底辺ジョブ【清掃師】で人類史上最強～俺はドワーフ娘たちに鍛えてもらって超強力な掃除スキルを習得する～

第二章

清掃師、謀略を巡らされる

　迷宮山『アント・ヘブン』の第二セーブポイント付近にて、ガーラントを始めとする《ホーリーグレイル》の面々が姿を現す。

「じゃ、じゃあ頼んだ」
「た、頼んだぞお」
「あ、あとは任せますね」

　そこへ来て早々、ガーラントら旧メンバーの三人がスパイダーロープでそそくさと登山者ギルドへ戻っていく。迷宮山に残されたのは、新たに臨時メンバーとして加入したレイラ、クエス、ジェイクの三名のみであった。

「ったく、あいつら、こっちの返事すら待たずに帰っちまうなんてさ」
「ホントホント、臨時とはいえ仲間とは思えない薄情さだよねえ」
「レイラ、クエス、そう言うおめーらだって俺を捨てただろうがっ……！」

　噛みつくジェイクに対し、レイラとクエスの白い目が向けられる。

「だから、こうしてわざわざ戻ってきてあげたじゃないのさ」
「そうだよ。しかも、こんな危ないところまでついてきたのに」
「へへっ……冗談だって。感謝してるぜっ。これでもう、ぶっちゃけ勝ったみてえなもんだ！」
「ちょっと、ジェイク。喜ぶのはまだ早いんじゃないかい……？」
「うんうん、今度こそちゃんとあいつらを始末してくれるんだろうね？」
「心配すんなって！　怪我の功名ってやつで、たっぷり考える時間はあったんだからよ。今度こそ、ゴミアルファの野郎をぶちのめせるって確信してるぜ。ほら、二人とも耳貸せっ！」
「「はいはい……」」

　呆れた様子でジェイクに顔を近付けるレイラとクエスだったが、まもなくその表情は驚きに支配されていった。

「……ジェイク、あんたやっぱり天才だよ」
「だねぇ。その作戦なら今度こそいけるかも……」
「へへっ、任せろ。今度こそ絶対に終わらせてやるぜ。ゴミアルファ、待ってろ……」

　ジェイクの射貫くような視線は鋭さを増すばかりだった。



　◇◇◇



　登山者ギルドの一角、苦虫を噛み潰したような顔でテーブルに座るダグラスとメリルの二人。両者の鋭い眼差しは、落ち着いた様子でコーヒーを啜るリーダーのガーラントに向けられていた。

「リーダー……本気であんなやつらと組むつもりなのかあ？」
「ガーラントさん、それだけは勘弁してくださいよ。あんな芋臭いのと組むなんて耐えられません……」
「ダグラス、メリル……これだけ俺と一緒にやってきたっていうのに、腹の中がわからんのか……？」
「「へ……？」」

　呆然とする二人に向かってガーラントがニヤリと笑う。

「俺は最初からあいつらと組むつもりなんて毛頭ない。あとでこっそり様子を窺って、上手くロディたちを処理できたとわかれば……その時点で全部なかったことにすればいいだけの話だ」
「「おおっ……！」」

　ダグラスとメリルの表情がパッと明るくなるものの、まもなく浮かない様子で顔を見合わせる。

「ん？　まだ何か問題でもあるのか……？」
「リーダー、もしあいつらがロディたちを処理できなかったら……そのときはどうするつもりなんだあ？」
「それ、私も気になります。ガーラントさん、一体どうなさるおつもりなのです？　結局解散になっちゃいますよね……？」
「はあ……お前たちも心配性だな。それについてもちゃんと考えてある。処理できなかったらできなかったで、ある程度ロディたちを痛めつけてくれれば問題ない。オーガのいる迷宮山に行くくらいだから少しは腕に自信があるんだろうし、そこを俺たちが漁夫の利でまとめて消してやるだけの話だ……」
「「……」」
「ん、どうした？　ダグラス、メリル。黙り込んで」
「あ、いやぁ、凄い作戦だなあって。な、メリルゥ？」
「で、ですねえ、ダグラスさん……」
「ククッ、こんな作戦を考えるくらい、俺には容易いことだ」

　上機嫌そうな笑みを浮かべるガーラントに対し、なんとも苦い表情を浮かべるダグラスとメリルの二人は実に対照的であった。