底辺ジョブ【清掃師】で人類史上最強~俺はドワーフ娘たちに鍛えてもらって超強力な掃除スキルを習得する~

名無し

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第二章

清掃師、偶然を装う

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「ちょっと待って。俺、この洞窟が正しいような気がする……」

 俺が無数にある洞窟の一つを指で示すと、みんな呆然とした顔で注目してきた。ってか、これはこれでなんかまずい気はするな。もしこれで的中したら俺が不思議な力を持ってるみたいな感じで注目されてしまうかもしれない。

「あ、やっぱりこっちかな?」

 というわけで、俺は舌を出しつつ別の正解の洞窟を指差すと、みんな含み笑いを浮かべながらほっとしたような顔をした。

 これなら誰でもありそうな万能感として、当たったとしてもただの偶然として乗り切れるだろう。

「アルファ君! 私にもそういう勘のようなものは働くことがあるから、外れても気にしないことだっ!」

 ロディが俺の肩に手を置いて白い歯を覗かせる。

「リーダーよりも正解率高そうだけどねー」
「わたしもそう思うっ」
「くすくす……私もそんな気がしますう」
「こ、こらこら。私をバカにするのはいいが、アルファ君にプレッシャーをかけるなっ!」
「あはは……」

 俺は笑いつつ、灯り役も兼ねてるってことで魔道具の一つ、フローティングトーチを取り出した。これは浮遊しながら使用者についてくることで周囲を照らしてくれる便利なアイテムなんだ。

 洞窟の入り口は小さくてしゃがみ込んだ状態でしか入れないものの、中は割りと広くて一人なら普通に立って歩けるくらいの余裕があった。

 とはいえ足元はコケだらけで思ったより滑るため、かなり慎重に登る必要があると感じた。しかも俺たちが入ってまもなく道は分岐しており、下り坂の左側と登り坂の右側に分かれていた。当然、左の下り坂はアリジゴクのいる地下空間へとつながっているというわけだ。

 なんでもあの『アバランシェ・ブレード』のボスゴーレムより強いらしいし、やり合うにしたって自分の能力を隠す必要もあるわけで、なるべく戦いを避けたほうが賢明だろう。

 ……ん、がこっちへ来るな。モンスターか? マリベルたちもそれを察したのかざわめき始めた。気になるので耳を近付けてみる。

「蟻じゃっ、蜜なのじゃっ」
「想像しただけで口の中が甘くなる……」
「わたくしもですわ。じゅるり……はっ」
「なめなめしたいのれふう!」
「……」

 やっぱり蜜のことしか頭にないのか。ドロップするとは限らないんだけどなあ……。

「――モンスターが前から来ますっ、気を付けてくださいですぅ」

 ミュートの一声で緊張が広がっていく。わかっていた俺もみんなと同じくはっとした顔をしてみせた。

「アルファ、あたしと交代ねっ」
「ああ」

 先頭にいた俺は一応非戦闘要員ってことになってるので、パーティーの中心で後方も見やっていたサーシャと位置を交代する。

 キラーアントは前方から襲ってくることが多いが、後方からも発生して迫ってくることがあるんだ。捻じ曲がった洞窟だし視界も悪くてタイミングを取るのは難しいってことで、サーシャが【オートカウンター】の構えを取る。これなら、与ダメージは低いが自動的に防御も攻撃ももう一人の自分が勝手にやってくれるようなものだからな。

「み、み、みんなっ! 頑張れ頑張れ、超頑張れえぇぇっ――」
「――お兄ちゃん、うるさいっ」
「うっ……」

 確かに洞窟内は反響するからな。ただ、ロディとシェリーの兄妹が和ませてくれたおかげで、みんなの緊張も大分ほぐれた感じはある。

『――ギョリギョリッ……』

 やがて、双眸を怪しく光らせた巨大蟻――キラーアント――が姿を現す。

 想像以上にでかくて、人間より一回り大きい頭をしてるだけじゃなく鋭利な刃が幾つもついたような長い前脚には特に脅威を感じた。

「蟻さんの急所は胸部の上方ですう!」
「オーケー!」

 ミュートの的確な指示にサーシャが元気よく答える。

「今だよー」

 キラーアントが伸ばしてきた鋭い前脚を、シェリーが【傀儡】によってぬいぐるみの手を内側に置くことで引っ込ませ、隙だらけの体勢で突っ込んでくる格好となった巨大蟻の胸部やや上方にサーシャの剣がジャストミートした。

『ギョリッ!?』

 凄い、一発だ。実をいうと直前で俺がモンスターの防御力を払ったんだが、急所をこれ以上なく的確に突くことができれば低ダメージでも一発で倒せるらしいからバレないだろう。

「お、おおおっ! みんな凄いぞっ! よくやったああぁっ!」

 ロディが一番喜んでいたので、みんなおかしそうに口を押さえていた。今回は俺の出る幕もほとんどなかったな。みんな以前より遥かに成長してるみたいだし、今のところかなり順調だ。この調子でずっと行ってくれればいいんだが……。
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