ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、大ハズレと呼ばれる【錬金術】スキルで、自分だけあらゆるものを超便利な能力にチェンジして無双する。

名無し

文字の大きさ
15 / 57

第十五話 堪能する者

しおりを挟む

 グラスデン家の屋敷の食堂には、豪華絢爛な食事だけでなく、錚々たる面々が一堂に会していた。

 当主のヴォルド・グラスデンはもちろん、正妻で第一夫人のシア、側室で第二夫人のレーテ、その令息であるクロード、その家庭教師ヘラ、町長、商会や教会の関係者、ヴォルドの側近たちや姻戚等。

 もちろん、伯爵家の長男である俺、ルード・グラスデンもその一人だ。つい最近まで、無能だからと倉庫に幽閉されていたが。

 普段見ないような面子までも勢ぞろいしているのは、王室から賓客が来訪するためである。

 その名もロゼリア・ネフタルト。一見すると明るくて人懐っこい感じの少女だが、れっきとした王家に仕える侍従だ。そんな彼女に対し、自分が幽閉されていたことを伝えれば、帰宅したあとで俺は自殺したと見せかけて葬られる運命になるだろうと予想している。

「う……」

 テーブル最前列の席、すなわち主賓席に座ったロゼリアにウィンクされ、俺は思わずそっぽを向いた。

 そんなやり取りが目に入ったらしくて一同ともにぽかんとしている様子だったが、気のせいだと思ったのかすぐに視線を定位置に戻していた。

「侍従殿、我が伯爵家へようこそお越しくださいました。我ら一同、誠に感激しております。殿下のご様子にお変わりはないですかな?」

「うむ、それならば問題ない。それよりヴォルドよ、この伯爵家では、何か問題は起きてないか?」

「……ふむ、問題ですかな? そのようなことはまったくありませんが」

「……」

 ヴォルドの返答に、シアやレーテが頷いていて、白々しいとはまさにこのことだと俺は内心で憤っていた。

 ロゼリアも心を読める能力があるので偽りだとわかっているはず。

 ただ、いくら不正を知っていても俺のことでいきなり注意するのは不自然だから、今はあえて気持ちを抑えてるんだろう。

 諫めてみせたところで知らぬ存ぜぬで通されるはずなので、慎重に詰問しようとしている可能性だってある。

「ささ、侍従殿、どうぞ、ご堪能ください」

「わははっ、こりゃ旨い! さいこーだ!」

「……」

 ロゼリア……ヴォルドに促されて普通に飲み食いしてるし。これじゃ懐柔されてるみたいじゃないか。まあ油断させてボロを出そうっていう作戦かもしれないが、見てて不安になってくる。

「……ふう。食べた食べた。お前たちは、いつもこうして仲良く食卓を囲んでおるのかの?」

「ええ、そうですわ。侍従殿。わたくしたちはみな、仲が良いことで評判ですのよ? オホホッ」

「本当にそうですね、シア。殿下や侍従殿はもちろんですけれど、わたくしたちはヴォルド様の威光のおかげで仲睦まじく暮らしております」

 シアとレーテがなんの淀みもなく言ってのけたので、俺は逆に恐怖心を覚えた。こいつらの罪悪感はどうなってるんだ。ネジが完全に外れている。

「侍従殿。ここは誰にとっても居心地の良い家です。問題などどこを探しても見当たるはずもありません。ねえ、ヘラもそう思うでしょ?」

「クロードちゃま、本当にその通りザマスッ!」

 クロードのやつ、ヘラに話しかけてるのに挑発するかのように俺のほうを見て、その上笑みまで浮かべやがった。本当に、弟は嫌がらせの達人だな。

「どうした、ルード。返事せぬか」

「……あ、はい。なんの問題もありません……」

 ヴォルドにギロリと睨みつけられて、俺はそう答えるしかなかった。

 本当に、グラスデン家はヘイトの宝庫だ。あらゆる嫌悪が眠っている。だが、それを集めれば集めるほど、それを跳ね返すときの開放感や達成感は大きい。

 ……さあ、もうそろそろいいだろう。を使って、これからおっ始めてやろうじゃないか。溜め込んだヘイト解放大作戦を……。


 名前:ルード・グラスデン
 性別:男
 年齢:15
 魔力レベル:2.5
 スキル:【錬金術】
 テクニック:『マテリアルチェンジ』『レインボーグラス』『ホーリーキャンドル』『クローキング』『マンホールポータル』『インヴィジブルブレイド』『スリーパー』『ランダムウォーター』『サードアイ』『トゥルーマウス』

 死亡フラグ:『呪術に頼る』『幽閉の件を家族の前で侍従に話す』


 作戦に使うのは、『トゥルーマウス』という覚えたばかりの新しい技能だ。

 その効果は、対象に使うだけで本心を隠さず話すようになるというもの。その際、途中で止めることは絶対にできない。つまり、最後まで本心を吐露する羽目になる。

 まさか、枯れた食虫植物の鉢からこんな技能が生じるとは夢にも思わなかった。

 唇のような形をしていて、なおかつ物言わぬ植物だからこそこのような効果になったのかもしれない。

 まず、ヴォルドにこれを使うとしよう。

「いやあ、侍従殿が来てくれて本当によかった。ただの小娘にしか見えないから、メイドの見習いだと思ったくらいだが……って……」

 ヴォルドの顔が見る見る赤くなっていく。

「……な、なぬっ!? 私がメイドの見習いに見えるだと? ヴォルドよ。それはいくらなんでも無礼であろう!?」

「うぐ……も、申し訳ありませぬ……!」

 大恥を掻いた格好のヴォルド。ざまあみろ。ロゼリアは少々気の毒だが。

「まったくそうですわ。ヴォルドったら、そんな正直なことを言ってしまって。本当に、間抜けな小娘にしか見えないといえば、レーテも同様ですけど。オホホ……!」

 正妻のシアは頬に手を当てて高笑いしたが、レーテとヴォルドに睨まれてその顔は死体のように青白くなっていた。

「シア。気にしないでください。あなたのような阿婆擦れよりはマシですから」

「な、な、なんですってええぇっ……!?」

 いいぞ。レーテの応酬によってどんどん険悪なムードになってきている。

 さすがに慌てたのか、クロードが焦った様子で立ち上がった。

「お願いだからやめてよ、母上も義母上も。無能だからと幽閉されてるルードなら、今までみたいにいくらでも虐めていいけど……」

 弟が言い終わったのち、口を押さえてハッとした顔になる。それを傍らで見ていた家庭教師ヘラはショックの余りか白目を剥いていた。

 周りがどよめく中、侍従のロゼリアが怒り心頭の表情でメモを取っているのが印象的だった。

『トゥルーマウス』というテクニック、恐るべし。俺はそれについて自分で話したわけじゃないので、死亡フラグに触れたとはいえない。実際、『レインボーグラス』で確認してみたら消えていた。もうバレたわけだしな。

 これでグラスデン家の評価は、自分を除いて大幅に急落することになる。爵位の降格まではないだろうが、実に愉快だ……。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。

くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。 しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた! しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!? よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?! 「これ…スローライフ目指せるのか?」 この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!

若返った老騎士の食道楽~英雄は銀狼と共に自由気ままな旅をする~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
あるところに、数百年周期で現れる魔王がいた。 人族から生まれ、闇に魅入られし者、妖魔を統べる魔王と呼ばれる存在。 度々現れては、人々を恐怖のどん底に貶めてきた。 此度、その魔王との戦いに終止符を打った男がいた。 名をシグルド卿といい、六十歳を迎えた老人の男だ。 元平民にも関わらず、爵位を得て史上初の将軍にまで上り詰めた英雄である。 しかし、魔王と一騎討ちの末に相打ちになった……と世間では言われていた。 当の本人は実は生きており、しかも若返っていた。 そして自分が生きていることが知られると、色々と面倒なことになると悟った。 それにどうせなら、自由の身になって世界を旅したいと。 これは役目を終えた英雄が旅をし、様々な人と出会い、美味い物を食べていく物語。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

処理中です...