなったかもだが今じゃよかったって思ってるよ」

「うん……。あたしとフォードの絆も深まったことだしっ!」

 リリがモモに見せつけるかのように俺と腕を組んできた。

「ふえぇっ……!? リッ、リリのバカッ! フォードお兄ちゃんは私のだもん!」

「へへっ、勝手にそう思っておけばいいさ、モモ。フォードの気持ちは既に――イテテッ!?」

「こらこら、あんまり煽るな、リリ」

 俺がリリの頭を小突くと、モモがにんまりと笑った。

「やーいやーいっ! リリがフラれたっ!」

「こ……このおぉっ!」

「おいおい……」

 まーた二人とも俺の周りをグルグルと回り始めた。これって、見ないように瞼を閉じても足音や風で意識させられるせいか結局目が回るし、酔いが進みやすくなっちゃうんだよなあ……。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

処理中です...