ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、大ハズレと呼ばれる【錬金術】スキルで、自分だけあらゆるものを超便利な能力にチェンジして無双する。

名無し

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第四十話 邂逅を目前にして

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「おおう……。ルードよ、これが噂に聞く、【錬金術】というそなたの能力なのだなっ!」

 絨毯の上の『マンホールポータル』を感激した様子で覗き込む第一王子のローガ。つい先ほどまでの陰鬱そうな御顔が一転して快活になられていた。

 マズルカと【シルル】の決着をつけるため、ローガ殿下も同行してもらうことになったのだ。長らく目を背けていた問題と対峙するとあってか、甚く塞ぎ込んでおられたご様子だったが、一瞬で目的地へ行けるとあってか声に張りも出てきたほどだ。

 シルル山へ向かうメンバーはというと、俺はもちろん、アイラ、ロゼリア、第一王子ローガ、第一王女マズルカの計五人だ。キラとウッドはメイドとして修行させるために屋敷でお留守番する運びとなった。ローガ殿下の意向もあり、近衛兵らは同行せずに完全なお忍びという形だった。

 そんなわけで俺は『マンホールポータル』を使用し、名立たる王族たちをシルル山まで送り込む。俺が【シルル】と遭遇したあの場所へ直接赴くというのはリスクが大きいと判断し、デモンストレーションが行われていた空き地へまず降り立つことになった。

 アイラも一緒に連れていくのは、さすがにロゼリアも一緒だと隠し通せないだろうし、彼女に黙って俺と従魔だけでシルル山へ行ったことの贖罪の意味も含まれていた。

 それと、クロードが行方不明になっていることも地味に影響している。その母のレーテらが逆恨みで悪巧みしないよう、念のためにアイラを手元に置いておきたかったっていうのもあるんだ。彼女なら自分の身は自分で守れると思うが、もしもってこともあるわけだからな。

「ルード様、ドキドキしますね」

「アイラ、何が?」

「それはもちろん、【シルル】と出会えるかもしれないからです。この山の主みたいなものでしょうから」

「まあ、そりゃ本人の名前がついてるくらいだしな……。でも、怖くないのか?」

「蛇のほうがよっぽど怖いですよ!」

「アイラって、蛇が苦手だったのか……」

「はい。私は覚えてないんですけど、『お前の左足に傷跡があるのは蛇にやられたからだ。だから山のほうへ行ったら絶対にダメだよ』ってお父さんに口を酸っぱくして言われて、それで怖くなって……」

「なるほど……。今からでも屋敷に戻るか?」

「いえ、足元に気をつけるので大丈夫です!」

 蛇についてはともかく、あんな話を聞いた後だと【シルル】に対する印象が大分変わるのも確かだ。

 ただただ恐ろしい魔物でしかなかったのが、人間の哀愁という残り香を感じさせる魔物へとイメージが変化した。マズルカ殿下が決着をつけようとするのも腑に落ちる気がした。

「ルードよ、誠に恩に着る……」

 ロゼリアがいかにも申し訳なさそうに話しかけてきた。

「大丈夫だって。が大好きなの頼みだから……」

「ううっ。ルード、わかってはいたが、そんなに私のことが好きなのだな……」

「……」

 悪戯好きのアイラが雑な感じで俺に成りすましてる。声もアイラのままだし隠す気が全然ないな……というか、見抜ける能力があるのにロゼリアはなんで騙されてるんだよ。

「――アイラアァッ!」

「ご、ごめんなさいいぃっ!」

 耳まで赤くしたロゼリアとアイラの追いかけっこが始まった。これぞ猫の恩返しってやつだな。それにしても、なんだか場所の割りに緊張感がない。

 とはいえ、俺たちはまだ山頂へ向けて出発したばかりだ。【シルル】も登場してないんだし、この先に待ち受けるプレッシャーを考えたら、今のうちにこれくらいリラックスしておいたほうがいいのかもしれない。

 第一王子ローガにしても、謁見した際と比べるとあたかも別人のように怖さがなくなっている。逆に第一王女マズルカはもう侍従のロゼリアはおろか、兄のローガでさえ話しかけれないほどの鬼気迫る空気を放っていた。

【シルル】を刺激しないようにするためにとかなり後方にいるにもかかわらず、すぐ間近にいるかのような存在感があった。まさに冷血の王女然とした佇まいだ。

 彼女にとって、妹(第二王女)のエルルカや近しい村人たちの仇である【シルル】との邂逅のときが刻一刻と近づこうとしているのだから当然か。

 ん、ローガ殿下が神妙な表情でこっちへ歩み寄ってきた。

「ルード……ちとよいだろうか。そなたに折り入ってがあるのだ……」

「殿下……? 頼み事とはなんでございましょう……?」

「近う寄れ。耳を貸すがよい」

「はっ……」

 俺の耳元で殿下が囁く。

「そなたに、マズルカの緊張を解してもらえぬだろうか……?」

「えぇ……?」

「余は妹の顔を見やるだけでも力んでおるのが伝わってくるゆえ、そなたの力を是非とも拝借したい。どうか助けてやってくれぬだろうか?」

「はっ……」

 俺は一切躊躇うことなく承諾した。というか、暴虐の王子っていう恐ろしい異名を持つ殿下の頼みを無下に断れるわけがないんだよなあ。だが、俺はその前にやるべきことがある。それはもちろん、例のだ。


 名前:ルード・グラスデン
 性別:男
 年齢:15
 魔力レベル:4.5
 スキル:【錬金術】
 テクニック:『マテリアルチェンジ』『レインボーグラス』『ホーリーキャンドル』『クローキング』『マンホールポータル』『インヴィジブルブレイド』『スリーパー』『ランダムウォーター』『サードアイ』『トゥルーマウス』『クリーンアップ』『デンジャーゾーン』

 死亡フラグ:『呪術に頼る』『に失礼なことをする』

 従魔:キラ(キラーアント)、ウッド(デーモンウッド)



「……」

 うわぁ、ほぼ俺の予想通りじゃないか……。まさに四面楚歌、背水の陣ともいえる熾烈極まる死亡フラグが爆誕していた。

 第一王子や第一王女は元より、侍従のロゼリアも厳密には王族とはいえないまでも、それに非常に近い存在ではある。また、アイラはそれに仕える身でもあり、関連性はもちろん王族へ齎す影響がまったくないとは言い切れない。

 つまり、だ。俺はこの場にいる誰の機嫌も損ねないように振舞う必要があるってわけだ。しかも、【シルル】との決着を前に気が立っているマズルカの緊張を解すとなれば、まさに一発で針の穴に糸を通すような難易度に等しい。

「……」

 それでも、ローガ殿下も気を揉みながら見ておられるんだ。ここでいつまでも留まるわけにもいかない。俺は覚悟を決めてマズルカの元へと歩み寄っていく。

 最悪の場合、『マンホールポータル』で過去の地点へ遡ればいいくらいの気楽な気持ちで。両殿下に引けを取らないくらいの今の魔力レベルなら、油断さえしなければ致命傷を免れつつ戻るくらいのことはできるはずだから。

「なっ……」

 だが、驚くべきことにマズルカのほうからもこっちへ近づいてくる。それも一切まばたきすらせずに、薔薇のような棘と気品さを携えて。だが、ここで怖気づくようではダメだ。おそらく彼女は俺の度量というものを試している。

 だったら望むところだ。俺は不敬を承知でマズルカをこれでもかと睨視してやる。殺すなら殺せと言わんばかりの迫力で。

「……」

 俺は死を意識しながらしばしマズルカと睨み合う。すると、自身の頬に柔らかい感触と吐息が当たるのがわかった。

「で、殿下……?」

「ようやく、結論へと辿り着きました。あのときのお返しがまだだったと。わたくし、一生懸命に思い出そうとしていたんです。ルードにそのヒントがあると思って、しばらく見つめることであの感触が脳裏に浮かんできたのです……」

「な、なるほど……でございます」

 マズルカはてっきり【シルル】のことを考えてるとばかり思ったのに、まさか俺のことを考えているとは夢にも思わなかった。本当に読めない人だ。あれだけ鋭かった視線が嘘のように安穏な眼差しに変わっているのも気分屋な王女らしい。

「ルード。次はどこにをいただけるのかしら……?」

「……」

 死亡フラグはまだ終わってなどいなかった。むしろここからが本番なんだろう。親愛の証っていうのはおそらく口づけのことだ。その箇所を間違えれば王女を落胆させてしまい、両殿下の逆鱗に触れてしまう可能性が非常に高い。

 かといって、アイラやロゼリアの見る目もあるため大胆な行動はなるべく回避したいのも実情だ。それにしても、まさかこんなところで接吻をするという行為が俺の命運を握ることになろうとはな……。
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